act1"探索
こちらが到着した時、奴は既に追跡不能な距離まで逃走していた。
「…逃がしたか…。」
辺りには斬り伏せられた衛兵達の亡骸が転がっていた。
「…それにしても、どんな人なのかしらね。」
ふと後ろから声を掛けられた。
「エリカ、 どこに行ってたんだ?」
「何かしら足掛かりになるものでもあるんじゃないかと思って近くを探してたのよ、そっちはどうなの?ハイネ」
「さっぱりだ、奴を特定する手がかりも何もありやしない」
そう言ってこちらへ向かってきたのは、茶髪で少し長めの髪型で碧眼の少女だった。
「でも、どうしてこんなところに現れたのかしら?」
「さあな、俺はあいつじゃないんだ、わかるわけないだろう。」
「案外すぐそばに隠れてたりするかもね。」
「それはないだろう?」
するとエリカはそう答えるのを待っていたかのような顔をしながら答えた。
「灯台下暗しってやつよ、私たちが血眼になってあっちこっちを探しているけれど実はすぐ近くにいるかもしれないってことよ。」
「どっちにしたって奴を探さないことには始まらないだろう?」
「そうね、どうする?部隊を二手に分けて捜索する?」
「そうだな、ああ、それで行こう。片方は俺が、もう片方はエリカが指揮をとってくれ。」
「了解」
アルト・クラウソラスに関する情報は白装束であること、アサシンであること、近接格闘に長けている。
この程度しか情報がないのである。
何故情報がこれくらいしかないのか、それは…
奴に遭遇した部隊はそのおおよそが壊滅状態に追いやられるからだ。
命からがら逃げ延びた隊員が錯乱した状態で証言したそれくらいしか情報がなかったからなのである。
「…白い死神…か…」
奴は軍の間では白い死神と呼ばれ、恐れられていた。
しかし、相手が強力なら、俄然興味が湧いた。
「俺が捕まえる」
そう呟いたその時だった。
「隊長‼︎あれは‼︎」
その時、俺は見逃さなかった、白装束の人間が建物と建物の間を飛び越えたのを
「奴だ‼︎逃がすな‼︎」
しかし、それも遅く、奴は追跡不能な距離まで逃走してしまった。
「…逃がしたか。」
それから捜索を断念してエリカと合流した。
「そっちはどうだった?」
「一応見つけはしたんだけどな、すぐに逃げられた。」
「そう、とりあえず今日はこの辺りで引き上げた方がよさそうね。」
「そうだな…総員、撤退」
『了解』
しかし、奴は一体何故こんな場所に現れたのだろうか?
引き上げながら俺は奴がここに現れた理由を考えていた。