村山萌々香
ガチャ
「帰ってきたんやろ?何を言うのかな?な?口ないんか!!はぁ、ほんまにぃ。…あんたはほんま愛想ないな!気にくわん!帰ってきたんなら ただいまぐらい言いなさいよ!」
「……」
「明日もパン買いや!お金はお父さんにもらい!ほんまにツンツンして!聞いてる?な?あんた聞いてるか?」
「……」
ガチャ
私は部屋にこもり、父の帰りを待っていた。
学校では本を読んで時間を潰している。
最近パパとの会話以外いつ笑ったかな……
「ただいまっ!萌々香は帰ってるかな?」
「お帰りなさい。萌々香萌々香って笑 あなた私より萌々香ちゃんを笑、ちゃんと帰ってますよ萌々香ちゃんは」
「すまないな笑」
「ほんとしっかりしてるわねぇ関心しちゃう。見た目派手だけど良い子よ〜、ほんとにお弁当いらないのかしら」
「そう言ってるみたいだね、パンが好きなんだって?」
「そぅ、いるなら作るのに…萌々香ちゃんたら遠慮してるのかしら」
「そうかもしれないね笑」
トントン
「帰ったよ、入るよ」
「パパお帰りっ!笑」
「萌々香ただいまっ。学校はどうだい?」
「うん、大丈夫。適当にやってるから笑」
「そっか、パパ安心だー。これ明日の昼食代。本当にお弁当いらないのかな?お母さんにお願いすればいいじゃないか。」
「いいよ、パン好きだし、お弁当なんていらないよ笑」
「すまないね」
「うん、大丈夫だよ。あ、今日1年間固定のね席替えあったんだ!」
「そうか!ドキドキしただろ!ずっと替われないんだもんなあ笑。夕食食べながら続き話そうか」
「あはは、また今度話すよ」
「さぁ晩ごはんにしよう、おいで」
「うん」
私は 村山萌々香
小学4年の時に母が男の人と出て行った。
中1の冬にパパは再婚をしたが、今のお母さんは
私を嫌っている。
のろまだ・アホだ・などパパの知らない所で言われてきた。
中学になってからはパパに気づかれないよう二人の時は母とは話をしていない。
パパは大好きだ。
母を好きになろうと努力した時はあったが駄目だった。
グレたというか、どうでもいいのか。
私はアイドルグループ [フセンハリーズ]の
ミックンが大好き。
後は毎日学校で読んでる本に今ハマっているくらいかな。
髪を染め、毎朝1つに束ね、やる気のない学校生活を送っている。
「はぁ…売店のパン飽きたな」
フセンハリーズの曲を聞きながら
鏡の前で服を脱ぎ、髪を染めた。
ハリーズの新曲
【ノリメンの粘着は甘い】を聴いていた
暫くしてタオルを巻き、風呂へ
チャポン
-小さい頃-
「萌々香おいでっ」
「キャッキャッ ママ〜パパ〜」
「萌々香すごいね〜明日一等賞だね」
「うん、パパ、ママ、頑張る」
楽しい毎日を過ごしていた幼少期。
パパはカッコいい。ママは美人。
小学2年の秋頃からママの帰りが遅くなる日が増えていった。
夕食もパパが買ってくる物が多くなった。
4年生の夏休み前、珍しく豪華な夕食が並んでいた。
ニコニコしたママの顔を見て嬉しかった。
今思えば その時のパパの顔は覚えていない。
3人で食卓を囲み、お腹いっぱい食べた。
ママとのいい思い出はそれが最後だ。
暫くしてママが
「ママね、お家出ていくの…新しいパパの所に行くから萌々香、お片付けして準備しておくのよ」
「……いかない」
「萌々香、わがまま言わないの」
「新しいパパなんてヤダ!いかない」
「萌々香っ」
「いや!パパといる。いかない絶対行かない」
「………」
ママは2日後に家からいなくなった。
夏休みは おばあちゃんの家で過ごし、二学期からはパパと過ごした。
ちょくちょく おばあちゃんが夕食を作ってくれていた。
パパと生活してる私は嫌な気はしなかった。
そう…あの人がくるまでは。
中学生になり、それなりに部活も頑張っていた。
日が暮れるのが早くなった頃
知らない女性が家に来ていた。
「萌々香お帰りっ」
「パパただいまっ!あっ…はじめまして」
「こんばんは、萌々香ちゃんね?私、南久美です。よろしくね」
「あ、は、はい」
軽く挨拶をして部屋に入った。
嬉しいような、寂しいような。
なんとなくだけと、パパの彼女なんだなとわかった。
その後も南さんは家に来るようになった。
笑ったり、女同士の会話で盛り上がったり、パパの癖を話したり。
そして年が明けて、南さんは 村山になった。
私に新しいお母さんができた。
楽しくて楽しくて…
人生が変わった気がした。
でも少し気になっていた。
毎日
「萌々香ちゃん勉強は?宿題したの?」
「うん、今からするよ」
「そぅ、いい高校いかないとね笑」
ちょっと教育ママなのかな…なんて。
三学期、三者懇談で成績を渡された時
「ありがとうございました」「ありがとうございました」
家に着いてママは
「何この成績!勉強したの?ねぇ?」
「ごめんなさい…」
「はぁ全く…遊んでばっかりじゃない」
「そんなことないよ笑」
「…何笑ってるの?バカじゃないの」
「え?ママ…」
「あ〜も〜最悪!部活も辞めなさい!」
「……ママ」
「部屋行って勉強しなさい!はやくっ」
「は、はい…」
ギーバタン
怖かった。ママは怒っていた。
どうしよう…普通より出来てる方なのに。
ずっと部屋にこもった。
夜になり
トントン
「萌々香ただいま」
「パパ、お帰り」
「ん?どした?何かあったのか?」
「え?どして?」
「萌々香暗くないか?」
「色々あってさ、部活辞めようと思うんだ」
「え?あれだけ楽しく行ってたじゃないか」
「うん、そうなんだけどね、もう決めたの」
「そっか…決めたなら仕方ないね、さ、ご飯だよ、行こう」
ドキドキしながらテーブルについた。
「いただきます」「いただきます」
「ねぇあなた、今日の三者懇談ね先生が萌々香さんは良い子ですよ〜って。成績も中々いいし、この調子で頑張って下さいだって。もー私嬉しくって」
「お〜!萌々香頑張ってるんだね、1日1日を大事にするんだよ、沢山思い出つくりなよ」
「う、うん」
(なんだ…喜んでくれてたんだ)
そう思ったのはその日だけ。
あの人はパパがいないと私をけなしてくる。
いつの頃からか、私はパパの前では仲良くし、二人になったら無視をする生活を覚えた。
ダラダラと毎日を過ごし、毎回生活指導で呼び出され
たが、そりなりに勉強ができたので普通に優信に入った。
ガラガラ
染まった髪を乾かし、部屋に。
机に座りまた本を読んだ。
-翌日-
「おはよ〜」「東出さんおっはー」「コニタンおはよ」
「柳君おはよ」「野間さんおはよ」
いつも通りの1年5組。
「柳君おはよ、大丈夫?」
「うん、昨日はごめんね、なんとか頑張るよ」
「そうよ、大丈夫よ」
ショートカットの中谷さんは僕に微笑んだ。
ツカツカ
「…あ…お、おはよぅ」
「………」
ツンとした金髪は黙って隣に座った。
キーンコーンカーンコン
ガラガラ
「おはようさん、じゃ18ページ」
社会が始まった。
「東出!わかるか?」
「織田…織田のぶお」
「ん?」
またアホ仲間ゲット。
「柳!答えろ」
「はい、織田無道です」
ザワザワザワザワザワザワ
「ほんまにお前等は!浜田」
「はい!織田和正です」
僕は安心した。ほっとしながら横の席をみた。
股の間でまた本を読んでいた。
少しだけニヤけてるのか…?
セクシーな太ももの間にいる本は幸せだろうな。
「チッ」
こわっ
キーンコーンカーンコーン
社会が終わり、中谷さんが振り向いた。
「柳君ってほんとバカなんだね笑」
「あはは、全然わかんないや」
「豊臣秀吉だよ」
「え〜そうなんだ」
そんな会話をしていると
小西さんが野間さんに
「野間ちゃん答え何〜?」
「井伊直弼だよ」
「へーありがとう」
てな会話をしていた。
中谷さんはしらっと前をむいた。
ガガガッ
村山さんが立ち上がり僕を見た。
「ん」
「え?」
「だから…」
僕に読んでいた本を差し出している
「お前チラチラ見るから読みたいんだろ?」
「え?あ、え?」
これは…借りるしかないな
「うん、ありがとう。貸してね」
村山さんは本を僕に渡し教室を出て行った。
「あはは柳君、お前って」
中谷さんがちゃかしてきる
「ビックリしたーいきなりなんだもん!」
「村山さん何の小説読んでるの?ね、柳君早く教えてよ」
「うん待ってよ、せかさないでよ中谷さん」
僕はドキドキしながら本を開いた。
ブックカバーがされてある本をゆっくりと…
「え?……」
「ねぇ何?何?はやく」
「こ、これ…」
「ウソ?マジ笑」
村山さんは
【MAX恋愛 花ヶ崎のお相手だーれ 1】
ってタイトルの少女漫画を読んでいた。
「マジか笑」
「あ、これ知ってる。密かに人気だよ笑」
中谷さんと目を合わせ笑った。
少しだけ読んでみた。
あかん、めちゃくちゃ面白いじゃないか。
教室に戻ってきた村山さんはカバンからまた本を出した。
もう気になるよ。
「ねぇ、それもしかして2巻?」
「あ?5巻だよ チッ」
前の中谷さんが笑っていた。
「いや、これありがとう。読むね」
「……あぁ」
隣の村山さんは
少女漫画が好きなんだなー
少し近づけたかな。