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閉幕し会場が明るくなると衣装ケースを持ったルカ様のお付きの方がそっと扉から入ってくる

ルカ様は衣装ケースを受け取ると軽くお礼を言い私越しにラインに視線を向ける


「私ので申し訳ないが、これに着替えてもらえるか?」


一瞬訝しげな顔をして衣装ケースを受け取ったラインはそのまますぐにケースを開けた

中に入っているのはいわゆる貴族における男性用の正装、スーツだ

私も一瞬疑問に思ったがすぐに馬車での会話を思い出す

3人でお店を予約と言っていたし、今の巡回着では店内に入れてもらえないだろう

リストランテは正装で行かなくては個室内に入れず護衛と一緒に室外待機になってしまう

見るからに護衛の二人と比べると少しラフな巡回着のラインはそもそもお店にさえ入らないかもしれない

そこまで思い至らず、ルカ様に用意させてしまうなんて、申し訳ない事をしてしまった


「そんなに体格も変わらないだろうし、、問題ないと思うのだが、、もし合わないようだったらブティックに寄ろう」


「すみませんお気遣いいただいて、、私が気が付かないといけなかったのに

ありがとうございます」


「手伝ってやってくれ」


従者にそう言うと未だ疑問の残るラインを連れてルカ様の従者の方は退室して行った


「もう少し気安い店をとも思ったが、、観劇後の貴族も多いだろうし個室がいいかと思ってリストランテを予約したが

むしろ、気を使わせてしまったな」


ライン達が出るのを見計らってルカ様は口を開いた


「そんな、むしろ色々お気遣いいただいてありがとうございます

確かに、これを見た後では私達のことを話してなかったとしても周囲の会話が気になってしまいそうですものね」


俯く私にルカ様は少し微笑む


「事前にベスからあらすじを聞いていたからな・・

どちらにしろ、侯爵家がどう出るかも分からない、少しの間都に来るのは控えた方が良くなるかもしれないな」


「そう、ですね・・

ベスお兄様が心配です、、こんな事をして大丈夫なのでしょうか」


私の言葉にルカ様は少し思考する


「むしろ何かしたら全てを認めるような形になってしまうし、、直接的な制裁というのはあまり考えられないが、用心するに越したことは無さそうだな

念のため、ベス以外も護衛を強化しておくといいかもしれない」


ルカ様の言葉に頷いたタイミングで着替えを終えたラインが従者に連れられて戻ってきた


「ルディカーティス様、ワイシャツのサイズが合わず、、元々着ていたものをそのままお召しいただきました。

ジャケットも前は閉じませんが入店は問題ないかと」


やはり騎士団として鍛えられているラインは見た目より胸囲があるようだ

ドレイクお兄様もよく逆三角形こそ男の肉体美だと騒いでいるしな


ルカ様はラインを下から上まで見るとうんとつぶやく


「まぁ、大丈夫だろう。

馴染みの店だ、、個室に着いたらジャケットは脱げばいい」


ルカ様の言葉に従者は頷くとラインの少し窮屈そうなジャケットを脱がせた


馬車を入り口まで回すため先に従者の方は去っていった

ルカ様にエスコートされるように部屋から出たがどうにもラインの様子が気になった


「ルカ様、すみません

少しお時間いただいても良いですか?」


そっとエスコートの手から離れるとラインの方に向き直る

数歩あとを歩いていたラインに声をかける


「大丈夫?気分悪い、、?」


伺うように覗き込むとラインは少し思い詰めたような顔のまま小さく声を出す


「いや、、、リーチェから見て、この格好はリストランテとやらで相応しくないと思うか?」


ラインの言葉に突然どうしたのだろうと首を傾げたが思った事をそのまま言うべきなのだろうと思い口を開く


「ジャケットを羽織って仕舞えばそんなに気にはならないけれど、、確かに、この生地はあまりドレスコード向きじゃないわね、、あと胸元のポケットも」


少しミリタリーデザインのシャツは麻のような厚手の生地で丈夫そうだ

機能美というやつだろう、暴漢などを相手にする服と、貴族がパーティーに使用する服装じゃそりゃあ大きく異なるだろう


黙り込むラインに私は慌ててすぐに言葉をつづけた


「あまり気にしなくても大丈夫よ!今日ほど格式ばったお店ではないけれど、ドレイクお兄様もよくこっちの方がいいってシャツもジャケットも巡回服とか騎馬服で来たりするもの」


「そうか、そう、だよな、、ごめん、気を使わせたな」


なんだか無理に微笑んでいるように見えるラインにもう一度声をかけようかと悩んだが

後ろから肩に手を添えてきたルカ様に止められる


「予約の時間もある、続きは移動後でもいいか?」


他の観客ももう誰もいないホール内に私は慌ててルカ様の方に向き直る


「ごめんなさい、そうですよね!

ライン、本当に大丈夫よ、さっきのジャケットも似合ってたから」


念押しで最後励ましの言葉を続けてみたがこれであっていたのかも定かではない

少し、後をついてきているラインの事が気になりながら馬車に乗り込んだ

ルカ様に借りたパンツに履き替えたラインを馬に跨らせる訳にはいかず3人で馬車に乗り込む


気まずすぎる空間になんとか話を盛り上げようと劇の話をしたがルカ様からの返事はあるがラインはずっと心ここに在らずだった


私とルカ様からすれば当事者同士、色々話したいことが出てくるがラインからしたら退屈だったのかもしれない


同じ都内のリストランテまでは15分程度だったが人生で一番長い15分間だった

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