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「力不足ですまない、やはりメアリアン嬢に対して殆ど制限をかける事ができなかった」


夕食が開始してすぐアッシュお兄様が頭を下げる

今回の件における処罰を追加できる最後のチャンスだったらしい


「メアリアン嬢は侯爵の唯一の娘だからね、、あれだけ強固な態度を取られたら王も説得できなかったんじゃないかな?」


ジルお兄様の言葉にドレイクお兄様は拳を振るわせた


「だが殺人未遂だ・・・あまりにも刑が軽すぎる」


「1ヶ月拘束できただけでいい方だよ。

次期公爵夫人予定のリーチェだから拘束できたんだ、他の令嬢相手だったら自宅謹慎が良いところだよ、詰問さえ出来なかったんじゃないかな?」


ジルお兄様の言葉にシンッと静まり返る

普段宰相補佐をしているだけあって言葉に説得力がある


「公爵家からも何か出来たら良かったのだが、、」


何故か侯爵家に私とルカ様の婚約の見直しの件が知られており実害があったのはあくまで伯爵家のみと言うことで公爵家は関係ないからと口出しを禁止されてしまった

婚約にあたる条件も筒抜けだった事もあり誰が公爵家に色々と吹き込んでいるのかと調べたらしいがとうとう分からないままメアリアン様が釈放されてしまい足がかりを失ってしまった


重苦しく流れる空気をお母様がパンッと手を叩き終わらせる


「せっかくの夕食が台無しになってしまう前にお話を変えましょ?

ルディカーティス様とリーチェは明日ベスが監督した劇を見に行くのよね?」


「色々噂となる前に知っておいた方がいいとルカ様が気遣ってチケットを用意してくれたんです」


「あら、それじゃあ都で夕飯も食べてくるのかしら?」


わざと明るく弾むお母様の声に私も合わせていたがドレイクお兄様は早々に席を立った

それぞれ思うところがあるのかなんだかぎこちない夕食だった


ーー

ーーー


「リーチェ、少しいいかしら?」


夕食後部屋に戻りながらルカ様に明日の開演時間など書いていると後ろからお母様に声をかけられた

隣にアッシュお兄様もおりルカ様に何やら耳打ちをした


「リーチェ、それじゃあまた明日」


「えぇ、また明日、よろしくお願いします」


二人を見送った後お母様の部屋に案内される

軽くお茶を用意してもらいお母様は完全に人払いをして扉を閉める

二人きり、というシチュエーションは一体いつぶりだろうか

なんだか妙に緊張する

二人きりだから、というよりなんとなく話の内容が察せているからかもしれない


「アッシュに、今日の事を聞きました」


予想していた内容少し俯く


「勘違いしないで頂戴、確かにアッシュの言うことは間違っていない、でも正しいとも言い切れないわ」


お母様は一口お茶を飲むとふぅとため息をつく


「これは、お兄様達も知らない事なんだけれどね」


お母様はなんだか昔を懐かしむかのように遠くを見つめて話し始めた


「実は私は平民の出では無いのですよ」


「・・・え?」


お父様とお母様はまだ男爵になる前に結婚して二人でこの家を成り上がらせたと前々から聞かされていた

お父様が平民から成り上がったと聞いていたからてっきり二人とも平民かと思っていた

さらに家系図にもお母様の苗字は特に何も書かれていない


「私たちがメインで取引をしている東の大国、、そこの公爵家が私の生家です」


驚く私に構わずお母様は話を続ける


「私の家はあまり家族仲が良く無く接点もあまり無かった

私は四女という立場もあり30も歳の離れた相手と政略結婚させられる予定だった、、、

会った事もなければ相手は3度目の結婚、、愛人までいる上に義理の息子となる人は私より年上だった」


何という悪条件

あまりの事に私は言葉を失う


「当然嫌で逃げ出したの、隣の国にまで行って仕舞えば見つからないだろうって、、

でも、たどり着く前にこのディオーラル、当時はまだほんの小さな、名前すらない村だったのだけれど、、力尽きて倒れてしまったのよ

そして、倒れている私を介抱してくれたのが貴方のお父様、、フィリップだったのよ」


お母様は少しはにかむように微笑む


「フィリップはとても利発な青年で、早くに両親は亡くなってしまいいなかったけれど村の人たちがお金を出し合ってアカデミーに通っていたの、、

私を介抱するのもきっと苦しかっただろうに嫌な顔ひとつせず私にスープやパンを与えてくれた

そんな彼の事を好きになるのにそう時間は掛からなかったわ」


お母様は少しだけ俯く


「だからね、アッシュが言っていたことの意味を身をもって知っているの

彼を愛してはいた、けれど平民の生活は思ったよりもずっと過酷で、、

硬いパンに味のないスープ、それに干し肉があればいい方、、

お風呂だって、とてもじゃないけど毎日は入れない、、そんな生活が耐えられなかった

お父様はね、本当は商人になって世界中を巡る予定で、その為にアカデミーに通っていたのよ」


お母様はそっと見た事もない家紋の入ったブローチを机に置いた


「これが、私の生家、、ルナサリア家の家紋、、

平民の暮らしが耐えられなくなった私はとうとうこのブローチを質に出してしまって両親に居場所がバレてしまったの

逃げようとも思ったのだけれどフィリップはまだ学生、私ももうお金が無かったからどうする事もできなくなってしまってね

それで、当時フィリップの学友だったルディカーティス様のお父様、、公爵様に力をお借りして、、フィリップを、ディオーラル領を収める領主って事にしたのよ」


お母様はクスクスと笑う


「よくバレなかったわよね?

ディオーラル領なんて無かったし、何となくで名前もつけたのよ?

今後両国をつなぐ大切な役割を果たすこの地にぜひ私を迎えたいって説得してくれたの、、それでフィリップは貴族にならざるを得なくなったのよ

今では笑って話せるけれど、当時は申し訳なくて仕方なかった

貴族にはお金がある、でも自由がないし重い責任や義務がつきまとう、、」


お母様はそっと私の手を握る


「貴女には苦労して欲しくないわ、、でも私はフィリップと引き離されたら生きていけない、、

貴女にとってそんな存在が現れたのなら身分で諦めてはダメだわ、、きっと後悔しか残らない

それに、我が家はお金はありますもの、、愛をとったって大丈夫よ」


お母様はにこりと笑う


「貴女にとって後悔のない選択をして頂戴」


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