2.5 : 幕間 (2)
今回、少し短いです。
少女が再び目を覚ますと、辺りは既に暗くなっていた。
――寒い。
薄いブランケットだけでは、とてもじゃないけど凍えてしまいそうだ。
とは言え、昼間に探した時、他に防寒になりそうなものを見つけることは出来なかったのだ。
何かないかと、少女はもうあまり働いていない頭で考えてみる。
そして、ふと思い立った。
そうだ、昼間はあそこには入らなかった。あそこになら、何もかも残っている筈――。
少女はもそもそと起き上がってリビングから出ると、玄関の直ぐ脇にある階段をゆっくりと登りだす。
少女が2階へ行くのは、どれくらい振りだろうか。
少なくとも、彼女の記憶のある限りでは、ここ数カ月はなかったように思う。
階段を上がると、右手と左手に一つずつ木製のドアがあった。
少女は左手にある方の扉のノブを緩慢な動作で掴んだ。
その瞬間、少女の目の前に幸せだった頃の記憶が鮮明に蘇って、胸に痛みが走った。
数秒の間――いや、実際には数分が経過していたのかもしれないが――少女は胸の痛みに耐えると、意を決したかのように勢いよくドアを開いた。
室内は家具や生活用品が今の今まで誰かが住んでいたかのように揃っているものの、真っ暗でまるで人気を感じさせない部屋だった。
少女は電気も点けずに、無表情のままクローゼットの方へと歩いて行くと、中から深緑色のダウンジャケットを取りだした。
少し大きめのそれを羽織って自身の体を強く抱きしめると、少女は夢見るように呟いた。
「アオ……」
どれほどの時間、そうして自分を抱きしめて居たのだろうか。
子供たちの楽しげな声で、少女は半ば強引に現実へと引き戻された。
隣の家から、先ほどの子供の声が聞こえてくる。
どうやら、隣家ではクリスマス・イブのパーティーが始まっているようだ。数人の子供と大人たちの、賑やかで楽しそうな声が漏れ聞こえる。
少女は暗い部屋の中でベッドの上に腰かけると、リビングから持って来たブランケットをダウンジャケットの上から更に羽織った。
ブランケットと一緒に持って来た小瓶を一気にあおると、懐かしいダウンジャケットの香りの中で、今度こそ深い眠りに就いた。




