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1-9

朝、私は早々に身支度を終え、味気ない朝食を口にする

一体いつまでこのスープ生活を送るのだろう

今日から少し固形も食べていいとかなんとか言っていたのにいざ蓋を開けるとパンをミルクで煮崩したものに蜂蜜をかけてある

確かに美味しが、これはもはや液体だ、固形とは違う

正直、お肉とかが食べたい


「随分早いね!」


ナナに目で訴えかけているのを無視されながら朝食を食べているとベスお兄様が入ってきた


「おはようございます、お兄様」


早いと言っても一般的な朝食の時間帯だろう

家族達はみんな多忙で家では朝食も取らずに仕事に出てしまっている


「作家なんてしていると時間感覚なんて良く分からなくなるからなぁ、、そんなに早くもないのかな?

でも、リーチェは病み上がりなんだしゆっくり寝ていた方がいいんじゃないの?」


広い食卓なのに私の隣に座り私の食事に視線を落とす


「後でこっそり市場で串焼きでも・・・」


こっそり耳打ちされて胸が高鳴ったが射殺すようなナナの視線に私もお兄様も固まる


「まぁ、、もう少ししたら、だな?」


肩を窄めるお兄様に私も肩を落とした


コンコン


扉のノック音に視線を向けると執事が入ってくる


「ルディカーティス様がお見えになりました」


その言葉に私の心臓が少し飛び跳ねる

平静を装い返事をするとベスお兄様が不機嫌そうに眉間に皺を寄せる

が、すぐに笑顔になる事になった


「その、申し訳ない急な仕事が入ってしまい、、

今日はこれを届け次第すぐ帰らなくてはならなくなった」


そう言い花束を手渡される


「そんな、、わざわざご自身が来られなくとも使いを出せば良かったのに、、」


私の言葉にそうか、と短く答えると足早に去ってしまった

本当にわざわざこれを届けにきただけのようだ


「お礼くらい、、言えば良かったわ、、」


忙しい中約束のためにわざわざ来てくれたのに随分可愛げがない事を言ってしまった


去っていく後ろ姿にどこか残念に思う自分がいて戸惑う

今までは定例の茶会が早く終われば終わるほど喜んでいたはずなのに一体どうしたと言うのだろう



「それじゃあリーチェ、僕と観劇なんてどうだい?」


突然予定を無くした私を気遣ってかベスお兄様は明るい声を出す


「・・・よろしいのですか?」


「もちろんだよ!その後はお茶して、、リーチェが好きなお店全部行こう!」


お兄様にも予定があったかもしれないのに私に一日費やしてくれるようだ


「ハーブティー等はよろしいですがお嬢様はまだケーキなどは食べられませんよ?」


しっかりナナに釘を刺されてしまった


ーー

ーーー


「リーチェ、少しでも辛かったり気分が悪くなったら言うんだよ?」


せっかくならと都に移動する事になったのだが、ベスお兄様の過保護が爆発しており、我が家で一番良い馬車を用意すると中にマットやらクッションやらを敷き詰めベットのようにしてしまった

これなら寝転がりながら行けるね!と微笑まれ驚いてしまった

なんて革新的なアイデア、、もしかしたら流行るのでは?

その為50分の道中兄と寝そべりながら快適に都へと向かえた

都についてからも周りの目が気になるくらいにぴったり私に寄り添い半分持ち上げられながら歩く

これは、、介抱の域を超えているのでは無いだろうか


街中を車椅子では目立って嫌だろうと介助しながら劇場に向かう事になったのだが、これでは車椅子の方が目立たなかったかもしれない

劇場に着くと長い階段がありどうしたものかと思ったがお兄様はにこりと笑い裏に移動する


「この劇場は新しくてね、機材や大道具を運ぶためのエレベーターが設置してあるんだよ!」


「エレベーター・・・ですか?」


あまり聞き馴染みのない言葉にキョトンとするとベスお兄様は楽しそうに私の車椅子を押す

関係者しか入らなそうな扉を当たり前のようにどんどん開けていくお兄様に少しドキドキしてしまったが皆お兄様を見ると一礼してそれぞれの業務に従事している

劇作家とはこんなに現場と繋がっているものなのか


「じゃーん!」


お兄様は陽気な声で大きな箱名前で手を広げカラカラと柵を横にスライドさせていく


「この箱が上に上がるんだよ!」


「うわぁ・・・」


なんだか壁にいくつものボタンがついていたり変な文字盤があったりと見慣れない空間に胸が高鳴る

ナナもキョロキョロと見回しながら中に入る

お兄様は慣れた手つきでボタンを押しまたカラカラと柵を閉める


ブウウンと機械音がして箱が上に上がる

入り口に簡単な柵しかついていない為はっきりと上に上がっているのが分かる

いくつかの部屋を通り過ぎてエレベーターが止まる


「ほら、もう着いた!すごいでしょ?」


お兄様は得意げに微笑むとまた私の車椅子を押してくれる

そして慣れた手つきでまた扉を開いていき、貴族専用ラウンジを通り過ぎ舞台がよく見える上の個室にたどり着いた


「良い席が空いてて良かったよ!」


確かにカーテンで区切られている個室なら人目も気にならない


「座り直す?」


「いえ、始まる直前で大丈夫です!」


ふかふかのソファを指さされたがこんなに広い個室に来たのは初めてで、もう少し見て回りたい


「では私は飲み物をお持ちします」


ナナが一礼して出て行くのと入れ違いで恰幅のいい男性が入ってきた


「よぉーエリザベスーー!」


顔を見た瞬間とても嫌そうな顔をするお兄様に親しい間柄なのだろうとすぐ分かった


「次そう呼んだら恥ずかしくて街を歩けなくしてやるからな」


ベスお兄様は生まれる直前まで女の子だとお母様が確信していた為エリザベスという名前が付けられる予定だったのだ

しかも産後の肥立ちがあまり良くなかった事もあり乳母とお父様は女の子を熱望していた母に一旦女の子だと嘘をつき

ベスと名づけさも愛称で呼んでるかのように振る舞った

昔は女みたいな名前だと良く揶揄われていたが、最近はめっきり聞かなくなっていたが理由がわかった

今や人気作家のお兄様だったら本当に街を歩けなく出来てしまいそうだ


「おやおや?そちらの可愛らしい御令嬢は??」


「お前なんかがうちの可愛いリーチェを見るな!

ごめんね、リーチェ少し外すよ」


男性が私に向き直り慌てて挨拶しようとしたがお兄様がラリアットのように首を腕で締めながら個室から出てしまう


急にポツンと一人になってしまったがすぐにカーテンが開かれナナが帰ってきた、、と思ったが予想外の人物の姿に思わずヒュッと息を飲んだ


「あら?どうなさいましたの?その足、、」


「メアリアン、さま、、」


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