小話 ~教会街への道のり~
教会街はエルシリア教の大本山として栄えている。そのため<エルシリアの街>と呼ばれる方が一般的であった。
エルシリア教とは、善悪のバランスが崩れたときに救世主として現れるという聖母エルシリアを信仰する宗教である。
「話によるとそこで面白い事をやってるらしい」
「面白い事?」
「行けばわかるさ」
「教えてもらえないのか」
「楽しみにしとけ。というかあたしもよく知らん」そう言うリタをケイはあきれたように見つめる。
「そういうことはきちんと事前に調べとくべきだろう」
「・・・説教臭いぞ」
「せっかく心配してやってるのに」
「余計なお世話だ」
「素直じゃないねえ」
「うるさい。大体なあ、お前はあたしについてくるって言ったんだから黙ってついてくればいいんだよ」
「つれないな」
「ま、あたしが面倒事に巻き込まれる時はお前も一緒だからな。心配する必要は無いんじゃないか?」
「・・・今のはすごく回りくどい『お前のことを信頼してるぞ』って言う意味の言葉か?」ケイが顔を覗き込もうとするとリタはすぐさま顔を向こうに向けた。
「・・・知らん。どうだろうな」
「そうか」ケイは顔をそむけたままのリタを見て笑った。
顔は見えなくても耳が真っ赤なのが見えてるぞ。
「何を笑ってるんだ?」
「いや、リタは可愛いなあと」
「・・・お前はそんなに殴られたいのか」
「褒めてるだけじゃないか」
そんな他愛も無い会話を繰り返しながらリタとケイはエルシリアの街を目指した。