第三話 あたしはヒロインなのに!(ヒロイン?ネルーダ視点)
ヒロイン?ネルーダ視点のお話です。
二話と三話、変更しました。
次は母親、公爵夫人視点のお話になります。
それではお楽しみください。
あたしの名はネルーダ。
赤ん坊の時に孤児院の前に捨てられた可哀そうな女の子。でも、大丈夫。あたしはこれから上り調子で未来を約束されたバラ色の人生が待っているの♡
何でそんなことわかるのかって?あたしって異世界転生者なのっ。前世のことはうろ覚えなんだけど、あたしはここがどこだか知ってる。きっとここは乙女ゲームか恋愛小説の世界よ!
そんでもってあたしってばヒロインよ、ヒロイン!だってあたしってばその辺の子よりすっごく可愛いんだもの!柔らかなピンク色の髪にルビーのような紅い目。肌はシミ一つないのよ♡
これってヒロインの特徴だと思わない?ただ手は荒れてんのよね~。孤児院じゃ子どもでも身の回りのことは自分でしなきゃいけないから。
畑仕事もやらせんのよ。こんな可愛くてか弱い子供に何させてんのよ、ったく。で・も・そんなときは、ちょっと疲れた振りすれば誰かが代わってくれるんだ。あ~、可愛いって正義♡
しっかし、いつまでここに居なくちゃいけないの?そろそろ貴族のおじさんとかが私を引き取りに来てもおかしくないと思うんだけど?
う~ん、こんなド田舎の孤児院じゃお貴族様なんて来ないんじゃない?もっと都会に行かないと。そんな時にと~ってもタイムリーに台風が来てあたしの孤児院の屋根吹っ飛ばしたの!もうびっくり!
あたしたちは近隣の孤児院にバラバラに預けられることになったの。なるほど、行った先で家族になるお貴族様に出会うってわけね。よお~し、行ってやろうじゃないのっ!
うわ~、やっぱり都会の孤児院は違うわね~。何気に街の男もイケメンが多いじゃない♡これは期待できるわ~♡
あたしは孤児院で耳寄りな情報をゲットしたの。この孤児院によく寄付してくれるお貴族様がいて何と公爵家なんですって。公爵家って貴族の中でも一番偉い家でしょ?その公爵家の夫人があたしに似ているってシスターたちが話しているの聞いちゃったの♡
噓でしょ~~~♡あたしってば公爵令嬢になれるの~~~♡もう最高なんだけどっ!早くママに会わなくっちゃ♡
う~ん?待てど暮らせどママ来ないじゃない?!一体どうなってんの?サボってんじゃないわよってブチブチ文句言ってたら、それがシスターたちの耳に入って怒られちゃった。
聞いた話じゃママは毎月ちゃんと来てるって。この孤児院はほぼ公爵家の寄付金で成り立っているから、適正な運営がされているかチェックしているんだって。建物が傷んでいたら修繕を、足りない物があったらお金や物品を寄付してくれているから感謝しろって言われたわ。
じゃあ、直接お礼言うって言ったら、礼儀のなっていない子はママの前には出せないって言うのよ。失礼ね、あたしはママの娘なのに!こうなったら直接会いに行ってやるっ!そして、いけ好かないシスターたちを首にしてやるんだからっ!
意気揚々と公爵家にやってきたけど、なにこれ?とんでもなく広い。門から邸が見えないんですけど?武装したいかつい男たちが門を守っていて、こっそりなんて忍び込めそうもない。あたし、こんなとてつもない金持ちの娘になれるのね。きゃあ~♡早くママに会わなくっちゃ♡
ダメもとで貴族御用達の店の前とかにも行ってみた。王都でも超有名なドレスショップ。あ~早くこんな店でドレスを買ってみたい。公爵令嬢なんだから店のドレスぜ~んぶお買い上げだって出来ちゃう♡憧れていたのよね~大人買いって♡
あたしってばやっぱりヒロインなのね。偶然にもその店にママがいるなんて。あたしと同じピンクの髪に紅い瞳、扇で顔半分隠していたって、そっくりだもん。間違いないわ♡
「ママ~!あたしよ~♡貴女の娘のネルーダよ~♡会いたかった~!ママぁ~!!」
一瞬、こっちを見たママ。目を大きく見開いてビックリしている。娘だって分かったよね?ママに向かって突進したら、岩みたいな大きな体の護衛に止められた。何よっ!どきなさいよっ!
ママぁ~、こんな感動の親子対面を邪魔するような奴はクビにするべきですよ~。きっとママも同じ考えのはず。なのに、なんで扇で顔を隠して一言も発せずに馬車に乗って行ってしまうの?
何で?何でよ?あたしも乗せてってよ~?二人の男に引きずられるように孤児院に戻されたあたしは孤児院のシスターに大目玉を食らってその日は反省部屋で謹慎させられた。公爵令嬢のあたしにこの仕打ち、あんたら憶えてなさいよ~!
ママと出会ってから2週間ほど経ってようやくあたしは公爵邸に呼ばれた。もうっ、遅いじゃない!
公爵邸の豪華なリビングには公爵様とママが揃っていた。へえ、公爵様ってイケオジじゃない♡ママってば面食いなんだからっ♡
娘はいないのね。悪役令嬢がどんな顔しているのか拝んでやろうと思ったのに。ママはシフォンのブラウスにマーメイドラインのスカート姿。ふ~ん、お貴族様も普段着はシンプルなんだ。でも、身に着けているネックレスや指輪すごいんですけどっ。
あんなでっかいエメラルドやダイヤ見たことない。いくらするんだろう?きっと凄く高いわよね?あれ、いつかあたしの物になるのかなぁ。でも、デザインがちょっと古臭いかも?あたしが着けるときはリメイクしようっと♡
「ママ♡会いたかった!」
駆け寄ろうとしたら院長先生に止められて向かいのソファーに座らされた。礼儀のなっていない子ですみませんって何度も頭を下げる院長先生。失礼ねっ!
「本当にカトゥイーヤにそっくりだな…。」
「外見だけは。では、始めてもらえますか?」
二人の後ろに控えていたフードを被った怪しげな人がテーブルの上に変な天秤みたいな道具を置いて、あたしとママの血を水の張った皿の上に一滴垂らした。ちょっとぉ!針で突くなんて痛いじゃないのっ!
血は混ざってなんかほんのり光って、フード被った人が「間違いありません」って言ったの。は~ん、これって親子判定の道具なのね。こんなにそっくりなんだから間違いないって思うのに、お貴族様って疑い深いのね。
ママはあたしを娘だと認めてくれた。やったぁ、これであたしは公爵令嬢よ♡ママが何かいろいろと言っていたような気がするけど、これからの勝ち組人生に思いを馳せて話半分にしか聞いていなかった…。
何よ、何なのよ。確かに公爵邸に住めるようになったっていうのに、この差は何?孤児院なんかとは雲泥の差だし、着ているものだって全然いい物だけど、カロリスよりも劣る物ばかりじゃない。
ちょっとやめてよね。あたしが可愛いからってこんな嫌がらせするなんて。おまけに学園にも通えないのよ。あぁ、なんか変な学校には行かされているけど。
なんであたしがお茶の淹れ方なんて学ばなきゃいけないの?あたしは淹れてもらう側でしょ?音を立てない?ちょっとぐらいいいじゃない。姿勢が悪い?ちゃんと立っているでしょ?
あぁ、もうっ、ここの制服使用人のみたいでやだぁ。なんで学園通えないのよ。あたしは聖女って言われるほどの治癒魔法使いよ。それぐらいの魔力じゃ無理ですって?きっと学園に通ってからすっごい力が目覚めるにちがいないわっ?!
そうよ、あたしが学園に行かないと聖女の力目覚めないじゃないの?マズいじゃん?でも、ママに言っても状況変わんないし。何よ?悪役令嬢に弱みでも握られてんの?いい大人がやられっぱなしなんてみっともな~い。
もう、こうなったらママを当てにしてらんない。あたしがしっかりしなきゃ。
あたし聞いたんだ。悪役令嬢の婚約者が王子様ってこと。学園に行かなくても公爵家で会えるかもしれない。
やっぱりあたしってばヒロインね♡王子様に会えちゃった♡偶然を装って近づいたらビックリしていたわ。あたしってばママにそっくりでしょ?
しおらしく、義理の妹であるカロリスにいじめられていると言えば、憤ってくれた。彼は婚約者のくせにツンと澄ましてスキンシップもさせてくれないカロリスに不満を持っていたんだって。
「こんな素敵な王子様を拒むだなんて。王子様に尽くすのが婚約者の務めなのに。あたしなら絶対に拒んだりしないのに。」
そう言ってちょっと多めにボディタッチすれば、たちまちご機嫌の王子様♡うふふ♡王子様も結局は男ってことね。ちょろいちょろい♡
王子様はあたしに愛称呼びも許してくれた。同じ公爵令嬢なら、愛想無しのカロリスよりあたしの方がずぅ~っといいって♡婚約者を変更したいって言ってくれた。やったぁ♡
カロリスも馬鹿よね~。いずれ結婚するんだったら一発ぐらいヤらせてやればよかったのに?初夜までお預けなんてするから寝取られんのよ。気位ばっかり高いお嬢様はこれだから嫌なのよね~。
国中の貴族が集まる夜会で断罪して大恥掻かせてやるって息巻いていたシェル様。きゃあ♡すっごく楽しみ~♡あたしもカロリスが赤っ恥掻くところ見た~い♡でも、ふたを開けてみればあたしが牢屋に入れられていた。えっ?何で?
そりゃとっさにシェル様の子を身ごもってるって噓ついたけど、ヤルことヤッたんだから出来ていてもおかしくないでしょ?妊娠してなかったって分かった途端に牢屋に入れるなんてヒドイじゃない!
それもこれもママの裏切りのせいだ!何でカロリスなんか庇うのよっ!おまけにあたしは貴族でも何でもない平民ですって?そんなわけないじゃない!あたしはママの娘なのにっ!
シェル様との結婚ができなくなったんなら、公爵家で何不自由なく贅沢三昧の生活させてもらわなきゃ割が合わないわっ!それがあたしに対する詫びってものでしょっ!あぁもうっ!さっさとこの牢屋から出しなさいよ~~~!
異世界転生者である自称ヒロインのネルーダ。
ここって本当にネルーダが思うゲームや小説の世界なんでしょうか?
お読みいただきありがとうございました。