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プロローグ ド定番の婚約破棄

コッチでは初投稿。

よろしくお願いいたします。


言い回しを若干修正しました。


誤字脱字報告、ありがとうございます。




「カロリス・フォンディーン!来ているのだろう!俺の前に出てこい!」


 今宵の夜会は、王城で年の一番最初に開かれる新年を祝う大夜会。国内の全ての貴族が集う中、無作法にも声が響く。居合わせた貴族たちが声の主に視線を向けると、そこに居たのはマーキュリー王国第一王子のシェール・ギル・マーキュリー殿下だった。


 王子に呼び出されたのはこの国の最高位の貴族、フォンディーン公爵家の長女カロリス嬢。人垣を縫ってカロリス嬢がシェール王子の前に現れる。あのような無礼な呼び出しにも、それを表情にだすことなく手本のような美しい礼をもって応えている。まさに淑女の(かがみ)のような女性だ。


「ふんっ、逃げずに俺の前に出てきたことだけは褒めてやる。皆の者、よく聞け!このマーキュリー王国第一王子のシェール・ギル・マーキュリーが宣言する!カロリス・フォンディーンとの婚約を破棄し、このネルーダ・フォンディーンと新たな婚約を結ぶ!」


 何と、突然の婚約破棄宣言?!

ホールに集まっていた貴族たちは皆一様に驚きを隠せない。それもそのはず。新年を祝う夜会は、年の初めの伝統行事だ。交流のない貴族にも会って会話するチャンスがあるかもしれないこの夜会は、最大の出会いの場であり社交の場だった。


 爵位に関係なく「この夜会だけは絶対に欠席するなよ。」と子どもに教育するのが貴族の常識。異世界日本風に言うと「盆暮れ正月帰ってこんでも祭りだけは絶対に帰れ」と家を出て県外に暮らす息子に檄を飛ばす、お祭り命の親父のようなものだ。


 この場でやらかしたり瑕疵が付けば、それは国中の貴族に知れ渡る。それなのに、よりにもよって国の次代を担うはずの王子が、王命で結ばれたはずの婚約を破棄すると宣言したのだ。


 まぁ、一度結ばれた婚約が何らかの事情で履行できなくなることはあるにはある。(よほどの事情があってのことだ)しかし、王命で結ばれた婚約はそう簡単に無かったことにはならないのが普通だった。


それは、お膳立てした王の顔に泥を塗る行為だからだ。もし、正当な理由があったとしても、こんな国中の貴族が集まる夜会で大声で宣言するものではない。百歩譲って宣言出来るとしたら、それはお膳立てした王のみといえる。(一般常識のある王様ならそんなこと言わない、絶対に。)


しかも、いうに事欠いて破棄。

解消でも白紙に戻すでもない破棄。


こんな前代未聞のやり方で婚約破棄を宣言した王子なんて歴史上誰一人としていない。えっ?バカなの?(うち)の王子ってこんなにバカだったの?ポーカーフェイスを保ちつつ、貴族たちは国の未来を憂いた。




「私たちの婚約は王命によって結ばれたものである為、私の一存ではどうにもなりません。ですが、第一王子殿下のお気持ちは承りましたので両親に伝えておきます。」


王子の暴挙にも臆することなく、冷静に言葉を選んで対処するカロリス嬢。王子より年下だというのに、この冷静さ。う~ん、まさに淑女の(かがみ)。大事なので二度言った。


「ふんっ、泣いて縋るかと思えば、相変わらず可愛げのない女だ。そういう澄ました態度が気に入らんのだ。愛らしいネルとは雲泥の差だ。」


そう言って横にいたネルーダの腰に手を添え、抱き寄せた。


「シェル様、あまりカロリスを責めないで。全てはシェルを愛してしまった私が悪いの。カロリス、ごめんなさい…。」


 そう言って王子にしな垂れかかりながら、弱々しい声で答えるネルーダ嬢。全身で庇護欲を搔き立てられる仕草で王子の関心を引いている。


 男から見れば愛らしいのかも知れないが、女から見ればあざとい以外のなにものでもない。それを証拠に瞳を潤ませてはいるが涙は一滴も流れてはいない。


「ネルは何も悪くない。俺に愛される努力をしないくせに、嫉妬だけは一人前のこの女が悪いんだ。」


 いくら仲睦まじい間柄であったとしても、こんな公式な場で愛称呼びするなんてバカな令嬢もいたもんだと思っていたら王子もだった。ある意味バカップルでお似合いだと周りの貴族たちはひっそりと思った。


「嫉妬?」


身に覚えのない言葉に反応するカロリス嬢。


「そうだっ!お前は俺の寵愛が得られないからとネルをいじめたであろう!ネルは義姉であるにも拘わらず、身の回りの物はお前よりランクの低い物ばかり。同じ公爵令嬢だというのに学園にも通わせない非情っぷり。毎日肩身の狭い思いをしていたとネルは嘆いていたんだぞっ!」


「私は嫉妬もいじめもした覚えはありません。」


「噓をつくなっ!粗末な衣装で嘆いているネルを俺は公爵邸で見たことがあるんだっ!お前のような嫉妬にまみれた女が俺の婚約者であるなど烏滸がましい。婚約破棄だけで済んだと思うなよっ!お前のような血も涙もない女は貴族令嬢でいる資格などないっ!今すぐ修道院に入るがいいっ!神の前で悔い改めて過ごすがいい!」


 言い切ってやったとドヤ顔の王子もそうだが、かわいそう…と呟きながらも王子には見えない角度でニヤけるネルーダ嬢。かなり性格悪いとみた。そのニヤケ顔、角度によっては大勢の貴族に丸見えなの分かってる?




「王子と言えど貴族家の内情に口を挟むなど、ましてや何の瑕疵もない貴族令嬢を修道院に送る権限があるとお思いなのですか?」


王子の言葉に反応して、凛とした美しい声が夜会会場に響き渡った…。





お読みいただきありがとうございました。

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[一言] なんか頭悪そうな地の文だけど作者?
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