act3情報収集
「…そろそろ店終いかな…」
ドアのプレートを閉店に変えて、この日の営業は終了した。
「…さて、そろそろ始めますかね。あと十人を殺しに…」
床下の地下室へ降り、昼間着ていたそれを再び纏い、部屋を後にする。
祭壇の横に出たとき、神父はいなかった。
「…まぁ、流石にいつまでも祈ってはいないだろうしな。」
そう呟き、教会から出ると…
「…ま、衛兵の一人二人いてもおかしくないしな。」
人混みに紛れて衛兵の目を欺いて進む。
その時、人混みからとある会話が聴こえた。
「なぁ、お前聞いたか?公爵様がまたパーティーだとよ、無論貴族階級だけでな、なんでも息子のハウンド入隊記念らしいぜ。」
「息子ってお前、あいつか?泣きべそのお坊っちゃんだろ?よくハウンドに入隊できたな、またコネか?」
「さぁ?でもどうせまた公爵は湯水のように金を使うんだろうな、俺らは明日の飯も危ういってのにな。」
「よせよ、言ったってどうにもならねえんだからよ。」
…話を聞く価値がありそうだ。
俺は会話をしている二人を突き止め、問いかけた。
「なぁ、そのパーティーってのはどこでやるんだ?」
「んぁ?どこって…あ、あんたは…!」
声を上げようとしたその口を手で塞ぐ。
「悪いな、騒ぐのはよしてくれ、衛兵に見つかる。」
「もが、もがが…」
そのまま二人に少し裏まで付いてくるよう指示をする。
それから、二人から話を聞くことにした。
「それで、さっきの話について、他に知っていることはないのか?」
「は、話すから‼︎い、命だけは‼︎」
彼らは完全に怯えきっていた。
そこまで俺は脅した覚えはないんだけどな。
「わーってるわーってる、少し落ち着いてくれ、これじゃ情報もらおうにもなにもできないだろ?」
「あ、あぁ…そ、それで?どこから話せば…?」
「知ってること全部」
「え、えーとだな、公爵は…その、あ、明日の夜にパ、パーティーをひ、開くって言ってたらしいんだ」
「場所は?」
「こ、公爵の屋敷だってよ」
「誰が来る?」
「た、多分縁のある貴族は皆呼ばれるはずなんだ…ただ…」
「ただ?」
「そ、その公爵が、ご護衛にハウンドを呼ぶとか呼ばないとか…」
「他には?」
「い、いや、もう他に知ってることは…もう…」
「そうか…それじゃ、もう終わりにしようか」
「ま、待ってくれ‼︎殺すのだけはか、勘弁してくれ‼︎」
二人とも何かを勘違いしているようだ。確かに、アサシンは大半が情報を聞き出した後に情報元を殺すかもしれない、しかし、それは教団という大きな組織としては行動する時だけのことだ。
それに、俺の存在はあちらこちらで既に知られている。
今更殺して証拠隠滅をする必要もない。
「安心しろ、殺しはしない。」
「へ?」
呆けた顔をしている二人の手に少し金の入った袋を乗せた。
「…へ?」
「情報料と口止め料だよ、とりあえず次の日の食事には困らないだろうさ」
「い、いいのか…?」
「構わないさ、困ってる奴は見逃さない、それだけだよ。」
すると、二人は顔を明るくした。
「あ、ありがとな‼︎」
「ああ、貴重な時間を割かせてすまなかったな」
踵を返し、広場の方へと足を向ける。
「…さて、明日…か…」
俺の中の、復讐の歯車が、再び回り出す。