第二話
三島十色が目を醒ますと、そこは古いアパートだった。
築五十年と趣があるすぎるくらい趣のある古い家。
お金がないから家具もない。
あるのはちゃぶ台と冷蔵庫くらいだ。
そんな部屋の中で、十色はゆっくりと起きあがった。
そして、今までの出来事を一生懸命思い出してみる。
「あぁっ…!!」
「何があぁっ…!!なんだ?」
「本当に生き返ってるなぁ…とか」
「神の力だ。素晴らしいじゃろう。もっと神社のお賽銭もケチるな。五円にご縁があると思ったら大間違いだ」
「…って、あれ?すいません、なんでここにいるんですか?」
顔を右に向けると、ツインテールに巫女服を着た「神様」が、我が物顔で彼の家に居座っていた。
「なんでここにいるか…愚問じゃな。お前を幸せにするためだっ!!っていうか、なんだこのアパートは!三十年前の貧乏学生じゃないんだぞ!」
可愛い顔でプリプリと怒っている。
いや、怒っている内容は結構理不尽なのだが……。
「なんで三十年前…?」
「イメージ!とにかく、こんなところに神はいられないからな。ふふ…ていっ!」
パチンと彼女が指を鳴らすと、もうそこはボロアパートではなかった。
「マスター!」
「姫子も到着したか」
「あいー!!」
「って…神様…ここは、ここは…!!」
十色が驚きにブルブルとふるえ出す。
「なんじゃ?これじゃ不満か?仕方ない、少し待て…」
また腕を振り上げようとする神の手を、十色はがっしり掴んだ。
「いや、どの当たりにボクは不満を抱けば良いんですか?あのボロアパートに住んでいたボクが…!!」
改めて、十色は辺りを見渡す。
そこは、ボロアパートではなく、綺麗な最近建築されたばかりであろう高級マンションの一室だったのだった……。
「おぉ、満足か?幸せの第一歩。それが満足じゃ。明日から学校へも行くぞ。わしも行くからな」
楽しげにわらいながらそう言った。
十色はもう、この突飛な神様の行動に、どうすれば良いか分からなかったのだった。