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最低な婚約者2

死ぬ・・・?

誰が・・・。

ラナベルが・・・・・?

俺の大事なラナベルが・・・?

そんなのはダメだ。

それだけはどうしても認められない。

なにか・・・なにか彼女を救う手段があるはずだ。


その日から俺は全ての公務を放棄し、城の書庫に閉じこもった。

国中の情報が集まってくるこの書庫ならば。

あらゆる知識が溜め込まれている、歴史あるこの書庫ならば。

ラナベルを救う手段が見つかるはずだ。


三日三晩、不眠不休で本を読みあさる。

何度も父や母に諌められたが、俺は一切耳を貸さず、その方法を探しつづけた。

時間がない。

こうしている間にも、ラナベルは苦しんでいる。

俺が必ず助けるのだ。


なんでもいい。

誰でもいい。

どんな手段でもいいから、ラナベルを助けてくれ・・・。


俺は狂ったように本をめくり続け。

そして四日目の朝・・・。


書庫の一番端の棚。一番下の一番隅。

乱雑に押し込むようにおさめられた一冊の本を見つけた。


色あせたボロボロの背表紙には、題名らしきものは何も書かれておらず、作者名さえ見当たらない。

全ての本が王宮司書によって厳しく管理されているこの書庫において、これ程ボロボロで、そして内容不明な本はあまりにも違和感があった。

無駄にできる時間など一秒だってない。

なのになにが書いてあるのかもよくわからないその古びた本が、妙に気になった。

パラリと表紙をめくる。

紙の色は茶色く変色し、文字も所々かすれていたが、それでもなんとか読み取れた。

どうやら手記・・・いや、冒険談のようだ。

パラパラとページをめくり、素早く目を走らせていく。

三つ山を越えた先でドラゴンらしきものに遭遇した。

七色に光る奇跡の湖を見た。

西の森で魔女に願いを叶えてもらった。

空飛ぶ赤子をみた。

ケモノに変身した人間を見た、等々。


バカバカしい・・・。

これは冒険談というよりもただの空想物語だ。

ドラゴンなんてもう何百年も確認されていない。

七色に光る湖などこの世界のどこにも存在しないし、赤子も空を飛ばない。人もケモノにはならない。

書かれている内容は全て根拠も何もない夢のような話ばかりで、胡散臭いことこの上ない。


・・・・・・けれど・・・・。


『西の森』。

このフレーズだけどうしても気になった。


確かにこの国の西方にはどの国にも属さない、深い森がある。

そしてその森には千年を生きる魔女が住んでいる、とも。


『魔女に願いを叶えてもらった』?


ドクっと心臓がひときわ高く脈打った。


確かにこの世界には絶対的に数が少ないが、魔法と呼ばれる不思議な力を持つものがいる。

そしてその中には『聖女』と呼ばれる特別な乙女もいるのだとか。


では望みを叶えてくれる『魔女』がいてもおかしくない。


この作者は、白銀金貨千枚と引き換えに不老にしてもらったと書いてある。

それが本当なら今もこの世界のどこかに年を取らずに生きつづけているのかもしれない。


けれどそんな人間の話など聞いたことがない。

そもそも白銀金貨千枚など我が国の国家予算を優に超えている。

そんな大金を個々人が用意できるわけがない。


与太話だ。


そう思う。

けれどもし本当だったら・・・?

西の森には魔女がいて、金貨と引き換えに望みを叶えてくれる。

もしそれが本当なら・・・。


ラナベルも救える・・・・・?


根拠なんて何もない。

でも何もしなければラナベルはもう助からない。

少しでも可能性があるのならそれに賭けてみるべきだ。


例え誰もに恐れられる『魔女』が相手でもいい。

どんな方法でも・・・。

ラナベルさえ救えるなら。

ラナベルさえ生きて、また笑っていてくれるならなにを引き換えにしても惜しくはない・・・。


そうして俺は、弟のルーカスが止めるのも聞かずに西の森へ向かった。


そして・・・。


あの本にあった通り、なんでも望みを叶えてくれる風変わりな『魔女』に出会ったのだ。






なあ、ラナベル・・・。

俺の大事なラナ・・・・。

思えば俺は一度として貴方に『好きだ』と伝えられなかった。

こんなことなら『俺の愛が重すぎて引かれるかも』とか『シチューションにもこだわりたい』とか。

そんな馬鹿なことを気にしたりせず、何度でも自分の気持ちを伝えておけばよかった。


・・・でもまさか思いもしなかったんだ。


この先で出会った魔女に、願いを叶えてもらう対価として。

貴方への想いを口にすることも、表情に出すことさえ出来なくなるなんて・・・。

この時の俺は思いもしなかったんだ・・・・。







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