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3 : 3rd Wish

「おねえちゃん、それとってよ」


言われて、アイは弟の指さす先のライターを手に取った。


「どうするの、これ?」

「ケーキのロウソクに火を点けるの!」

「え〜。あんたじゃ無理よ」

「やだ。ボクが点けるの!」


2人はライターの取り合いをして、リビングを走り回る。



「こら!何やってるの、2人とも。やめなさい!」


見兼ねた母親が、2人を諌めた。


「「は〜い……」」


不服顔の2人は、それでも一応返事をして、大人しくライターを母親に渡す。


「まったく……誰に似たんだか、2人ともワンパクで困ったわね……」


ちっとも困っていないような、楽しそうな笑顔で母親が言った。


「「パパとママ!!」」


子供達は同時に叫ぶ。


「あはははは!違いない!俺たちの子だからな。元気で上等!」


父親がリビングの扉を開けながら朗らかに笑うと、母親も「それもそうね。」と嬉しそうにほほ笑んだ。



結局、父親がケーキのロウソクに火を灯して、子供たちで吹き消すことになった。


「いい?一気にフーって息を吐いて消すのよ?」


アイはお姉さんぶって弟に言い聞かせる。彼はコクンと素直に頷いて、2・3度息を吹く練習をした。


「用意はいいかしら。好いなら、電気を消すわよ?」

「「は〜い!」」



子供達は元気に返事をして、ケーキの前に座ると、母親がリビングの電気を消してくれた。

リビングが幻想的な光に照らされて輝きだす。

普段使っている蛍光灯の光では、表現できない優美さだ。


「わ〜キレイ!お姉ちゃん、ロウソクの火とってもキレイだね!」


弟ははしゃぎながら隣に座るアイの袖口を引っ張る。

そんな二人の様子を目を細めて両親が見詰めている。

幸せそうな家族を絵に描いたような団乱風景だった。


「じゃあ、行くよ〜?1・2・3で吹くからね?」

「解った」

「「1…2…3…フー!!」」


2人の息で蝋燭が消えて、部屋が一瞬で暗闇に包まれる。

すぐに「パチッ」という音がしてリビングの電灯が点くと、母親がキッチンからケーキナイフを持って来て、ケーキを切り分けてくれた。


「おいしーね、お姉ちゃん」


忙しい両親が仕事の合間を縫って用意してくれたクリスマスディナーは、今まで食べた事がないほどに美味しく感じられた。


「うん。すっごく美味しい!」




アイ達の両親がまだそれほど忙しくなかった頃は、それでも十分に忙しかったのではあろうけれど多少無理をしていでも毎年クリスマスだけは一緒に祝ってくれていた。

彼らの手作りの料理とケーキは見た目はちょっと不格好だったけれど、アイ達にとっては最高の味だった。あの頃は、家族みんなが本当の意味で『幸せ』だったんだと思う。

普段は忙しくてゆっくり一緒に食事なんて出来ない事の方が多かったけれど、クリスマスだけ

は特別だった。



家族全員でゆっくりと一日中過ごせる特別な日。



だからアイはクリスマスが大好きだった。

たくさんの家族の『笑顔』と『幸せ』をくれる、『特別な日』だったから。




あの日までは――。


このお話は残り2話になりました。

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

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