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イベリスの鎖  作者: Amit Tsu
追加エピローグ
31/33

金色に触れる


夕暮れの光が、古いアルバムを照らしていた。


机の上には、数冊のノートと、端が少し焼けたような写真が広がっている。

それは、亡き息子の部屋を整理していた最中に、ふと出てきたものだった。


「ほんと、片づけが苦手だったのね……」


苦笑しながらページをめくる。

落書きのような文字。ぎこちない構図の写真。ピントの合っていない人物の後ろ姿。


そのうちの一枚――何気ない風景の中に、彼が手にしていた小さな金属の輝きが映っていた。


母親はその写真を手に取って、ゆっくりと目を細めた。


「この頃……あの子、誰かを好きだったのね」


そこに名前はない。手紙も、告白も残っていない。

けれど、確かに大切にしていた痕跡だけは、ひっそりと散らばっていた。


誰だったのか、なにがあったのか――それはもう、知る術もない。

それでも。


「……ありがとうね。あの子を、思ってくれていたのなら」


母親は写真を抱きしめるように胸に当て、ひとつだけ小さく息を吐いた。


知られなくても、届かなくても、愛は確かに存在していた。


何も語らない部屋の中、カーテンの隙間から差し込む光が、写真の上にそっと落ちていた。


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