優信高校
ザワザワザワザワ
ガラガラ
「はいはい静かにしなさいよ」
4月8日 優信高校入学式
僕は1年5組だった。
斜め前の女性がチョクチョク見てくる。
廊下に並び、入学式の為体育館に向かった。
「あっ!え?マジか!!や、野球やるよね?」
「あ、う、うん」
すれ違ったのは響中学校のエースピッチャーだった。
体育館で 青山校長先生の話を聞き、クラス順に名前が呼ばれた。
1年2組 青木 ミカ(アオキミカ) 「はい」
江村 香織
平田 洋子
1年3組 浅井 果帆
1年4組 新田 昴
1年5組 浜田 明
柳 拓「青木さん同じなんだ」
小西 さやか(コニシサヤカ)
中谷 萌々愛
野間 千鶴
東出 ゆかり(ヒガシデユカリ)
村山 萌々香
1年8組 小南 陽太「はい・・・新田君か 笑」
原 忠久
以上460名の入学を認めます。
「中谷さんだ」
「小南・・・」
入学式が終わり、教室に戻った・・・が・・・合格発表の日、制服合わせの日から思っていたが
男子少なっ!!
ザワザワザワザワ
ガラガラ
「静かにしなさいよ」
ま、まさかな・・・
「このクラスの担任の 西川美枝です。教科は数学です。よろしくね」
(はぁ・・・担任まで女性かよ)
数えたらこのクラス男子12人。女子34人・・・
(あはは・・・やっちまたな)
「では今日はこれで終わりです」
ザワザワ
「お前何中よ?」「帰ろ帰ろ」「よかった~。一緒のクラスやん」
同じ中学なんだろうか・・・みんな話相手いるんだな
「あ!思い出した。柳君、柳拓君いる?」
西川先生が慌てて声をあげた。
「は、はい僕です」
みんなが 柳って言うんだ的に僕を見ていた。
「陸上部の先生が呼んでるから今すぐ職員室に行きなさい。早く」
(自分が忘れておいてよく言うよ)
「はい」
まただ・・・前の女性が見てる
「ん?」
僕はその人に少し目で語りかけた。
彼女は顔を紅くして前を向いた。
職員室に着き、優しそうな先生に陸上部顧問はどこかと聞いた。
「あ、あの・・・」
「こんにちは、1年生?保健室の小島愛です」
「あ、1年5組の柳拓です。あの・・陸上部の先生に呼ばれまして・・・」
「あらぁそれなら あそこ!ほらジャージの」
「ありがとうございます、失礼します」
「うん、また保健室にきなよー まだまだ子供ね 笑」
ツカツカ
「1年5組の柳拓です」
「おぉお前か」
「え?」
「誠中学の。高城先生に聞いてるやんな?」
「はい?」
「体操服は持ってるんか」
「はい、あります」
「そか、ほな明日から練習こい」
「はい?」
「なんや?何回も言わすな。明日から来い!わかったらもういいぞ」
「・・・えっと」
「お前は陸上部なんや!何回も言わすな!」
(こっわ・・・)
「は・はい・・・失礼します」
(聞いてない聞いてない聞いてない・・・なんで・・・え?なんで)
僕は職員室を去り、わけのわからないまま家に帰った。
ガラガラ
「ただいま」
「おかえりっ。どやった?」
「あ、あのさ・・・女子ばっかり、つか高城先生か井上先生から何か聞いてる?」
「え?何を?」
「な、なんかな・・・僕な、陸上部なんやて」
「あはははは、大丈夫大丈夫あんたベーラン速いやん」
「そんな問題と違うし、しかも明日からって」
「は?明日?えーもーいきなり弁当やんか!!うわぁ邪魔くさアホやなあんた」
「そこなんお母さん、突っ込みどころ満載やろ」
「お父さんいつもゆーてはるやろ、決めたらケツわるなよって」
「決めてへん決めてへん、勝手に陸上部」
「・・・はぁ明日から弁当だなんて・・・」
「ちょっとお母さん・・・あ、響のピッチャーいた」
「あ~あ残念やな野球部。はい決まり!決定!あんたは陸上部!決まりはい終わり。お母さんは忙しいから」
「ちょっとお母さん・・・野球部に失礼やん」
僕は部屋に入り、パンパンとグローブをたたき、匂いを嗅いだ
「はぁたまりませんなぁ」
顔にグラブをはめグローブの指の隙間から壁を見た。
大好きなアイドル あんず が僕をみている。
あんずが囁いていた。
(大丈夫。体育凄いんだから陸上なんてへの河童よ)と
「よーしやってやる!!見とけ あんず!僕は必ず・・・なんだ?わからんけど頑張る」
部屋のポスターの あんず はどの位置に立っても僕を見る。
「ん・・・このポスター最高」
4月9日 陸上部部室前
体操服の僕は部室の前にいた。
「お前陸上部け?」
「は、はい宜しくお願いします」
「何組?」
「1年5組です」
「俺4組」
「・・・は?ドドド同級生?」
「俺 新田」
「や、柳です」
(うわ・・・同級生て・・・ヤンキーやん・・・しかも体操服違うしププッ ジャージインてウケる)
「ハァハァハァハァすみません」
「てめぇ小南やんけ」
「あ・・・新田君・・・て・・君は初めましてだね。小南陽太です。8組の」
「柳拓です。5組です」
「小南無視すんなよコラ」
「新田君まぁ落ち着いて、ね、柳君もいることだし」
ガチャ
「うるさいぞお前ら」
「す、すみません」
部室からシュッとした人がでてきた
「キャプテンの北川や宜しく」
そしてもう一人、筋肉の塊のようなゴリラ?がでてきた
「上条や宜しくメカドック」
(うわぁこの人色々とやばそうやな)
「じゃ行くぞ、ついてこい」 「は」「はい」「チース」
「集合~~~~~~~~~~っ」
ダダダダダダダダ
北川さんの声で一斉に集まった陸上部。笑った・・・だって・・・みんな・・・インなんだもん
「顧問の 小野寺や!まずは入学おめでとう。ここの1年は推薦組や!知った顔多いやろ
(は?みんな・・すいせん?・・・このヤンキーもか)
これからもっと成長していこう。それから2・3年余裕かますなよ。じゃ1年自己紹介しろ」
「中町中学校から来ました中谷萌々愛です。よろしくお願いします」
「川村中学から来ました小南陽太です」
ザワザワザワザワ
小南君の時ざわついた。
「大路中の新田っす」
「誠中学の青木ミカです」
ザワザワザワザワザワザワザワザワ
(あ・・・青木さん)
「誠中学の柳拓です」
(え?なんで柳君いんのよ)
川口・沼沢・長田と続々と自己紹介が行われた。
「よし、1年は今日は解散!昼飯は自由にしろ。」
「ありがとうございました」
(男3人か・・・弁当・・・食べないと)
「ちょっと柳君」
「あ、青木さん」
「あ、青木さんじゃないわよ!大丈夫?」
「何が?」
「何がってどうして陸上部?野球は?」
「ん・・・全くわからんが、あんずが言ってたんだよ」
「・・・そうとうのバカなんだね。ま、頑張ってね、みんな凄いから」
「うん、ありがとう」
僕は教室に戻り独り弁当を食べた。
「はぁ・・・」
ガラガラ
「ただいま」
「おかえりどやった?」
「部活も女子だらけ・・・男子3人やわ。しかも推薦ばっか」
「今からウジウジしてどないすんのよ。運動神経みせてこい」
「そうなんやけど・・・青木さんに大丈夫って聞かれたわ」
「青木さんてあの青木さん?2丁目の?お父さんインターハイ選手の娘さんか?」
「うん」
「あーあーそれはご愁傷様 笑。あんた あはははははは頑張れーーー」
「お母さん他人事やん」
「そんなんお母さんが入るんちがうもん」
「ま・そうなんやけど。いいさ運動神経みせつけるよ」
まだ僕は 何も知らなかった。
プルルルルプルルルル
「あ、高田、うん、そうビックリだよ。うん同じクラスだった」
「俺も見たぞ入学式の日。持ってるよな野間」
「うんうん、目あったんだーーもうカッコいいんだよー」
「はいはい幸せでいいねお前は。野球部来たら俺の方が上だって見せつけてやる」
「あははナイナイ、あんたは無理 笑。打ってよし、守ってよし、走ってよしのリードオフマン柳」
「だから俺だって・・・」
「だって彼中学6割打ってるもん。だけどね、担任の先生が柳君に陸上部の先生の所に行けって」
「陸上?なんで」
「そんなの知らない。用事でもあったんじゃない」
「だろうな。じゃまたな・・・そのよ・・・野球部のマネージャーしないか?」
「柳君いるならもちろん」
「おーサンキューサンキュー!またな」
ガチャ
「柳柳柳ばっかだな野間は」
ガラガラ
「拓・お母さんただいま」
「お父さんお帰り」 「おかえりなさい」
その日の夕食時、お母さんはお父さんに僕の今日の出来事を代弁していた。
「あはは拓~決めたら最後まで辞めるなよ」
「うん」
部屋に入ると あんず がまた見ていた。
「やってやるさ」