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第109話 ダイナマイツ悠里とアズラのつまみ食い

 それから数日間、食料調達を担当したきのこフレンズが収穫した大漁のキノコと、カニ料理を食べる日々が続いた。幸い甲殻アレルギーを持っている人はいなかったので、飢えを知らない僕以外の全員が同じ釜の飯を食っていた。


 ”コー”の解析を終えたJOXAの地質学者たちは、アズラが新たに作った坑道の入り口に赴き、現地調査を確認した上で、ユリハやニモ先生、ドワーフたちと議論を交わし、今後の方針が定まった。


「ムーン・グラードの地形は、地中に豊富な金鉱脈を含んだ岩があって、地表は月の石と思われる堆積岩レゴリスで覆われているわ。私の仮説になるけれど、魔石が多く産出される金鉱脈の近くに、AEWこのほしの大気に含まれるマイナシウムの源泉がある。そして、その源泉の近くに月のクレーター内部につながるワームホールがあるはずよ。ここまでは大丈夫?」


 ブリーフィングは野外の広場で行われた。旧坑道の入り口と、直上に穴を掘って坑道の最深部分をむき出しにして造った新しい坑道の入り口を測量した地図を広げて、ユリハがプレゼンを行っていた。


 さっきからユリハは、花太郎に「理解できているか」を尋ねて、同意が得られたところで、話を続けるようにしている。いまのところ、僕も花太郎もつまづいていない。


「私たちの第一目標はワームホールの発見よ。そして、ムーン・グラードのレゴリスは、月面からワームホールを介して送られ、隆起によって地表に現れたみたいなの」

「つまり、あれやな。金鉱脈の太い所を探しつつも、ひたすらレゴリスの方を掘ってたどっていけば、ワームホールにあたるかも、ってことで、ええんやな?」

「そういうことね」


 ……アキラはトラブルメーカーの割に無駄に博識はくしきで頭の回りが速いんだよな。……ちょっとユリハと似てるかも。理系ってこんな人たちばっかりなのかな……。違うな、認めないぞ。


「ここのレゴリスは掘りやすい。かつて坑道を造った連中も柔らかいレゴリスを堀り進めて、隣接する鉱脈から資源を採掘していた跡があった」

「深部に行けば行くほど、鉱脈が太くなっているぜ。俺たちが造った坑道の入り口から、レゴリスが多く詰まっている所を下方に掘り進めりゃいい」


 地質学者達の予測とドワーフ達の経験測から掘削ルートを定めて地図に線を引くと、その方角の直線上は、咲良が上空から撮影したムーン・グラードの中心地を通過していた。

「こいつは、分かりやすくていいぜ」

 カイドがニカニカと笑っていた。


 先日のタカヤシの一件で、大量に食料を備蓄する事に成功したものの、保存食の加工の最後の行程がまだ終わっていなくて(何度か塩漬けしないといけないけど塩が足りなくなった)、拠点防衛班と地質学者達で引き続き、保存食の加工を行う。

 その他の食料は、ニモ先生と数人の戦士で編成した一個小隊が担当し、これにユリハが加わる。


 三人寄れば文殊の知恵ならぬ、三人寄れば毒きのこと化す、悠里、ペティ、リズは、食料調達において、豊富な知識と技術を身につけてはいるものの、きのこしか採取してこないので、薬草学の権威であるニモ先生に、みんなは期待と祈りの眼差しを向けていた。


 どのみち、今後の食料調達できのこフレンズが出揃うことはなさそうだ。これから悠里は掘削班と合流し、作業のかなめとなる。


「サイア、アタイのことさ。”先生”って呼んでみて」

「セ、……センセイ?」


「……んん!! んん!! んっふぅ!! つ、次は、”ペティ先生”って!」


「ペ、ペティ先生?」


「なんだい! サイアー!!!」

「ペティさ、ん、苦しい……」


 リズはシンベエの背中に跨りながら「おのれ、ペティ!」と言いながら、手込めにされてるサイアをデジカメに納めつつ、飛び去って行った。保存食の加工に必要な塩を、水の魔法で大量に調達するため、海へと向かったのだ。


 悠里もペティとサイアを見て「ぐぬぬぅ!」ってなってた。これからサイアは、掘削作業で重宝する炎の魔法を、ペティから手取り足取り教わることになっている。


 アキラは保存食加工のために拠点で作業。カイド、シド、アズラ、サイア、ペティ、悠里、花太郎、僕と、十人のドワーフの戦士で掘削班を再編成した。

 拠点から坑道までの最短ルートに目印の杭を打ち込む作業もすでに終えていた。下準備はすべて整った。これから本格的なアルターホールの探索が始まる。


◆◇◆◇◆◇


「待っていましたよ、エア太郎さん」

 支部の通信室に瞬間移動テレポートした僕を最初に出迎えてくれたのは、ターさんだった。


 僕は一日一回、リッケンブロウムのJOXA支部に瞬間移動して、ムーン・グラードでの進捗を報告している。


 いつもなら夕刻に作業を終えて、ユリハが作成した報告書をノートに書き写してから向かうため、夜遅い時間になってしまうのけど、今日は午前中に支部へと向かった。つい先ほど決まった、ワームホールの探索エリアを伝えるためだ。


 前日の報告で、翌朝から探索作業に入る旨を伝えていたので、通信室には既にムーン・グラードの縮尺図が広げられていた。現地で作成したものを、咲良とシンベエが先日、支部に届けたのだ。


 僕が報告に来た知らせを受けると、支部局長も急ぎ足でやってきた。


 広げられた縮尺図の上に僕は指を走らせて、坑道の出入り口から、掘削ルートのラインを指し示し、ターさんが定規を使って、図面に記入する。


 報告はこれだけだった。これだけだったんだけどさ。


「局長、ついにここまで来ましたな」

「長かったね、ターさん」

 と、壮年の男二人が感激し、涙ぐみながら握手をしていた。


 この二人は、香夜さんと一緒に仕事していたんだよな。


「引き続き、お願いいたします」

「吉報を待っているぞ、エア太郎君」


 二人が手を差し出してきたので、すり抜けない程度に力を込めて、握手に応じた。

[行って参ります]


 僕は敬礼を行った。軍隊ではないのだけれど、ジェスチャーとしては分かりやすい動作だから、報告を終えて出立するときは、敬礼をするようになっていた。


 ターさんと、支部局長と、通信室の職員の敬礼に見送られ、僕は瞬間移動を行った。


◆◇◆◇◆◇


 僕の瞬間移動も慣れたもので、ムーン・グラードにいる花太郎が下げているエアっちボール所へは、ほとんど念じることなく一瞬で到着できるようになっていた。

 花太郎と悠里に、ターさん達が感激していたことを告げたら、二人とも「ククク」と笑っていた。


「ハナザブロウ君、アタシたち期待されちゃってるね」

「期待には応えないといけませんね、アネさん」

「よし! がんばっちゃうぞ!」


 気合いを入れ直している悠里の両手には、発煙筒のような細長い円筒系の筒が握られていた。……筒の先端には細長い紐が伸びていて、それが結構な長さで、花太郎が絡まらないように紐をまとめて握っている。


 ……多分、悠里が持っているやつ、ダイナマイトだ。


「カガリ。ここに頼むぜ」

 アズラが掘った坑道の深部へとつながっている縦穴の中で、カイド達が測量を行い、悠里に場所を指定した。


「まかされよぉ~う」

 悠里が上機嫌でカイドが指定した壁まで歩み寄り、ダイナマイトと思われる筒を握ったまま手を伸ばし、岩壁を”透過”した。


 作業員のドワーフ達が「おお!」と呻いた。


 透過した手を引き戻すと、筒は岩壁の内部に置いてきたみたいで、手ぶらだった。壁からは、導火線と思われる紐だけが伸びている。


「カガリがいると早いな」

「この調子でたのむぜ」

「アイアイサー!」


 悠里はカイドが指示を出した箇所へ、さらに四つの筒をねじ込んだ。


[悠里。その筒って、やっぱりダイナマイトなの?]

「ん? ああ。ダイナマイトじゃないんだけどね、ドワーフが長年使っている発破剤(爆薬)だって」


「カガリ、ダイナマイト持ってるのかい?!」

 ”ダイナマイト”の単語に膝丈サイズのアズラが反応した。こころなしか、目がキラキラしている?

「ざんねぇん。な~いよっ。匂いしないでしょ?」


 ニヤニヤしながら、悠里がアズラを抱っこすると、縦穴を登り始めた。


「そうかい。ないのかい」

「さあさ、アズアズよ。退避するよ」


 縦穴を登りながら、なぜアズラがダイナマイトに反応したのかを悠里に尋ねた。


 どうやらダイナマイトという爆薬は、”甘い”らしい。


 ”静かな爆発”が起こる前、悠里は異世界交流の一貫で、アズラやカイド達を旧地球の鉱山の見学につれていったことがあった。


 そこで使っている発破剤、ダイナマイトに、アズラの鼻が反応し「食べてもいいかい」と、マナコンドリアを持たない、鉱山の一職員に直接尋ねたのだそうだ。アズラが初めて竜族の言語でなく、日本語を使ってコミュニケーションした瞬間だったという。


「なんかね、ダイナマイトに使っている成分で、甘く感じるヤツが入っているらしいよ。もちろんアタシも職員の人も止めたんだけどさ。それであきらめたように見えたんだけどねぇ。……ね! アズアズゥ」

「なんだい?」

「その態度、絶対食べたでしょ?」

「……ダイナマイトは甘かったよ」

「うりうり~。無事でよかったな、アズアズよぉ!」


 過ぎた話だからあれだけど、無事でよかったな、アズラ。


「よーうし、耳を塞げぇ!!」

 安全な場所まで導火線をのばすと、カイドの号令でみんな耳を塞いだ。


 …………ぼく、まずいんじゃないか?


 一応耳を塞いでみたけれど、僕に限っては、耳を手で塞いでも、ほとんど効果がないと思う。


 僕は耳がいい。花太郎よりも聴力が優れているのは、空気の感触を敏感に感じることができるからだ。


[悠里、ぼく、もうちょっと離れるよ]

 唇を読んだ悠里がニヤニヤしながら頷いた。僕がのっぴきならない表情をしてたからだと思う。悔しいけど、時間が惜しい。


 急いで上昇した。


 見下ろすと、シドが導火線の先端に取り付けられた、丸い魔石に手をかざすのがみえた。


 くぐもってはいたけれど、轟音だった。


 思っていたよりも音は小さかった。けれど、以外と小さかった音とは裏腹に僕の身体は花太郎の超音波ブレードのように激しく震えていた。



 身体中が、めちゃくちゃ痺れた。

 どうやら発破が生み出す爆発というのは、音の大きさよりも、空気をふるわせる衝撃のほうにエネルギーを使うみたいだ。 

 

次回は6月11日 投稿予定です

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