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「思ったより、ずっと良さそうだ」


痛めた足首を固定しての歩行練習に私は結構大変だったのだが

まぁルカ様はなんならもう2度と歩けないのではくらいに思っていたらしく、足首を固定して立ち上がった瞬間少し驚いていた

お兄様がつけてくれた護衛に頼もうと思っていた、身体を支える役目を買って出たルカ様に支えられながら少しずつ歩く

私としては完治するものを嘘ついている為、バレはしないかヒヤヒヤしてしまうが

下手に演じるなと家族中から言われている為今はリハビリに励む事にする


「この分なら、リハビリがてら少し出ないか?」


私は結構疲れたのだが出された提案に先生は頷く


「室内のリハビリは退屈でしょうし、庭に出るくらいは問題ありませんよ」


正直止めて欲しかった、、、

外に出て何を話せば良いというのだろうか


エスコートというより身体を支えられながら、更には後ろに車椅子を押すナナも控えているが庭に出た

10年も婚約していたのにこんなに密接して歩くなんて初めてだ

ついつい嫌味も言いたくなってしまう


「エスコートして下さるなんて、初めてでは無いですか?」


私の言葉にルカ様は少し間を開けて口を開く


「いや、前にリーチェが8歳の誕生日の日にエスコートした事がある」


覚えてないし、そんな昔のことをカウントするとは思わなかった

少し歩き、庭にある東屋で小休憩を挟む


メイド達が用意してくれたお茶を口に含む

たいして動いていないが喉が渇いていたようだ


「明日は馬にでも乗ってみようか、、いや、まだ早いか」


明日?明日も来ようとしているの?


「お忙しいのでは?」


正直そう頻繁に来られても困る

今だって会話が上手く続かないのに、一体何をしに来ようとしているのだろうか

お断りのつもりで口を開いたがルカ様は首を振る


「気にしなくていい、それに、そんなに忙しく無い」


明らかに寝不足そうなのに、、

よく見るとくまも出来ているし、明らかに疲れの滲んだ表情をしている

そもそもなぜ今になって態度を改めるのか分からない。


「私にばかり時間を割いてしまって、、メアリアン様はよろしいのですか?」


こうなれば奥の手だ、少し嫌味のように聞こえるかもしれないが愛するメアリアン様を悲しませるとなればルカ様も私ばかりに構っていられなくなるだろうと思い言ったのだがルカ様は少し首を傾げ持っていたティーカップを下ろす


「・・・?

あぁ、もう大丈夫だ」


もうってなんだろう、よく分からない返答だったがそれ以上聞くのもなんだか憚られ口をつぐんだ


「今はどんなことよりリーチェが優先だ」


少し間をおいてかけられた言葉に落ち着かない気持ちになる

どういう意味だろう

ただ世間体というのを気にしているのだろうか?

あまりそういうのに関心があるような性格にも見えないが

まぁ私はあまり婚約者のことに詳しくないし、存外彼は世間からの評価というものに敏感なのかもしれない

そう考えれば納得もいく。


「あまり長居をしても疲れてしまうだろう、そろそろ失礼しよう」


ルカ様はさっと立ち上がると当然のように手を差し出してくる

紳士的なエスコートなんて、彼からされたことはないけれどさすが慣れてらっしゃる

とても様になっていて思わず見惚れてしまうほどだ


その手をとって立ち上がると思いの外顔が近く驚いてしまう

こんなに近くで婚約者の顔を真っ直ぐ見るのは初めてだ

髪も瞳も漆黒かと思っていたがよく見ると瞳は少し青みがかっておりまるで夜の海のような綺麗なネイビーブルーだ


そこでふと小さい頃の事を思い出した

あの最低な婚約日のせいで忘れていたがそれより前にルカ様に会った事がある。

前にも確かこのくらい顔が近くなって、この濃紺の瞳を覗いたのだ


「・・・夜の海」


ポツリと呟いた私にルカ様は少し驚いた顔をしてみるみる真っ赤になる

慌てて逸らされた顔に見間違いかとも思ったが髪の隙間から覗く耳まで真っ赤だ


「・・・アクアマリンの瞳に星色の髪」


ポツリと返された言葉に私もびっくりしてしまった

まだ5歳くらいの頃、お花のような淡いピンク色の髪にルビーの様な瞳の女の子が色々な星を巡る絵本が大好きだった

自分は可愛いと溺愛する家族のせいで思い込んではいたが、彼女の容姿に憧れていた私は自分の煤けたシルバーグレーのような髪に水色の瞳は鏡を見るたびちょっぴり残念だった


詳しくは思い出せないが、そうぼやく私にアクアマリンのように澄んだ瞳に、キラキラと色を映す髪は星の様だと励ましてもらった事があった

自分の真っ黒な髪と瞳とは違って綺麗だと言われ私も負けじと言ったのだ

貴方の瞳は夜の海、見るものが映ってとっても綺麗だと


あの時の彼とルカ様が同一人物だと言うことに驚きだ

思い出の彼は本当に素直で可愛い男の子だったのだが面影すらないではないか

今はただただ仏頂面の気難しい男性だ

いや、私をこれでいいと言ったあの日既に彼から可愛らしさと言うものは消え失せていた気がする


「・・・覚えていたんだな」


「その、今少し思い出して、、はっきりとは覚えておりませんが」


私の言葉にそうか、と小さく答えるとルカ様はまたいつもの無表情に戻ってしまった

何を考えているのか分からないその顔になんだか落ち着かない


もしかして不愉快な思いをさせたのだろうか、、、?



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