A{0,1} サムからの最初の説明
——TIMES_A{0,0}——
2022年2月14日(月)16:31
——ウサ中学2年生、14歳
その妖精だと言い張るサムと名乗るワシはそう言うと、考えるような、頭の中にあることを探すような素振りをする。
そして説明を続ける。
「まず、変身を解いても消えない、その片眼鏡と、インナーイヤホンについてだ。
それは、怪物を探すことや、危険を知らせてくれる、魔法少女のアクセサリーだ。
学校にいるときも使えると思うよ。
ちなみに、形はそのタイプでいいかな? 違うタイプにも変えられるが」
そう言いながらお供キャラであるサムは、私が装備している片眼鏡とインナーイヤホンを変化させる。
片耳のヘッドホンに、目の部分を覆う、片側だけのVRゴーグルのようなものに変化する。
とても目立ちそうな形ね……。
男の子とかは好きそうな形だけど、授業中に使ってたら、さすがに注意されそうな形だと思う。
「うーん、授業中とかにも使うだろうから、片眼鏡と、インナーイヤホンのままがいい」
その点、片眼鏡と、インナーイヤホンなら、片方だけ目が見えにくいや、聞こえずらいから補聴の為だとか、いろいろ理由をつけて常に付けてても大丈夫そうだと思った。
「片眼鏡もコンタクトレンズにすることもできるけど?」
「コンタクトは使ったことないから片眼鏡でいい」
私の返答を聞き、サムは片眼鏡とインナーイヤホンに形を戻した。
「まぁ、変身後はどっちみちコンタクト型になるよ。
変身前は、モノクル型の形状だね。後で変更もできるよ。
では続いて、他の機能のこともいろいろと、ざっくりとだけど説明するよ。
ワシらがジャスティスの為にもこの言伝は必要なんだ。
まずその片眼鏡を覗き込むと、画面上にARで相手のステータスが表示される。
なんでも、現状を、ステータスの表示方式として、見ることができることが、今の流行と聞いたから、上は、それに合わせたようだ。
魔法少女というのは、流行に合わせることをよくするようだ。
例えば、ガラケーを少女たちが持ちたいと思った時期や、持っててもおかしくないころは、ガラケーの形に近い状態の物が採用されたとのこと。
その後、スマートフォンを持っている状態が主流になると、ガラケーの形の変身アイテムは無くなったとのこと。
これは、その時代に少女たちが持っていてさほど目立たない形状のものが選ばれるとの理由らしい」
「はあ、うん……」
確かに、魔法少女の変身アイテムについて、そのような情報を聞いたことあるような、無いような……。
「まぁ、他者のことは置いておいて、その片眼鏡説明に戻ろう。
基本的にはCPという数値を見るのが、手っ取り早い。
その数値は相手の強さをざっくり表示してくれる。
あ、自分の強さも、もちろん分かるよ。
近場でも探知してみて」
私はサムの説明を聞き、直観で試しに使ってみる。
《 スキルポイントを5を消費して、『スكاуٹاー使用能力』を取得できます。
現在のスキルポイント 11 Y/N 》
「このスキルも絶対に必要なってくるスキルだから取得して問題無い」
サムの説明の通り、スキルを獲得して使用する。
自身の強さ:
3(変身後55)CP
と表示される。
『近場を探知』というボタンがモノクル内の画面上にあるので、指で画面の外側から押してみる。
電子体温計のような『ピピっ』と効果音が発生する。
片眼鏡内の映像は、壁を透過したかのように、その先の人影を捕捉する。
シルエットが表示され、CPが2と表示される。
私の体から何かが抜け出た感覚がした。
「え、あれ、何か、私の体から抜け出たみたいな……」
「片眼鏡を使うとMPを消費する。
どれくらい減るかは、後でステータスと見比べながら学んでほしい。
使っていけば理解できると思われる。
あと、付け加えておくと、魔法少女の能力は使えば使うほど、人間の能力と同じように伸びる。
その片眼鏡を使っての消費するMPも、片眼鏡を使い込めば込むほどど、同じことをするときに消費するMPはどんどん減って行く。
能力が伸びるってのは、ピアノを弾くとかってのと一緒だね。ショパンだ。
何事も慣れだ。
整数に四捨五入モードになってると思うから、不便なら解除しておいたほうがいい。
あと、念のために伝えておくけど2万CP以上を計ると壊れるかもしれないから気を付けて、高そうなのを計る場合には、旧式から新式に取り替えてからにしたほうがいい」
「魔法少女の関連アイテム買い替え? 毎年デザイン変わる? SDGs? っていうか買い替え無いことが地球にやさしい……」
サムからの情報が多く、ちょっと混乱してしまい、自分でもよく分からないことを呟いてしまう。
「で、他にも、その片眼鏡とイヤホンは連動していて、自分のCPから換算して危険と思う者を感知すると知らせてくれる。
この機能を持って、エグゼキューショナーを探しやっつけていくことがサダーミのジョブだね」
「エグゼキューショナー?」
「あ、さっきやっつけた怪物のことだよ。
ここらでは、カーニボーって呼ばれてるだったかな」
「カーニボー?」
「うん、まぁ、呼び名はさておき、怪物をやっつけるとポイントが溜まり、物資と交換できる。
スキルも物資だ。
ワシらの公平性はジャスティスに完璧なんだよ。
それで、自分の適性にあった物資を選択できる。
他にもスキルツリーがあるので使いこなしてくれ。
主に、近接と遠距離で分かれている」
「スキルツリー? 物資?」
「最近の人は、ステータスとスキルツリーが使いやすいって聞いてたんだけど、ワシらの勘違いかな。
まぁ、数字に強いサダーミならすぐに慣れて使いこなせるよ。
その人その人にあったテイラーメイドなジョブ形態だよ。
例えば、そのスカウ…… 片眼鏡で表示されるステータスなども数字に強いサダーミだから、数値に強い人向けの装備が初回貸与物となっている」
「うーん、えっと……」
私は話の展開についていけず、狼狽えてしまう。
「それから、この契約書を読んでおいてね。
いろいろ物資の補給についても書いてある。
まぁ、怪物をやっつけたポイントを使って物資を買うことができる。
おいしいドーナツも買えるから、おいしかったらもっと買ってね。
まぁ、契約書はしっかりと読んでおいてくれ。
本契約を次に会った時にするからね。
クーリングオフは14日後までだ」
「クーリングオフ?」
「あ、あと体の紋様についても対処できるか」
——TIMES_A{0,1}——
2022年2月14日(月)16:38
「紋様?」
話を聞いていたら、突然混乱を感じた。
頭が朦朧とする。
今、話してた話題の紋様……だよね。
理解できる、なんでいきなり気持ち悪くなったのだろう?
「サダーミ、話聞いてるの? 疲れた? 集中力が切れて来たみたいだね。それじゃ」
「え、待って」
挨拶を言い残しサムは消えて行った。
私の手にはA4サイズの用紙100ページを超える、契約書を残して。
私、宇佐美貞美、中学二年生、14歳。
魔法少女になった。
□攻撃スキル系スキルツリー
〇近接スキル
├◇単純近接
│├・イーグルクロウ 10P
││
│└
└◇突進近接
└・バイソンダッシュパンチ
10P
〇遠距離スキル
├◇フィニッシュ遠距離攻撃
│├・ガンファイアー 15P
││ 1リロードごとにクールタイム30分
││ 6発装填 大きなリボルバー銃を
││ 召喚しぶっぱなす
││
│└
│
└◇超遠距離攻撃
└・PRECISIONSNIPE
200P
〇浄化
└◇通常浄化
└・エクソシスト
〇強化系
├◇身体強化
│├・STR全体強化
│├・AGI全体強化
│├・DEX全体強化
│├・VIT全体強化
│└・HP強化
│
└◇精神強化
└・MP強化
〇移動系
├◇高速移動強化
└◇隠密移動強化
〇耐性系
└◇耐性全体強化
├・物理耐性強化
└・毒全般耐性
〇具現系
└◇召喚系
├・リボルバー銃具現 20P
├・ライフル銃具現 M16 30P
└・線路 1P
〇回復系
└◇自然回復力UP
└・瞑想 3P
〇スター系
├◇4芒星
├◇5芒星
└◇6芒星
〇常態能力保持
├◇レベル1
│ 普段のステータスが変身時の状態の
│ 1/25になる。
│
└◇レベル2 200P
普段のステータスが変身時の状態の
1/10になる。
うわぁ、種類が多すぎる……。
サムが言うには、私は数字に強いから、こういうステータス表を使いこなすことが上手だろうって言ってたけど……。
私が思うに、私はこういうの得意では無い。
ステータス表の、何にどれだけつぎ込めば効率よくできるかなんての予想力は低い。
誰かが言ってた話だけど、経済学者は経済に詳しいとされているけど、実際に経済学者で稼げてる人は少ないって。
経済の知識を利用し、それを活かして、稼ぐことが得意な人。
経済の知識をどんどん学び、それを論じることが得意な人。
どちらかというと、私の数字に強いは後者だと思う……。
私は行き当たりばったりな性格なのである。
どうしようか……。