第三話
学校。
それは同学年の男女が仲良くしたり派閥を作って対抗しあったり、クラブに青春の全てをかけたり、または教師と生徒で禁断のラブストーリーなんぞ織り出してみたりする場である。
と、いうのは坂口知宏の個人的な見解であるが、まぁあながち間違いであるというわけではない気がする。
現に、彼の採った統計の中では、クラスにカップルが約一ヶ月に三組。
学年をあわせたりすると結構な数のカップルが生産されていると言っても過言ではない。
また、この学校の部活動はどこも真面目で、大会成績も良いといえる。
そして坂口知宏の現在注目一押しナンバーワンである人間は同じクラスの「三島十色」であった・・・。
「神様って・・・学校に行くって良いんですか?」
「神様は学校に言っちゃ行けないという決まりがあるのか?日本というのは心が狭いところだ。ついでに面積もだな」
「はぁ・・・」
これは十色の通う「音月高校」へ向かう道中の会話である。
神は巫女服ではなく、彼の高校の制服を着ていた。
そしてまた姫子も連れてきていた。
「ところで十色。まだこの日本での名前を決定していないのだが、どんな名前が良いと思うか?」
「えー・・・」
「わし的には山田ゴンザレスとか鈴木アントワネットとかが素敵だと思うのじゃが・・・」
神は目をきらきら輝かせながらそう言った。
「神の美的感覚がわかりません・・・。えっと・・・神本さんとか・・・」
悩んだ末の「神本さん」も微妙である。
「下の名前はアントワネットか?」
「いや・・・アントワネットはちょっと・・・せめて日本人らしい名前にしてください」
「それじゃあ花子だな」
「花子!?あの、それより、「華子」って書いて「かこ」って読む方が素敵な気がします…」
おずおずと十色が申し出ると、また彼女の目が輝いた。
「神本華子!!ナイスじゃ。よし、それで行くぞ!」
「マスターの名前、華子?」
問う姫子に、満足そうに笑いながら「そうだ」と、今日から神本華子になる彼女は答えた。