act"3第一接触
ーー捉えた‼︎ーー
手から肉と骨を断ち切る手応えが伝わってきた。
そのままストライフを振り抜き、アルトの体を上半身と下半身に分断した…はずだった。
分断されたアルトの体は地面に崩れ落ちるその前に闇に紛れるように消えてなくなった。
「…これは…?」
その場にいた全員が目の前で起きた現象を理解することができなかった。
「…木霊す夜影…」
後ろから聞こえるはずのない声が聞こえ、振り向くと、そこには…
「危ない危ない、危うく死ぬところだった。」
今さっき斬り倒したはずのアルトが立っていた。
「なんで?って顔してるな、まあ、簡単に言えば分身てところかね、影を分身として切り離しておいて、状況に応じて影と本体が入れ替われるってことさ。」
「…何を言っている…?」
「ま、要するに、お前が斬ったのは、俺の影だったってことだよ。」
そう言ったアルトの足元にあった影がアルトの足元から切り離され、アルトと瓜二つのそれが現れた。
「口で言うより見た方が早いってな。」
…俺は、夢を見ているのか?
あり得ない、そんな現実離れした
技が使えるわけがない。
アルトは俺の顔を見て口角を吊り上げて笑っていた。
「さて、これで二対二ってわけだな。」
アルトは再びサーベルとダガーを構え直した。
目の前の理解し難い状況にストライフを握る手から汗が吹き出し、手が滑る。
「ん?どうした?二対二じゃ分が悪いってか?」
…衛兵数名をああも簡単に倒してしまう相手が二人に…どうする…?
焦る気持ちを抑えるように頭を巡らし、打開策を考える。
「エリカ、あれと対等に戦えるか?」
「え?ハイネ…本気で言ってるの…?」
「ああ、本気だ。俺は本気で奴と一体一で戦うって言ってるんだ。」
自分でも、賢い判断だとは言えない。だが…それくらいしか策が無い…。
「ふーん、サシで来るんだ?」
アルトは退屈そうに問いかけた。
「…エリカ、無理だと思ったら下がってくれ、必要なら、撤退する。」
「…わかった、お互い死なないように…だね。」
「当然。」
そう答えて駆け出す。
「そうこなくっちゃ!」
同じようにアルトも地を蹴って駆け出す。
ストライフを脇構えで構え、地面を蹴る。
一歩、また一歩アルトとの距離が詰められていき、その距離がゼロに達した瞬間、踏み込んだ足に力を込め、斜め上に振り上げる。
ストライフが描いた軌道はアルトの胴を捉える軌道であったが、案の定、手に伝わってきたのは金属同士をぶつけた時のそれであった。
「…ッ!…二度は通じないか…。」
「二度も喰らう方が馬鹿なのさ‼︎」
アルトは居合いの構えから抜刀し、ストライフの直撃を凌いでいた。
…強い…。今まで遭遇した部隊がほぼ壊滅させられてきたのも納得できる。
…さっきの一撃くらいしか当てられない…きっとあれもわざと攻撃を受けた振りをしていたのだろう。
…こちらが動揺することを知った上で…。
アルトの剣戟は激しく吹き荒れる嵐のように、隙が無く、洗練されており、凌ぐので手一杯だった。
そして、剣戟を凌ぎながら、俺はこの状況の打開策を考えていた。