第五話 村正、新生活
第五話 村正、新生活
「以上がこの家の大まかな機能説明になります」
保護観察を行うための家についた後は早速家の機能についてミレイが説明してくれた。
日本の設備とくらべて違う所といえば家電製品や水道光熱などの設備がこちらの世界では一般的な魔石によるものであるといったところだ。
魔石というのはファンタジーに欠かせない魔力という力を流し込むことで流し込まれた量に応じた火力や水量、風などを生み出す石のことである。
魔鉱という鉱山や地下洞などから掘り出される原石に特殊な加工を行い、特別な知識がない者でも使えるようにするのだという。
グリッターの研究部でも開発や研究を行っているそうで、新しい機能を持った魔石の開発は各国で競うように行われている。
当然兵器としても扱えるため、重要度は低くない。
使う本人にある程度の魔力が無ければ使えないかと思いきや、こちらの世界でも魔力を持たない人間はそう珍しくないらしい。
だからこそ魔石としての研究開発に意義があるとナタリーは言っていた。
魔力がない者が使おうとすると、ある程度の魔力は大気中から取り込み使用してくれるという。
魔力を持つものが使うよりもその効果は低くなるものの、本当にだれでも使えるというのは革新的な技術と言っても過言ではない。
水道やガスコンロだって当たり前のように使えるまでには沢山の苦労があったはずだ。
なにもないところから魔力を変換して水にしたり炎にしたりというのは不思議としか言えないが、自分にも使えるというのはありがたい。
試しにやってみたところ、どうやら魔力はあるようなので心配することは無いのだが。
共同生活を行う家は基本的にグリッターに加入した者が自宅を持たない場合に住む家を使う。いわゆる社宅のようなものだ。
基本的に4人で住む家として用意されているため、二階に二人づつ入る10畳ほどの大きめの部屋が2つ配置されており、ベランダもある。
それなりに広い庭もあり、快適な生活が出来そうだ。
「さて、一文無しのムラマサくん」
「はい」
ミレイが荷物を部屋に置いてリビングに戻ってきて部屋に入り次第声をかける。
「生活をしていくのにはあなたにも働いて貰う必要があります」
「何をすればいいですか?」
「自分で考えなさい、と言いたいところだけど本当に何も知らないみたいだし、初めは私達三人のそれぞれの仕事を手伝ってくれたらいいと思うわ」
「それぞれの仕事、と言うと」
「私はこの国の治安部隊だから、治安維持活動の手伝いね」
ミレイがそう言うと他の二人も続いた。
「俺は害獣討伐やら調査遠征やらの戦闘部隊だな、ムラマサは腕に覚えがあるんだろう?やることがなければついて来いよ」
「私は魔石や魔術の開発よ、別に手伝ってもらう事なんて無いから。素人にうろつかれても邪魔なだけだし」
ナタリーだけ妙に辛辣である、まだ邪魔をしたと思われているのだろうか……
「ナタリー、一応この保護観察官は罰則の一つなんだから、嫌とか言ってないで仕事をさせるのがあなたの仕事よ」
「……わかってるわよ」
どう聞いても嫌というニュアンス以外を感じられないが、いつまでも保護観察を受け続けるわけには行かない。
「わからないなりに邪魔にならないように頑張りますのでよろしくお願いします」
「……分かった、邪魔したら許さないからね」
一応は許可をもらえたようだ。こうして当面の活動内容が決定した。
その日はもう仕事をしに行くことはないということで街中を見て回ることにした。
ジューリに聞いていたとおり、大通りには多くの店が立ち並び、武器防具などを売っている店など、品目が同じでも価格で競ったりするほどには盛んな街だ。
店舗を眺めて知った事だが、この国の通貨はグリッドというらしい、表記的にはGの様な文字で表している。
数字自体は10進数で数えるらしいので特に買い物に困ることもなさそうだ。
パンに肉を挟んだようなファストフードが7Gということを考えると1Gあたり20円程度と考えておけばいいのだろうか。
収入が出て売り買いをすればもう少しピンと来るだろう。
ひと通り見て回った感想としては、話に聞いていた通りの活気にあふれた良い国だな、と感じるところだ。
今日のところは夕食をジェイドに奢ってもらった。
明日からは本格的に保護観察対象としての活動が始まる。
ムラマサがこの世界を守るための指令は何らかの形であの神(仮)の使いが接触してくる、と言っていた。
それがあるまではこの世界に慣れる事が先決だ。
そして自由に行動出来る身分も、今は全力で保護観察を抜け出すことに集中しよう。
話のキリの良い所で切ると文字数が安定しませんね。
しょうがないにゃぁ と思っていただければ幸いです