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第十七話 グリッドランド王城戦 その一

第十七話 グリッドランド王城戦 その一


「燃えよ、紅蓮の槍。大地より天へ!」

ミスティカが指先に紅蓮の閃光を纏い大ぶりに天を仰ぐと城門の前にいた蜘蛛型のモンスターが地面から炎の槍に貫かれる。

それに合わせて前衛隊が斬りかかりとどめを刺す。

ギチギチと嫌な悲鳴を上げながら絶命したモンスターは魔法隊の風魔法で横にどけられ、徐々に死体の山が作り上げられていった。

「4隊!1隊と交代!私は中に突入する!絶対に街にモンスターを出すな!」

「「「はい!」」」


 目立って傷ついた前衛隊にヒールをかけていく。

ミスティカの魔法の教授によって得たものの中で最も役に立つものが対象に触れる事無く回復の力を注ぐことが出来るようになったことだ。

距離や範囲は大したことが無いが、攻撃魔法と同様に練度を上げれば距離も正確性も回復力もあげられるだろうとミスティカは言っていた。

「ありがとう、助かった」

「俺も城内へ向かう!回復してやれないから気をつけて!」

「任せておけ!」

再び立ち上がり前線へと向かうグリッター達、その横を抜けて城内へと入った。


 城内の状況を一言で言えば地獄だった。

そこら中が血に濡れている。

「危ない!」

ミスティカが突然魔法を放った。火球が飛んだ先を見れば倒れこんだ兵に今まさに剣を振り下ろそうとするリザードマンがいた。

振り下ろす直前に着弾しかろうじて止めを刺されるのは阻止したが時間の問題だ。

村正は駈け出しヒールの届く範囲に入り次第回復をかけていくが、数人に届かない事を感じるとどうしようもない死を感じる。

「くそっ……」

『ムラマサ、どうする?』

『この状況はマズい、シルフィエ、力を貸してくれ』

『わかった、剣とナイフに力を入れるね』

ほのかに剣とナイフに翠玉色の力が纏われる。すっと目を閉じて全身に力を込め直し、意識を戦闘モードへと切り替えていく。

『ムラマサ、来るよ』

城壁を駆け、上から獲物へと飛びかかる影をシルフィエが察知する。

神経を研ぎ澄まし、シルフィエと意識を合わせることで自分一人では把握できないはずの情報が取り込まれていく。

背中側から襲い来る狼型のモンスターを二歩体をずらし、振り向く回転と共に剣を振りぬき両断する。

「城内に敵は?」

近くにいた守護隊員にヒールをかけながら聞くとどうやら中にもいるらしい。

門から城内までの間は開けた空間であり、広範囲に影響のある魔法が有効だが、逆に言えば近接攻撃が主な村正の活躍の度合いは低い。

狭く強力な魔法が使えない城内の方がより適切な戦闘が行える。

そう一瞬で判断し、村正は入口前にいたリザードマンの首をを背後から切り落とし、振り向くこともなく城内へと駆けていった。


 城内でも戦闘の音が響いている。廊下を駆ける村正へ天井から蜘蛛型モンスターが襲いかかるが、シルフィエがそれを許さない。

村正の頭上や背後から襲いかかるもののうちの殆どはシルフィエの魔法によりその生命を散らした。

城の中央には全ての通路の中心となる広間があり、王の間等へとつながる通路もそこにある。

城が襲撃の対象となった以上は敵の目的は王であると考えられる。

こちらの目的が国の陥落を防ぐことならば再優先で王を守るべきだったのだ。


 広間に入るとそこには一体どこから入ったのだと言わんばかりの巨大なモンスターがいた。

大きさとしては中型のトラックほどもあろうかという巨体に数本の剣や槍を突き刺されているが、それを物ともしない様子を見せている。

一見巨大な猪のようなモンスターなのだが、その尻尾は複数に分かれ、その尾先には鋭い剣ほどの刃が付いていた。

その尾をまるで腕のように振り回し、守護隊を威嚇している。

「ムラマサ!」

何者かが叫んだその方向をみると片腕を赤く染めたアルマンディンがいた。

巨大な猪モンスターに目を取られていたが見渡すとかなり押されている状態なのが認めで分かる。

「加勢します!」

そう言って傷を負ったアルマンディン達にヒールをかけていく。

「来るぞ!」

モンスターがこちらめがけて動き出す。

全力で左右に散り、突進をかわす。巨体ゆえに距離感が狂うのもあって危うく逃げ遅れるところだった。

かわすついでに一撃を入れようかと振り向いたがシルフィエの警告で思いとどまる。

数瞬遅れて先ほどいた位置に尻尾の刃が振るわれる。そのまま攻撃していたら刃の餌食だった。

思っていたよりも厄介なモンスターであるのは間違いなさそうだ。

「ムラマサ、援護回復を頼むぞ!」

そう言ってアルマンディンと数人が突撃していく、アルマンディンは襲い来る尻尾を弾いて肉薄していくが、その他の守護隊員は二、三度刃をやり過ごすうちに追い詰められはじき出されていた。

頑丈に見える鎧もはっきりと一撃を受けたことがわかるくらいには凹んでいる。

攻撃を受けた衝撃で視点が定まらなくなっているのもヒールをかけると正気を取り戻し、再び武器を構え直す。

また駆け出そうとする守護隊員を止める。

「やめろ、あんたが突っ込むだけ無駄だ」

「なんだと!?」

激昂し掴みかかろうとする手を払いのける。

「回復の援護だって全員を同時に出来るわけじゃないんだから闇雲に突っ込まれても困るんだ」

アルマンディンはどうにか一撃を入れて射程外へと離脱していた。

「一撃も入れられず戻る奴は突っ込むな!死んだら回復もできないんだ!」

「……」

「この空間に他のモンスターが来ないようにしてくれ、頼む」

守護隊員の目を見て言うと納得したのか一度頷いて通路へと駆けていった。

「他にもこのデカいのに攻撃が通らない奴がいたらモンスターの増援を防ぐ方に回ってくれ!」

そう村正が叫ぶと六人いたうち四人が戦線を離脱した。

残ったのはアルマンディンと大盾を持った全身鎧の槍守護隊員とかなり軽装だが無傷の双剣の男、それと村正の四人になる。

「言うじゃないの、気に入ったわ」

大盾の鎧からは野太いオネエ言葉が聞こえてきて少し驚く。

「アタシはブラド」

「村正だ」

「何か考えがあるの?」

「ああ、従ってくれるか?」

「ま、この事態だからね」

そう言いつつブラドが駆け出す。いつの間にかモンスターがこちらを向いていた。

「アルマンディンさん!すいませんが指示を出させて下さい!」

「分かった!リダル、ムラマサの指示で討伐するぞ!」

双剣使いはリダルというらしい。こちらを一瞥すると頷いて構え直した。

モンスターの突進をかわしてリダルはすれ違いざまに切りつけて素早く離脱する。

村正は先ほどの突進と今の突進であることに気がつく。

「よし、なんとかなるかも」

モンスターが壁を向いている間に三人に集まるように言い、素早く指示を出す。

三人が頷いたのを確認し剣を抜いた。


「よし、猪討伐開始だ」


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