現実
社会人未満の朝は早い。冬の5時台は夜と間違えるような暗さで、その寒さは暖房の効かない部屋に染み渡っている。
洗面台に立って顔を洗う。効果があると思われる洗顔料を使っても、目の下の隈を消すことはできなかった。
仕事で疲れていることもあるけれど、別の原因がある。ーー夢だ。
夢は前後不確実、無国警で意味が分からない繰り返し。ただのホラー映画の残虐なシーンだけ集めたような、ただただ痛い感覚だけが残るような物で、とても許容できたものではない。少し生活に余裕があるならば、精神科でも受診してカウンセリングを受けた方がいいのかもしれない。だけれどそんなのは考えるだけで胃が痛くなる。余裕がない。生活に余裕がないのだ。おそらく一歩、足を踏み外せば、そこからこの位置に戻ることも難しいだろう。ーーこの位置すら、世間一般からすれば取るに足らない、ただただ小銭稼ぎと揶揄されるような、そんな仔細な立場だというのに。
病弱というには大袈裟なこの体と、繊細というには被害妄想の混じったような心持ちで、私は社会の片隅で生きている。
眠い目を起こすのはカフェオレで、それが朝ごはんだ。時々裕福ぶってハムと卵をサンドしたパンを作ってみたりもする。レタスが安ければさらに安泰。そのまま2つ、つくれたならばお弁当にもなるだろう。
会社付き合いは最小限に、シフトはめいいっぱい。そうしたところで雀の涙のお金が降ってくるだけだけれど、それでもそれが少しの贅沢につながるのだからと、休日はごろごろできるのだからと落ち着かせる。
ーーだからあんな変な夢を見るんだろうなと思う。
だからって、どうしようもないから、今日も仕事に行く。