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「ライン!?」


翌朝、準備を終えて馬車に乗り込もうとすると何故かラインがいた


「メアリアン嬢がいる都に足を運ぶんだ、護衛の強化は当然の事だろう?」


隣でドレイクお兄様が得意げにしている

昨日夕飯中早々にどこかに消えたと思ったが、まさか昨日の今日でラインを護衛にアテンドするとは思わなかった


「騎士のお仕事はいいの?

お兄様が無理を言ったりしていない?大丈夫??」


ラインを気遣うが彼は困ったように頬を掻く


「昨夜急に非番にはなったんだけど、、、

護衛のバイトとしてさっきお金まで受け取っててな、、

リーチェが嫌じゃなければ護衛につかせてくれないか?

・・・ほら、こないだガキどもに色々買ってやるって約束しちゃったからさ」


最後耳打ちするように顔を近づけられクスリと笑う

私に自分のいいところをたくさん教えたらいいものを買ってやろうと声高かに宣言していたのはライン自身でしょうに


「それじゃあ、頼んだぞライン」


ドレイクお兄様はラインの肩を一度叩くと馬に跨り仕事に行ってしまった

ラインはルカ様に向き直ると騎士らしく礼を尽くす


「お初にお目にかかります公爵代理様

本日護衛にあたらせていただきます、ラインと申します」


「・・・あぁ、よろしく頼む」


流石のルカ様も少し動揺しているようだったがすぐに持ち直し馬車にと足を向ける


馬車に乗り込む時スッとラインが手を差し出したがすかさずルカ様も反対から手を差し出す

私はどうしたものかと少し悩んだ末両方の手を借りながら馬車に乗り込んだ

見送りのお母様が扇子で口元を隠しながら

いってらっしゃい

と言ったがきっと笑っているに違いない


「・・・随分と、親しいのだな」


馬車の中は私とルカ様

ラインは馬に乗って並走している


馬車が動き出して少しした頃にルカ様が口を開いた


「・・・ラインとは昔馴染みなのもあってつい、、すみません、お見苦しい所を」


どこまでをどう言ったらいいのか

二人の関係性が何だか複雑でどう言葉にしたらいいのか分からない

ルカ様もそれを察したのかそれ以上の言及はしてこなかった


気まずい馬車の時間はいつもより長く感じた

途中夕食についてどうしようかと話題をふったのだが失敗だった

ルカ様がチラリと馬車の外を見て3人で予約しようと言ってくれたが、断るべきだったのだろうか

給金が出てるとはいえ休みを1日潰してくれたラインを後ろに控えさせて食事を取るのは何だか気が引けてしまい3人での食事に乗ってしまったが、、

既にぎこちない空気の馬車に不安が募る

食事はこれよりさらに気まずくなりそうだ


ーー

ーーー


劇場の中はとても賑わっていた

今日が公開日ではあったが事前に内容について色々噂が立っていたらしい

きっとそれも戦略の一つなのだろう

どんな噂かは分かっていなかったが念のため裏からVIP用個室に入る

前と違ってラウンジ前も通らない為スタッフや関係者以外本当に誰にも会う事なく席に到着した

相当気を遣ってくれているのだろう



「それじゃあ楽しんで」


個室の場合護衛は中に入らず扉の外に立つのが一般的な為ラインは普段私についてくれている護衛と一緒に外でスタンバイする


一体何時間ものの劇なのだろう、外にずっと立っていてもらうのは何だか申し訳ない

他の護衛達にも言える事ではあるのだが、お兄様に無理矢理セッティングされたというのがどうも私の中で引っかかってしまうのだ

せめてラウンジに行ってもらうか、、もしラインが興味があるなら空いている席があるか聞こうか

そう思って立とうとするとルカ様がそっと私を制する

ドリンクを持ってきてくれた個室に一人ついている専属のウエイターに何やら耳打ちする


「・・・あの?」


困惑していると後ろの扉が開き私たちが座っているものと同じ一人がけ用のソファが運び込まれる


「気になるのだろう?

彼が嫌でなければ一緒にどうかと誘ってくるといい」


薄暗いこの場ではルカ様の表情の機微までは分からなかったが心遣いがとても嬉しかった


「ありがとうございますルカ様

ドレイクお兄様に強要されて休みが潰れてしまったのではとずっと気掛かりで、、

呼んでみますね」


劇が始まるまでそう時間がなく私は足早に扉の外に出る


「どうしたんです?具合でも悪くなりましたか?」


驚いたようなラインに首を振る

どうやらソファが運び込まれたのをみて横になっていると思ったようだ


「ルカ様が、ラインを誘ってはどうかと言ってくださったの

私が、休日を潰してしまったと気にしていたからご提案くれたんだけれど、、劇、あまり好きじゃないかしら?」


誘っていてハッとしたのだがドレイクお兄様は劇が苦手だ

とにかく眠くなるそうで、だったら外の護衛で同僚と喋っていた方がマシだと言っていたのを思い出した


「ベス様が書いたものだったら興味があるけど、、いいのか?」


中のルカ様に聞こえないように私に耳打ちするラインに私もうーんと考え耳打ちする


「あまり気になさるお方じゃないだろうから、、、

断っても、一緒に見てもどっちでもいいと思うわ」


「それじゃあ遠慮なく」


そう言ってラインはその場をディオーラル家の護衛達に任せ私と一緒に劇を見る為ルカ様の待つVIPルームに入った


ーー

ーーー

ルディカーティス視点(短編)


うっすらと開いたままの扉の隙間からリーチェがラインに声をかけるのが見えた

自分と話すときより随分と肩の力が抜けている

そんな姿に少し胸がざわつく


彼、ラインは思ったよりもずっと好青年でブロンドの髪が王族すらも彷彿とさせた

リーチェと並ぶと本当によく似合っていて肩を寄せ合う姿は10年も婚約していた俺よりもずっとずっと自然で恋人らしかった


リーチェの言葉を受けて彼は少し驚いた顔をすると何やら耳打ちしている

先程、家を出る時もそうだった

仲良さげに耳に顔を近づけ何やら話していた

リーチェも楽しそうに笑っていて、、今までそんな顔をさせたことが無い自分にひどく落胆した


リーチェは俺といるより、彼といた方がいいのでは無いか、そう思い始めてしまうほど彼らの仲は良く見えた


昨夜、アッシュに執務室に呼ばれた際、リーチェに言った言葉を聞いた

余計な事をしたと謝った彼に内心、彼女は自分の元に来てくれるのでは無いかと淡く期待を膨らませてしまった

彼女が金品や権力に興味がない事は知っていたが、、アッシュの言う通り貴族と平民では暮らしそのものが違うのも事実だ


だが、二人を見てぐらぐらと揺らぐ

リーチェにとっての幸せとは何か、、

それが自分との中にあるのか、、、



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