A{0,7} バイパスの形成
――TIMES_A{0,7}――
2024年9月21日(土)14:21
「ウサ先輩。大丈夫ですの? 気を失ってまして? それとも、眠ってただけですの? どちらにせよ突然だったのでビックリしましたですの」
「だいじょうぶよ。それにしても、相変わらずツタエの手はいいわね。空を飛んでいた疲れも無くなるわね」
「えっ、? 空? 夢でも見てまして? それとも何かスキルをおつかいになったのですの?? 気絶してたように見えましたですの。あっ、飛行機に捕まって飛んでましたの?」
「えっ、なんで??」
「えっ、本当にそうなんですの? 伝わっちゃっていますの……」
ツタエは申し訳なさそうな顔をして私の額から手を離してしまう。
「あっ、ダメ、手は離さないで。額に当てたままにして」
「でっ、でも……」
手を離したツタエに素早く伝えるが、すぐには額に手を当てず、様子を見ている。
「お願い、額に手を当てて……」
私は懇願をする。
そうすると、ツタエは渋々と、私の額に手を当て始める。
「ありがとう」
「でも、ウサ先輩。私の能力でウサ先輩の思ってることが伝わってしまうのですの」
伝えは心底心苦しそうに言う。
「えっと、私は気にしてないから大丈夫よ。ツタエの能力で、テレパス系の能力でしたっけ。相手の考えてることが伝わってしまうのよね?」
「そうなのですけど。先輩にそこまでしっかりと話しましたでしたっけ? もしかして、こっちからも伝わっていますの……。。 そんな……。まだ、全然時間を費やしていないのに、双方向にバイパスが……」
そう言いながらツタエは再び手を離そうとするが、私はその気配を察知してツタエの手を自分の額に押し付けるように、ツタエの手の上から被せる。
「お願い。手は当てといて。私は気にしてないから」
観念したかのようにツタエはそのままの体勢を維持する。
気まずそうにするツタエを見て、もっと詳しく、仕組みや、どういうことなのか、何を気にしているのか。
そういうことを聞き出そうと思った。
「ねぇ、ツタエ。もう少し詳しく聞かせてもらっていいかしら。ツタエの能力のこと」
「はいですの……。さっき、ウサ先輩に指摘されました通りなのですけど、さらに詳しく申しますと、私の能力はテレパス系なのですの。
ですので、相手の思考が読めたり、相手にこちらの記憶が伝わったりするのです。
制御はできているはずなのですが、強くバイパスが繋がった相手とは、その記憶の行き来が自動で行われてしまうのですの」
「バイパス?」
私は耳慣れない単語に反応してしまう
「えっと、私が勝手にそう命名してるだけなのですが、相手との記憶の回路と繋がってしまうこと、その道をバイパスと呼んでますの」
「そのバイパスが繋がると、自動で相手との記憶の行き来が行われるわけなのね。
その、バイパスを繋げるためには何か条件があるの?
どんな時、どんな相手と繋がるの?」
「えっと主観的な話なのですが、ルビ私が心を許した人間と一緒にいて、なおかつ長時間触れ合った人と、バイパスが繋がるのですの。
まるで神経同士が繋がるかのように、繋がっていきますですの。
例えば、今はいなくなってしまった私のお母様とか、チキちゃんとか。
あと、最近もう一人いたことが分かって、その人とは小さい頃ずっと一緒に遊んでいて、その後、最近になってまた会いまして……」
何故かツタエがその人物との話を言い淀む。
何か有ったのだろうか。
「その人のことはさておき、記憶がお互いに干渉すると言いますか、渡し合う状態となりますと、意識の融合みたいな形になりますの。
セツコさんに言わせれば分散型コンピュータみたいなものだねともおっしゃってたのですの。
意識の融合を個別視点から見ますと、意識や意志の書き換えとも捉えられますの。
下手したら強制的な価値観の変化なども起こせてしまう、と言いますか、強制的な洗脳もできるかもしれませんの」
「なるほど……。危険なものなのね。でも発動条件が厳しいのでしょう?」
「そうなのですの。
発動条件が厳しすぎて、ほぼ意味の無いないスキルと言いますかアビリティだと思っておりましたの」
「アビリティなの? というか、アビリティの説明聞いてるんだ。
あの猫みたいなのから」
「はいですの。一応聞いておりますですの。
あの猫っぽいのは、質問をすれば答えてくれますの。
質問内容を考えるのにセツコさんを頼ったりもしますけど」
「なるほど。どこも似たような感じなのねぇ。
というか、こういう話について、あなた達とじっくりしたこと無かったのだけど、あなたが私に伝えて大丈夫なことなのかしら?」
「えっ、何か問題でもありますの?」
「そういう懸念も無いのか。羨ましいな。私が疑いすぎなのかな。
確かに、質問しないと答えは帰って来ないけど、サムは仕事には真摯だし、疑いすぎもダメだよね。
なんで、サポートキャラをこんなに疑うようになってしまったのかしら。
配信動画を見て、考え方が固くなってしまつたかしらね」
「配信動画? 何を見ましたの? あっ、当てて見せましょうですの??」
ツタエは話が好きな方へ行ったからか、私の考えを見抜くことに躊躇せずにそんなことを言った。
私も、私の心をツタエに読まれることを気にしてもしょうがないと思っている、というかそもそも気にしてないので、ツタエに当ててもらう。
「ええ、当ててみて、なにを見たのか。何を見てサポートキャラに対する考え方が固くなってしまったのか」
「えっ〜とですのねぇ。マ○○○○○だと思うのですの、いや、ま○い○かもしれませんですの。や、いやいや、魔○○○サ○ト、あ、いえ、酷い話ですけど、あれはサポートキャラ出てきませんの。
うーん何が正解なのですの?」
「今言ったものの中に入っているわよ」
「当たってたのですの」
「というか、私は一つしか分からなかったわよ。今度までに他2つがどんなのか調べておくわ。
最近というか、ずっーと王道ものばかり見てるから、他のを見る暇無くて」
「王道もの? 魔法少女の? 一作品で50話以上あるやつですの?」
「そう、それ。そればかり見てるのよ」
「そうなんですの。ウサ先輩もけっこうアニメ見るのですのね」
「いやいや、有名なのしか見てないし、まだまだ半分も見てないと思うから、王道物を入れても魔法少女もの全体では1/10も見てないんじゃ無いかしら。
というかツタエが詳しすぎるのよ」
「あの、今更なのですけど、私のことツタエと呼び捨てなのですのね」
「あっ、まずかったかしら?」
「いえいえ問題ないですの。というか、前もこのような会話しましでしたかしら?」
「えっ、あっ、いや、してないと思うけど……。したことになるのかな?」
私もよく分からなくなってきた。
私が経験したことを、もしもツタエがテレパスの能力で読み取った場合、それは経験したことになるってことなのかどうか。
「そうですの?」
「まぉ、よく分からないから、してないってことで」
「はいですの」
今までにくらべて、さらに話が盛り上がるまでが早いと感じる。
しばらくして、もう大丈夫だと額から手を離すようにツタエに伝える。
「お腹空いたわね」
「ケーキを食べましょうですの〜。 あ、いえウサ先輩は、お弁当のようなものの方がいいのですの?」
「えっ、お弁当なんてあったっけ?」
なんの話だ?
私はそんなにお腹空いてそうに見えたのか?
「なんか今のウサ先輩は、お弁当が食べたいような気がしてしまったもので」
「いや、そんなことないけど、今の、お腹の空き方から想像すると、さっき食べたばかりのような気もするし」
タイムリープでのループの開始前に、いつ、何を食べたんだろう??
忘れてる……。
「そうですので? その感覚を感じ取ってしまったかもしれないのですわ」
私が思考を読まれていることに嫌な素振りを一切してないことで、ツタエもなんか吹っ切れたようだ。
基本的にツタエは能天気だから、嫌なことを引きずるタイプではない。
能天気なのは羨ましいな。
私も後先考えず、能天気に生きて行きたいものだ。
そもそも思考が感じ取れるってことは、快不快を明確に感じ取れるということなのだろう。
私が不快な感情を出してないことをしっかりと読み取っているのだろう。
その後もすごく話が盛り上がり、話し込んだ。
最近、王道物の魔法少女のアニメも8期、9期と、見たことも伝え、盛り上がった。
ツタエは16時35分に帰っていった。
予定があるとかで走って帰っていった。
そういえば予定があるんだったな。
悪いことをしたなぁ。
できることなら農業機で送っていってあげたいなぁ。




