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金色に触れる
夕暮れの光が、古いアルバムを照らしていた。
机の上には、数冊のノートと、端が少し焼けたような写真が広がっている。
それは、亡き息子の部屋を整理していた最中に、ふと出てきたものだった。
「ほんと、片づけが苦手だったのね……」
苦笑しながらページをめくる。
落書きのような文字。ぎこちない構図の写真。ピントの合っていない人物の後ろ姿。
そのうちの一枚――何気ない風景の中に、彼が手にしていた小さな金属の輝きが映っていた。
母親はその写真を手に取って、ゆっくりと目を細めた。
「この頃……あの子、誰かを好きだったのね」
そこに名前はない。手紙も、告白も残っていない。
けれど、確かに大切にしていた痕跡だけは、ひっそりと散らばっていた。
誰だったのか、なにがあったのか――それはもう、知る術もない。
それでも。
「……ありがとうね。あの子を、思ってくれていたのなら」
母親は写真を抱きしめるように胸に当て、ひとつだけ小さく息を吐いた。
知られなくても、届かなくても、愛は確かに存在していた。
何も語らない部屋の中、カーテンの隙間から差し込む光が、写真の上にそっと落ちていた。




