第3話 「新たな旅立ち」
俺は新たな旅立ちを決意した。
「NOVA、ありがとう。俺は地球に戻る方法を探してみる。」
「その選択を尊重しますよAoi。もし必要なら、できる限りの助けを提供すしますよ。」
俺が新たな決意を固めた瞬間、ケプラー62fの風景が一瞬にして変わった。
まるで、時空の裂け目が開いたかのように、目の前に見覚えのある光景が広がった。
古びた日本家屋、庭には白い砂利が敷かれ、風に揺れる竹林の音が聞こえる。
ここは…俺の記憶の中の1999年「平成11年」の日本だった。
「これは…どういうことだ?」
俺は自分がどこにいるのか、そしてなぜここにいるのかを理解するために、
焦点を定めようとしたが、目の前の光景が現実のものなのか夢の中なのか、区別がつかなかった。
今までの体験がすべて夢だったのか、それともこれが新たな現実なのか。
歩き出すと、見慣れた古い街並みが広がっていた。
なんとなく昭和の懐かしい雰囲気が漂い、周りには当時の風景がそのまま残っている。
少し歩くと、ふとした場所で俺が少年の頃に通っていた駄菓子屋を見つけた。
思わず足が向く。
「懐かしい…ここは俺もよく来ていた場所だ。」
店内に入ると、当時のままの品々が並んでいる。大きな瓶に入った飴玉や、古びたポスターが壁に貼られている。そして、そこには少年の姿をした俺自身が、夢中になって駄菓子を選んでいた。
「おい、あれは俺か?」
信じられない光景に、俺は思わず声をかけた。しかし、その少年は振り向くことなく、楽しそうに選んだお菓子を店主に渡していた。この光景は一体何なのか?俺は過去に戻ったのか、それともただの幻なのか。
突然、頭の中に声が響いた。それはNOVAの声ではなく、どこか聞き覚えのある声だった。
「ここが君の選択した世界だ。君が望むなら、この時代に再び生まれ変わることもできる。」
その言葉に、俺は思考が混乱した。俺が選んだのは地球に戻ることだが、それがどうして過去の時代なのか。この時代に戻ることで、何かを変えることができるのだろうか。
そもそも過去を変えたら俺は地獄行きではないか・・・
「むむ.....俺は…何をすればいいんだ?」
声は静かに答えた。
「過去に戻ることで、未来を変えることができるかもしれない。しかし、それは君自身の選択次第だ。」
過去に戻ることで未来を変えられる可能性があるという言葉に、俺は胸の奥で何かが震えるのを感じた。
もしここで何かを変えれば、地球の未来を救うことができるかもしれない。
しかし、同時にこれは自分自身の運命をも変える選択だ。
「この時代で、俺は何を変えればいいんだ?」
その問いに対して、声は答えなかった。代わりに、目の前に再び裂け目が開き、別の光景が現れた。
それは、同じ時代の中でも、まったく違う場所での出来事だった。
俺の目の前に現れたのは、戦時中の日本。爆撃の音が響き渡り、人々が必死に避難している姿が見えた。
そこには、必死に走る一人の少年の姿があり、彼は自分の家族を探していた。
「これは…まさか…」
その少年の姿を見た瞬間、俺はある事実に気づいた。
彼は、自分の幼少期の記憶と重なる人物であり、その状況もまた、俺が何度も夢で見た光景と一致していた。
「この少年も…俺自身か?」
少年が戦の中を駆け抜ける姿を見て、俺は理解した。
この場面で何かを変えることができれば、未来が変わるかもしれない。
しかし、それはまた、俺自身の運命をも変える重大な選択になる。
決断を下す時が来た。俺は深く息を吸い込み、心の中で固く誓った。
「俺は、ここで何かを変える。たとえそれがどんな結果をもたらすとしても。」
目の前の光景に向かって一歩を踏み出すと、時間の流れが急速に変化し、周囲の景色が一瞬にして明るさを増した。俺は再び、この過去の世界の中で新たな運命に立ち向かう決意を固めた。
俺が踏み出した瞬間、光景が一変し、俺は見知らぬ部屋の中に立っていた。部屋は古びており、どこか昭和の懐かしい雰囲気を持っている。
ふと見渡すと、部屋の隅に置かれたブラウン管のテレビからニュースが流れていた。
「本日、首相が…」
画面に映し出されているのは、昔の首相だ。
俺は時間が巻き戻されたことを確信した。
この場所は、再び平成11年に戻っている。
だが、これは単なる過去への訪問ではない。
俺には、ここでやるべきことがある。
突然、部屋の扉が開き、年老いた男性が入ってきた。
彼は驚いた様子で俺を見つめた後、深い声で問いかけてきた。
「君は…誰だ?どうしてここにいる?」
俺は自分の状況を説明する暇もなく、彼に導かれるままに座ることになった。
彼はやがて静かに話し始めた。
「君がここに来たということは、何か大切な使命があるのだろう。」
その言葉に、俺は自分が何をすべきか、少しずつ見えてきたような気がした。
この時代に戻ることで、何か重大な変化を起こす必要がある。
それが地球の未来にどう影響を与えるのかはまだわからないが、彼の話を聞くにつれ、俺にはこの時代でやるべきことがあると感じた。
その夜、俺は古びた家を出て、かつての自分が過ごした街を歩いていた。
昭和の日本は、どこか懐かしくもあり、重苦しい時代でもある。
戦後の混乱期、国全体が復興に向けて歩んでいる時代に戻ってきた。
「懐かしいなぁ〜、ん、でも、この街で、俺は何をすればいいんだろう....」
俺は自問自答しながら、
とりえず、かつての自分が通っていた学校へと足を運んだ。
そこには、幼い日の自分が友人たちと過ごした教室がそのままだ。
校庭では、元気に走り回る子供たちの姿が見えた。
「この中に、俺がいるはずだ。」
俺は、自分が再びこの時代に戻ってきた意味を考えながら、校庭を歩き始めた。
子供たちの中に、かつての自分がいる。
そして、その少年に何かを伝えなければならないという強い思いが胸に込み上げてきた。
ようやく、自分が求めていた姿を見つけた。
それは、まさに俺自身が幼少期に過ごした場所であり、少年の姿をした俺が、何かを真剣に考え込んでいる様子だった。
「おい、そこの少年!」
俺の呼びかけに、少年がゆっくりと振り向いた。
そこには、幼い頃の俺が立っていた。
無邪気な顔立ちでありながらも、その瞳にはどこか悩みを抱えているような色が見えた。
あの頃の俺が何を考えていたのか、今ではよく分かる。
人生の意味を探し始めた頃の、あの混乱と不安が表れているのだ。
「…誰?」
少年の俺が不思議そうに問いかける。
その声は、記憶の中の自分の声と全く同じで、心の奥にある感情を揺さぶった。
「俺は…未来から来た。君の…いや、君自身だ。」
その言葉に、少年は驚いた表情を浮かべたが、どこか納得しているようでもあった。
過去の自分は、時に不思議なことが起こると直感的に理解できる子供だった。
そして、その直感が今の俺に繋がっている。
「君がこれから経験することは、簡単なことばかりじゃない。でも、その中で何かを学び、成長することができるんだ。」
少年は俺の言葉をじっと聞いていた。
その純粋な瞳の中には、未来への期待と不安が交じり合っている。
あの頃の自分が、これから経験するであろう試練や喜び、悲しみを知る由もない。
「これからの人生で、たくさんの困難に直面するだろう。でも、君は決して一人じゃない。未来の俺たちは、今この瞬間の君に感謝している。君が頑張ったおかげで、俺はここにいるんだ。」
少年は小さく頷いた。
その仕草は、未来の俺に何かを伝えたいけれど、言葉が見つからないときの、あの特有の動きだ。
「君がこれから何をするかによって、未来は変わる。だから、自分を信じて、そして大切なものを守るんだ。」
その言葉を伝えることで、俺は過去の自分に何か重要なことを委ねたような気がした。
未来がどう変わるのかは分からないが、これが今の俺にできる最善の方法だと信じている。
と、突然、周囲の風景が揺れ始めた。
目の前の少年がぼやけ、次第に遠ざかっていく。
時間と空間が歪み、俺が過去に介入したことで、何かが変わり始めたのだろうか。
「ちょっとまってくれ.… まだやり残したことがあるのかもしれないのに....」
意識が遠のく中で、俺は再び自分が転生してきたケプラー62fの風景へと引き戻される感覚に襲われた。
時空の裂け目が再び開き、俺はその中に吸い込まれていった。
気がつくと、俺は再びケプラー62fの大地に立っていた。紫色の空、静かな湖、そして遠くに見える未知の生物たち。その風景は、俺がここに初めて転生した時と全く同じだった。
「ここに戻ってきたということは…未来はまだ変化していないということか」
俺は、自分が過去に介入したことで何かを変えたかどうかを確認するすべもない。
ただ、今この瞬間、俺が立っているこの世界がどうなっているのかを知るために、再び冒険を続けるしかなかった。
NOVA
「Aoi様、戻ってきましたね。」
「NOVA、俺が過去に戻ったことで、何かが変わったのか?」
NOVA
「Aoi様が過去に行ったことで、この世界に微かな変化が生じました。まだそれが何なのかははっきりしていないがませんが、Aoi様の行動が未来に何かしらの影響を与えたのは確かです。」
俺はその言葉に重みを感じた。
自分が何を変えたのか、それがどんな結果をもたらすのかはまだわからない。
しかし、確実に何かが動き始めている。
「これからどうすればいい?」
NOVA「Aoi様が次に進むべき道は、この惑星のさらに奥にあります。そこで待っているのは、Aoi様が探し求めていた答えかもしれない。」
俺はNOVAの言葉に従い、再びケプラー62fの奥地へと歩みを進めることにした。
過去に戻り、未来に変化を与えたことで、俺の旅は新たな局面を迎えた。
何が待ち受けているのかはわからないが、俺は自分を信じて、次の一歩を踏み出す準備ができていた。
未知の世界が広がる先に、俺が求めていた答えがあるかもしれない。
その答えを見つけるために、、、