第十一話 ~消失~
「あの神父、危険危険とわめいていたが、なんにもないじゃないか」確かに先ほどの分かれ道から多少曲がりくねってはいるもののずっと一本道が続き、何かが現れるでもなく、リタ達以外に生き物の気配は無かった。
「つまらん」
「俺としてはこのまま何も起こらない方がいいんだけど」
「何を言ってるんだ。宝探しといえば、罠やらそれを狙う敵やらが現れるのが当然だろうが。昔、母様が読んでくれた本にはそう書いてあったぞ」
そう言われれば、自分もそんな話を聞いたような気がする。まだ小さいリタが頭領のひざに座って、リタに付きっ切りだった自分も、読み聞かせに耳を傾けていたのだった。
でもあの話は単なるおとぎ話だったような。
「そう思ってここに来たのに、何も起こらないとは何事だ」
「いや、だってあれはただの物語であって、現実では――――」言いかけたその瞬間、足元の地面が掻き消え、二人は穴に吸い込まれた。
リタとケイの立っていた場所には四角く暗い穴がぽっかりと口を開けていた。リタの取り落としたランプが地面に落ち、割れる。やがて穴は元通りに閉じ、先ほどのことが嘘であったかのように、静まり返った。
なかなか追いつけない。さっきからほとんど同じ光景ばかり見ているので、どれくらいの距離を歩いているのかもう分からなくなってしまった。
クラークは焦っていた。早く、一刻も早く、彼らを見つけなければならない。奴らよりも先に。あの血にまみれた恐ろしい化け物よりも先に。
そこでばたりとクラークの足は止まった。地面に落ちているのはランプだ。彼らに渡したのと同じ。
遅かったか――――。
青ざめながらがらも、クラークは考え込んだ。あきらめるのは早いかもしれない。奴らは彼らを連れ去った可能性もある。
何にせよ、進むべき方向はわかっていた。武器など、まだ一度も握ったことはない自分が何を出来るかはなはだ疑問だったが、それでも進まねばならない。
クラークは壊れたランプをその場に残し、再び早足で歩き始める。奇妙なことに今度は落とし穴も開かない。クラークは地面の下に空洞があるとは夢にも思わず、その足を進めた。