表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盗賊の娘  作者: 烏山 満
2/14

プロローグ ~逃亡~  ※必ずしも読まなければいけない内容ではありません

 崩れかけた城跡を、山の向こうから漏れ出た朝日が照らしていた。


 山中に建っているだけあって人気(ひとけ)が無いと思われたが、かろうじて屋根の残る城の大広間には屈強そうな男たちが何十人と酔いつぶれている。


 よく見れば、城の周りにも何人かが見張りをして城に近づく者が居ないか監視しているのであった。



 此処(ここ)は世に悪名を轟かせる盗賊団の隠れ家である。彼らは時々、山から下りてきては略奪や放火など悪事の限りを尽くしていく。

 被害にあうのは(ふもと)の村々はもちろん、運悪く盗賊と鉢合わせしてしまった不運な旅人まで様々であった。それでも人々が此処、<東の大山脈>から離れないのはここが周囲が荒地にも関わらず奇跡的に農業に適した土地であり、国と国を結ぶ交通の要所となっているからである。


 そんな場所を根城にしているため、盗賊団はかなりの財宝を蓄えているのであった。



 ところでその盗賊団がどうして兵士やその他諸々の者たちに処罰されないのか。簡単に言えば、盗賊団の(かしら)が役人たちに賄賂(わいろ)を贈っているからである。この(かしら)、もう随分と老けてきているが悪知恵は働く老婆であった。もし買収できなくても、大山脈を越えて兵士がやって来るなどありえない。山に隠れ家を構えているため麓からの攻撃に備えればよいだけ、その上にこの老婆は荒くれ者たちから異様に信用が厚く、盗賊団がこれまで無敗を誇ってきたのも、この老婆のお蔭だった。


 けれどももちろんそんな者にも弱点はあるものだ。


 この老婆でいえば一人娘がそれにあたった。育った環境のせいか生意気な娘であったが、老婆は非常にかわいがっていた。

 その娘の名前はリタといった。


 さて、その娘といえば今日はやけに早起きをして怪しげな動きをしているのだった。酔いつぶれた男たちを起こさないように静かに広間を横切り、母親の枕元にしゃがみこんでいる。何をしているのかと思えば、老婆が首に下げている鍵を取ろうとしているのであった。慎重に、物音ひとつ立てずにそれをやり遂げると、老婆にもう一度小瓶に入っている眠り薬を嗅がせ、すばやく金庫室へと向かった。


 先ほども一度述べたが、ここには多くの財宝が溜め込まれている。この鍵はその財宝の大多数が収められている金庫の鍵であった。扉が(きし)む音が盗賊たちを起こしてしまうのではないかとリタを不安にさせたが、こちらに近づく足音は聞こえない。自分が通れるだけの隙間を開けるとそこに滑りこんだ。


 金庫の中の金色の山はリタの背を越えるほどであった。うずたかく積まれた中には、国王に届ける途中の使者でも襲ったのだろうか、王冠まで有る。


 リタは大きな金塊や装飾物には目もくれず、傷がついていないなるべく凝った装飾のついた指輪などを身につけ、持ってきた袋に宝石などを詰め始めた。大きな物はこれからの行動の邪魔になるだけだ。目ぼしい物を詰め終わると、わざと金庫は開けっ放しにして厩を目指した。


 干草のにおいが充満している小屋の中で、馬達を柱に括り付けている綱を手際良く(ほど)いていく。従順な馬達のことだ、一旦は外に出てもまた戻ってきてしまうだろうが、少しの時間稼ぎにはなるかもしれない。リタは一頭に先ほどの袋と身の回りのものを入れたズタ袋を載せ、鞍をつけて外へと飛び出した。


 出来るだけ早く山道を駆け下りさせる。後ろのほうで見張りの男たちが慌てて合図の鐘を鳴らしていたが、もう遅い。だいぶ離れたところでリタは一度だけ城を振り返った。


 そして、満足そうに笑うと麓の方へ馬を急がせたのだった。

こんな新参者の小説を読んでいただき、感謝感激です。


今回はプロローグでしたので情景描写が多く読みにくかったと思います。

 次回からは主人公もしゃべりますので多少は読みやすくなるかと・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ