エピローグ
物凄く迷いましたが、テンポが悪くなるので先に本編完結させます。
その後、騒動後のラナベル達の日常を数話いれます。
よろしくお願いします。
カラーン、カラーンと軽快な鐘の音が辺りに響き渡る。
あの婚約破棄騒動から2年後の春、わたしは無事に学園を卒業し。
そして、今日ようやく殿下の花嫁としてこのバージンロードを歩いている。
本当に長い道のりだった。
何かが少しでも違っていたらわたしは今ここにいられなかった。
たくさんの人に支えてもらい、そして助けてもらった。
悪役令嬢だからと諦めかけたときもあった。
けれどどんな時でもわたしの心は一つだった。
初めて出会ったあの時からずっとウィルフレイ殿下だけを愛していた。
きっとこれから先もそれは変わらない。
だから・・・
「ラナベル コナー公爵令嬢。 あなたはウィルフレイ カルシオン殿下を生涯の伴侶とし、病めるときも健やかなるときも共に歩み、他のものに依らず、死が二人をわかつまで愛することを誓いますか?」
わたしの答なんて決まっている。
「はい、誓います」
迷うことなく、そう答えた後で。
ふと気がついた。
あら・・・?
殿下って、この問いにちゃんと答えられるのかしら?
・・・多分、無理よね。まだ身も心も結ばれていないし。
だからきっと殿下の答えは『ノー』だ。
ちゃんと事情もわかっているけど、やっぱりそれでも少しだけ心が寂しさを覚えた。
「・・・・・愛することを誓いますか?」
神父さまのその質問は、新郎である殿下にも勿論続けてされて・・・。
大丈夫、ちゃんと心の準備はできている。
何を言われても、そんなの殿下の本心じゃない。
だから寂しくなんかない。
ぐっと体に力を入れて衝撃に備える。
殿下は暫く、ためらうように口を噤んでいたけれど。
やがて覚悟を決めたように口を開いて・・・。
「・・・・・誰がこんなアバ・・・」
アバズレと結婚などするものか。
恐らく今までの殿下の言動から、そう続いたんであろう言葉が。
パチリと何かを弾くような音がしたと同時に、途切れた。
不自然に続く沈黙。
驚いたような表情をしたウィルフレイ殿下の視線がゆっくりと動いていく。
・・・・なに?
ウィルフレイ殿下の視線をたどっていけば、教会の一番端。
多くの参列者に紛れるようにして、血のように赤い目をした少女が立っているのに気がついた。
デネブさま・・・?
何度お誘いしても、式には参列しないとおっしゃっていたのに。
来てくださったのですか?
わたしたちの視線に気がついたのか、デネブさまが目を細めて微笑んだ。
今まで見たことがないような大人びた表情だった。
《少し早いが確かに『真実の愛』を見せてもらった。僕からの結婚祝いだ。ありがたく受けとるといい》
甲高い少女のような声が頭の中に響いて。
「・・・・勿論誓う。俺はラナベルを誰よりも愛している。必ず幸せにする。俺の一生をかけて」
「ウィルフレイ殿下・・・」
嘘、制約が解けた?
どうして?
魔女は魔法の取引については絶対に曲げない、って聞いたのに。
取引内容を途中で変えてしまうと、魔女本人がひどい制裁を受けるって。
そうデネブさま本人が言っていたのに。
「ここに新たな夫婦が誕生しました」
神父さまの言葉が続いている。
式を放り出すわけにはいかない。
でもデネブさまは? 無事でいるの?
ちらりと視線を向けてみたけれど、デネブさまの姿はどこにも確認できない。
その時。
カタリ、と誰かが席を立つ音が聞こえた。
ルーカス殿下だ。
わたしたちの一瞬の視線と、先ほどのウィルフレイ殿下の誓いの言葉で察してくれたのだろう。
丁寧にわたしたちに向けて一礼をしてくださった後、静かに教会を出て行くのが見えた。
動けないわたしたちに代わって、多分デネブさまを探しにいってくださったんだ。
・・・ううん、ちがうか。そうじゃない。
ルーカス殿下はわたしたちの代わりに行ってくださったんじゃない。
デネブさまが心配で、ご自身の意思で行かれたんだ。
デネブさまはルーカス殿下に任せておけば大丈夫だ。
だって多分ルーカス殿下は・・・。
「ラナ・・・」
物思いにふけっていると、こそっと耳元で話し掛けられた。
「二人のことが心配なのは分かるけど、俺のことも見てほしい」
ハチミツを煮詰めたような甘い甘い声とともにぐいっと腰を引き寄せられた。
「それでは誓いのキスを」
神父さまの言葉を受けて、ウィルフレイ殿下がわたしに向き直る。
そして真正面からわたしの顔をじっと見つめて。
「ラナベル。先ほどは神に誓ったけれど。今度は貴女に誓うよ。
ずっとずっと貴女だけを愛していた。そしてこれからもずっと貴女だけを愛することを、この命を懸けて誓うよ」
そうしてウィルフレイ殿下の端正な顔がゆっくりと近づいてきて。
わたしたちは初めての口づけを交わした。
悪役令嬢だと諦めかけたときもあった。
けれどそれでもどうしても諦めきれない想いがあって、何年も何年も努力しつづけた。
そして、わたしは今日大好きだったウィルフレイ殿下とようやく結ばれることができた。
愛しています、殿下。わたしも。貴方に負けないくらい。
そうやってちゃんと気持ちを伝えていくことがどれだけ大事なことかちゃんと知っているから。
だからこれからも言葉にして貴方に伝えつづけます。
大好きです、ウィルフレイ殿下。
こんなわたしを選んでくれてありがとうございます。
そして。
これからもどうか末永く、よろしくお願いします。




