プロローグ:おひとりさま
初めて筆を取らせていただいたため、至らぬ点が多々あるとは存じますが、読者の皆様の太平洋のように広いそのお心で、あたたかく見守っていただければ幸いです。
お一人様。
最近こんな言葉を街中でよく耳にする。飲食店やカラオケなど、友人と一緒に行くことが多い場所へ一人で出向く方のことを言うようだ。僕も何かといえば一人で行動することが多いので、お一人様には少しながら共感するところもあり、なかなか他人事とは思えない言葉となっている。だけれども何でも一人でやってしまうのは人間の性質上不可能なことであるから、程よく友人や知人と協力することが大切だ。というわけで辛いと思った時には周りの方に助けを求めるよう心がけている。もちろん僕も何か頼み事をされれば快くお受けしますとも、特にそれが可愛い女の子ならば。
保証しましょう。
さてみなさん早速ですがご想像いただきたい。
時は平成、初夏の木漏れ日が目に眩しい夕暮れ時、同級生の女子に放課後校舎裏に呼び出され待つこと5分。現れた彼女が最初に発した言葉は何か?
賢明な読者の皆様方のことであるから、ここで愛の告白の言葉だと推理なさる方もいらっしゃるかもしれない。事実僕もそうだった。しかし現実というものは得てして私たちの想像を軽く飛び越えて行くものであり、この場合も冷酷無比な現実というやつは僕の頭上遥か彼方をすいすいと飛び越えて行ったのである。
「私と一緒に天下をとりましょう」
花の高校2年生、同級生の女子に放課後呼び出され、心踊らせて向かった先でなにゆえ世界征服のお誘いを受けねばならないのか。
僕は自らの数奇な運命と過剰に厳しい現実に反感を込めて言ってやった。
「お一人様でどうぞ。」