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チラシinポスト

スナックみたいに手軽に読めるモノを目指しました。

「ホントにここで合ってんのか?」


 彼の目の前には、ガラス張りの綺麗なオフィスビルが建っていた。外資系コンサルでも入っていそうな建物だ。

 

 スマホに表示した地図は、確かに此処を指していた。


――――――――――――――――――――――――――

 話は少し遡る。


 「なんなんだよあのバーコード課長!テメェの髪の毛むしるぞコラァ。」


 そこで通行人が誰も居ないからといってレジ袋片手に叫んでいる彼は白峰修司、27歳会社員。今日も今日とて課長に残業を押し付けられたサラリーマンである。

 

 さて、彼が今手に持っているレジ袋(有料)の中身はカップラーメンとおにぎり、後何本かのビール。現在時刻は午後9時28分、会社を出たのは午後8時37分、終業時刻は午後6時30分、およそ2時間の残業。彼が言うところのバーコード課長(51歳 男性 東京都在住 最近の悩み 薄毛)に取引先のための資料を作ってくれと言われ、残業した帰りである。


 「人がせっかく定時に上がれそうだったのにあのヤロウ、仕事押し付けやがって。んでもってアイツはすぐ帰るのかよ。こっちは残業したせいで雨に降られたんだぞ。」


 そんなことを言いつつ彼は自宅のアパートに帰ってきた。何時もの様にエントランスのポストを見てみると色々な出前のチラシや水道修理業者のマグネットがなどが入っていた。


 「今日はチラシが多いな。そんでもってこのマグネットマジで剝がれないんだが。なんでだよ。やっと残業終わらせて帰って来たってのになんでこんなことに時間を取られなくちゃいけないんだ。せめて接着面上にしろよ。俺が一体何をしたって言うんだよ。毎日毎日真面目に働いて善良な市民やってるだろうがよぉ。」


 そうしてマグネットと格闘すること約2分。やっとのことで外したマグネットと広告を持って彼は部屋に帰った。


 風呂に入り、コンビニで調達した夕飯を食べ、ビールの缶を開けると彼は落ち着いたのか、スマホ片手に横になりながらポストに入っていたチラシを眺め始めた。


 「えーっと、コレがピザ、コレが寿司、コレがファミレス、。」

 彼はチラシを一枚ずつめくっていく。


「……葬式?俺まだ20代……」


「…………怪異マッチングぅ?」


 「…………怪異マッチングぅ?なんだそりゃ。」


 彼は勢いよく叫んで起き上がり、チラシをよく見た。


 

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「…………なんだこれ。ホントになんだこれ。イタズラか?にしては手が込んでる作りだな。でも内容が突飛すぎるだろ、もうちょい現実的なのにしとけよ。」


「……にしても恨みかぁ。小さいのでいいならそれこそ山ほどあるに決まってんだろうが。課長は俺にしょっちゅう残業を押し付けてくるし、隣の木田もなんか仕事頼んでくるし、岩木の資料はミス多いし、部下だからお前が直せって言われるけど確認すればわかる間違いだらけだし、取引先の相手は嫌味っぽいし。色々あるわ。」


彼は溜息をついた。

 

「……仕事の話ばっかじゃねぇか……。」


 虚しくなったのか、彼はチラシを置き、2本目のビールを開けた。


 彼は何本目かのビールを開けると酔っ払ったのか、ひとり愚痴大会を始めた。

 

 「今日は朝からメールは溜まってるし、やっと一個終わったと思ったら「これもお願い」って軽〜く仕事投げられるし。いやその一言、こっちは全然軽くないんですけどねー。しかも急ぎって言われた案件に限って、後からやっぱ優先度下げてって来るの何なんだよ。じゃああのバタバタ返せや時間泥棒。灰色の男たちかよテメェはよぉ。挙げ句の果てに会議は長い割に結論出ないし、誰も決めない空気だけが濃くなるし。気づいたら時間だけ溶けてて、自分は頼まれた作業で残業コース。お疲れさまですじゃないのよ、手伝えよ。」


 これは相当酔っ払っているやつである。


 ところで彼は酔っ払うと大抵何かやらかす。この間は、彼女とおうち焼肉をしようと思ってウキウキで黒毛和牛とホットプレートを注文した。


 ここまででお察しの方もいるだろう、彼に彼女はいなかった。


 彼は泣いた。


 買ってしまったものは仕方がないので、高校からの友達の山崎孝太君(27歳 男性 東京都在住 最近の悩み 居ない彼女の為に高額のアクセサリーを買った)と一緒に食べた。


 肉は美味しかった。


 案の定、彼は酔っ払っていたので、奇怪な行動を始めた。


 そう、怪異マッチングに申し込んだのだ。


 そうして申し込み完了メールが届き、彼の休日はこの怪しげな怪異マッチングに行く事に決定した。

 

 彼は最初行くつもりは無かった。しかし、悲しいかな彼は少々律儀で小心者であった。そんな彼にとって申し込み完了メールが届いた約束を放棄するのは荷が重いことであった。


 翌日、Go○gleマップのお世話になって最寄り駅から歩くこと5分、彼の前に現れたのは小綺麗なビルであった。


――――――――――――――――――――――――――

 そうして話は冒頭に遡る。


「ホントにここで合ってんのか?」


 目の前にあるのはあまりにも怪異と関係が無さそうな綺麗めビルだった。


 古びた雑居ビルでも廃墟でも無い建物に彼は尻込みしたが、此処まで来るともう好奇心が勝ってきた彼は中に入る事にした。


 中に入りエレベーターに乗って5階を目指す。メールを見た時、4階じゃないんかいと内心突っ込んだのは内緒である。


 5階に到着し受付に行くとそこにいたのは、普通のOLに見える女性だった。


「いらっしゃいませ、怪異仲介本舗です。」

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