第6話 1989年「昭和64年」
日本は高度成長期の真っ只中
職員室はもちろん、バスなどの公共の乗り物でもタバコは当たり前。
コンプライアンスなんて言葉は存在してない時代。
でも、アートやファッション・音楽、多様な文化が次々と生まれ、街は活気にあふれていた。
ジリリリィ〜〜〜ン
目覚まし時計がけたたましく鳴り響く朝6時。
「お父さん」
「お父さん!朝ですよー」
「うるさいなー!あと10分寝かしてくれ・・・」
「遅刻しても知りませんよ!」
「朝まで麻雀してるから!」
と、
お父さんとお母さんのそんなやりとりを僕は知るはずもない。
僕はピカピカの小学1年生。
「お母さん。おはよう〜!」
「おはよう。ゆうちゃん。ゆうちゃんは偉いねー
起こさなくてもちゃんと起きれるもんねー」
僕のお父さんは鉄工所勤務の31歳
なんでも溶接できるプロだ。
母は専業主婦。30歳
家では内職で小さなバネを小さな何かの入れ物に山ほど詰めてた。
そして僕
僕の名前は神 祐一 9歳
小学1年の夏休みが終わったときに、
父の仕事の都合で引っ越しすることになり、
転校生として、ここ京立小学校にやってきた。
学校では転校生は珍しいみたいで、
僕の周りにはクラスメイトがいっぱい集まっていた。
クラスメイト
「神〜、お前走るの早いん?」
「どうだろう?」
クラスメイト
「勝負しようぜ!!」
「次はドッチボールやろうぜ!」
「サッカーしようぜ!」
と、いつも僕の周りにはクラスメイトが一杯・・・
でも、僕は走るのは嫌いだし、
ドッチボールもサッカーも大嫌いだった。
けど、いつもなぜか勝ってしまった…
転校してきてから半年、1年生も3学期になった2月。
3年生のクラスの女の子が自宅のマンションから飛び降り自殺をした。
と、放課後終わりの会で先生から話があった。
亡くなった彼女はいつも意味不明な事を話しながら、
歩いている子だったので良く覚えている。
黄色い車が迎えに来るから、もう行かないと、
って言ってまだ午前中なのに学校を出て行く子だった。
家でご飯を食べながら、その子の話をお母さんにした。
お母さんはとても悲しそうな表情で聞いていた・・・
なんだか今日は一人で寝るのが不安だな・・
と、
思いながらも子供って不思議なもので、
布団に入って5分で寝てしまった.... 笑
終わりの会の時。
建物が大きく揺れ、立っていられなかった。
「机の下に隠れて!!」と
先生の声が響き、
みなしゃがみ込んだ。
揺れが収まり、あたりを見渡すと、教室の中はぐちゃぐちゃだった・・・
と、
思った瞬間、さらにさっきより大きな揺れが襲ってきて、
校舎は崩れしまった・・・
ふと気づくと僕は崩れた校舎を空から眺めていた
その校舎に津波が押し寄せていろんなものを飲み込んでいた。
「お父さん!お母さん!!」
と叫んだ!!
その時の母の行動は早く
「ゆうちゃん!お母さんココにいるよ!」
「大丈夫だからね!!」
「あーー、
夢か・・・」
布団から起き上がり
「まだ夜中の4時だ…」
僕はよく夢を見た。
地震の夢、津波の夢、空を飛んでいる僕。
空を飛べるのにすごく遅くて自由に飛べない僕。
みんな津波がくるから逃げて!と叫ぶけど
誰も逃げない・・・
逃げてもむちゃくちゃ足が遅い・・・
でも、夢を覚えているのは目覚めて5分間ほどで、
またすぐ寝てしまう。
そして朝には何も覚えていない。笑
母「また、ゆーちゃん夜中寝言言ってたよー」
「えーそーなん?何も覚えてないよー」
「朝ごはんまだー?」
僕は2年生になっていた。
新しいクラスの友達とも仲良くなって楽しい夏休みがもうすぐだ!
毎日ウキウキしながら学校へ行く日々だったが、
同級生が自殺したと聞かされた日から、
頻繁に同じ夢を何度も見た。
そのたびに寝言でお母さんを起こしてしまったが、
何度も同じ夢を見すぎて目が覚めても忘れることがなくなった。
それに、普段、家族以外いないはずの家の中に
別の気配を感じたりすることも多く、
そんな話をお母さんに話すんだけど、
真剣に聞いてくれなかった。
「今日学校行きたくない!!」
母「なんで?学校はちゃんと行きなさい。みんな行ってるんだから」
「いやだ。行きたくない!」泣きながら僕は訴えていた。
なぜ行きたくないのかの理由はわからなかった。
母「ほら、ランドセル背負って。はい!行ってらっしゃいー」
無理クリ背中を押され、、
「うん。グスっ・・・行って、きます」
僕は泣きながら渋々学校へ行った。
学校に着くといつもと変わらなかった。
が、
その日の放課後。大きな地震が襲った。
あれ?また夢なのかな?と思ったけど、
激しい揺れと叫び声がすごくリアルで、痛さも感じた。
これは夢じゃない!
教室はぐちゃぐちゃで友達は血まみれで倒れ、
教室はどんどん崩れて・・・
そのとき、僕は本当に空を飛んでいた。
大型映像で臨時ニュースで流れる..
地震速報!
「先ほど大きな地震がありました!」
「地震の震度はマグネチュード9.5」
「各地の震度は次の通りです・・・」
「みなさま余震など、まだ大きな地震が来る可能性がありますので・・・」
「大津波警報です!!」
「住民の皆様高台に避難してください!」
津波の映像
地震の被害状況
各メディアがトップニュースで伝えていた。。
「こんにちはー。ゆーちゃん!」
ん?なんか..声が聞こえる・・・
振り向くと天使さんがニコニコしながら手を振っていた。
この感じ。なんか知ってる気がする。
天使「なんで今日学校行ったの?行かなかったらココに来なくて済んだのにー」
「なんでって、お母さんが行きなさいって言うから・・」
「僕は今日、学校へ行きたくなかったんだ。」
天使「だから教えてあげたのに、学校にいっちゃうんだもんー」
「もしかして、天使さん、今日、家にきたの?」
天使「行ったことはないけど、行く必要ないんだよねー
ここにいてもゆうちゃんにアクセスできるからー」
「そーなんだー」
「ねー、僕そろそろ家に帰りたいー」
天使「それはできないよー」
「ゆーちゃん死んじゃったからねー笑」
「え?ぼく、死んじゃったの?」
「そんなの嫌だーーお母さんとお父さんに会いたいーー」
天使「会えますよ。お父さんもお母さんは生きてるからー」
目の前に大きなテレビが現れて映像が流れ始めた。
お母さん「ゆーちゃんー!ゆーちゃんは無事だよね?ね!」
泣き叫ぶお母さんとお父さんが映し出され、
お父さん「大丈夫だよ。すぐ救助してくれるから、もしかしたらもう救助されてるかもしれない」
「お母さんーお父さんー僕はココにいるよー」
「ねぇーねぇーここココーーー」
お母さん「電話も通じないし、どうやって確認したら。。。」
お母さん「私、学校に行ってくる!」
お父さん「行けないよ。道路も使えないし、まだ余震が続いて・・・」
泣き崩れるお母さん・・・
「お母さん〜〜僕大丈夫だよー」
天使「残念だけど、こちらかの声や姿は普通の人には聞こえないんですよ」
「なんでよ!そこにお母さん居るじゃん!」
僕は目一杯手を振ってアピールした。
「僕、ここだよー!!」
何度呼んでも叫んでも聞こえてないみたいだ・・・
「・・・・」
天使
「わかりやすく説明しますね」
「この場所は大阪でも日本でも地球でもない別の場所です」
「ゆーちゃんは死んでしまったので、ココに来たのです」
「ココに来れる人は限られた一部の人しか来ることができません」
「ゆーちゃんは限られた非常に特別な奇跡の人です」
天使は含みを持たせた言い回しで話してくれた。
が、、
「意味わからない!そんなの嫌だ!家に帰りたい。」
「だって僕。ココに居るじゃん!」
「なんで、どうして・・・!」
僕は何も理解できなかった。
と言うか理解したくなかった。
なんかこの感じ、、前にも経験した気がするし・・・
天使
「もう、なんとなくわかっているくせに、、、
元の生活に戻ることはもうできないんですよ」
「前に進むしかないんだから」
「なので、ちょっと話を聞いてくれません?」
「って、聞いてくれなくても、話すけど」
「たぶん、聞きたくないだけでしょー?」
ほんと嫌い、この天使。大っ嫌い!!!
「なら僕はなんなのさ?」
「僕は天使になったの?」
「ん、、天使・・・」
天使は永遠と説明してくれて、
なぜかいろんな説得をしてくれてたけど・・・
僕は全く聞く意思がなかった。
そして、
1990年7月10日
僕はまた生まれ変わった。
新たな両親のもとで。
この時、彼は転生をすでに1.1万回達成していた。