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「リーチェ、すまなかった、、俺は」
ルカ様が私を真っ直ぐ見つめ謝罪を口にした時だ扉が勢いよく開かれドレイクお兄様が入ってきた
「ハッ、、今更だな、例え横槍が無かろうと、、この体たらく、うまく行っていたとは思えないな」
ドレイクお兄様はズカズカと歩を進めるとバシッと私の隣に座っていたベスお兄様の頭を引っ叩く
「こんな酒臭い部屋に、こんな状態の元婚約者とリーチェを一緒にするとは、、どういうつもりだ」
元というワードを強調するように言ったドレイクお兄様にルカ様はピクリと肩を動かした
「・・筋肉バカが、、力加減っつーのが分かんねーのかよ」
相当痛かったのか頭をさすりながら悪態をつくベスお兄様を睨みつけるとドレイクお兄様はそのまま続ける
「今日のリーチェの相手が誰か知らないようだから教えてやるが、、、ラインだ。」
ドレイクお兄様の言葉にベスお兄様は驚いたように顔を上げる
「・・・は?ラインって、あのラインか?」
「あぁ、そうだ」
ドレイクお兄様の返事にベスお兄様は参ったなーと後頭部をポリポリと掻く
「これはまた、、強敵ですわ、、」
ルカ様は突然の乱入者に呆然としている
「俺は、リーチェにはラインの方が相応しいと思っている
酒の力を借りてしか向き合えないような男と違い今日しっかりと想いを伝えたと言っていた
それに、情けのある懐の深い男だ」
フンッと挑発するようにルカ様を見るドレイクお兄様の言葉に私がボンっと顔を赤くする羽目になった
今の言葉じゃ、私がラインになんて言われたが伝わってしまうでは無いか!
というか、ドレイクお兄様に言ったなんて!
ラインのバカ!!
「え?は??あいつ・・は?」
真っ赤になる私とドレイクお兄様の顔を交互に見ながらベスお兄様は困惑する
ルカ様も今の言葉で酔いが覚めたのか目がはっきりと開き青ざめている
「リーチェ、ラインは見込みのある良い男だ、きっとお前を幸せにしてくれる
俺は、お前に幸せになって欲しい」
真剣にドレイクお兄様に見つめられ私は固まる事しかできない
「いやいや、リーチェの気持ちが大切だろ?」
割って入ってくれたベスお兄様に引き離される
「む?リーチェ、ラインは嫌いか?」
「き、、嫌いとかじゃ、、」
「なら、好きなんだな?」
「え!?・・えっと」
突然のことにパニックになる私にベスお兄様はやれやれと首を振る
「これだから脳筋は、世の中それだけじゃ無いだろう?
あらゆる劇や小説でも簡単に行かないもんなんだよ、、恋愛っつーのは、分かってないなぁ」
「む・・・リーチェ、こいつが好きなのか?
ラインよりもか?こいつの事を愛しているのか?」
ルカ様を指差して言われて私は返答に困る
こいつ、、って、、仮にも公爵様になる人に失礼すぎるがそれは置いておこう
私はルカ様の事が好きなんだと思っていたが色々とモヤモヤが晴れてスッキリした今、正直よく分からない
ラインに告白された時のドキドキと、ルカ様へのドキドキ
一体何が違ったのだろうか?
そもそも好きとはなんだろう
ルカ様の事が好き、ラインの事が好き
お兄様達の事も好き、ナナの事も好き
この好きの違いが正直もう分からない
「リーチェは男性に言い寄られたこともなければ婚約生活も碌なもんじゃなかったんなら恋愛経験は皆無だろ?
こんな一気に立て込んじゃ訳わかんないだろ」
さらっと言ってしまった言葉にベスお兄様はルカ様の方をみてあっと失礼と口を押さる
ルカ様は碌なもんじゃなかったという言葉が相当刺さったようで項垂れている
「それじゃあ、どうせ猶予もあるんだ、それぞれとデートして決めてはどうだ?」
とんでもないドレイクお兄様の言葉に勢いよく首を振ったが意外にもベスお兄様とルカ様は好意的だった
「おぉ、少しはまともな事を言うな、半年後の生誕祭、、リーチェが心に決めた人とこの日一緒に過ごすと言うのでどうだ?」
「・・もう一度俺にチャンスをくれないか?」
ルカ様の真剣な瞳にあと押され、私はついつい頷いてしまった
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「こんな事になっちまってすまねぇな」
ドレイク兄貴に連れられて帰って行ったリーチェを見送り二人になると俺は口を開く
向かいに座るルディカーティスはすっかり酔いが覚めてしまったようだ
「いや、、むしろ良かった
俺は、俺の悔いのないように、リーチェと向き合っていくつもりだ」
何やら決意をしている姿を尻目に酒の入ったグラスを傾ける
「所で、約束の件、、こんな結果だが良いんだよな?」
「あぁ、好きにしてくれ」
たまたまリーチェが乱入して今日こう言う形になったが
俺としては正直ラインでもルディカーティスでもどっちでも良いのだ
ただ、今回のイザコザを詳しく教えて欲しい、さらに劇の題材にする、その代わりに間を取り持ってやろうか?と取引を持ちかけたのだ
劇のタイトルは何にしようか、、主人公の名前は決めてある、アメリーヌだ、愛称はアメリ、、
王子と公爵、、両方との婚姻を目論み悪事を働いて破滅していく、見目は美しいが心の醜い女がどんどん醜く落ちぶれていく様を描こうと思う
もうすぐにでも釈放されるであろう彼女の日々が、後ろ指刺される茨の道になるよう祈って
俺は俺にできる形で妹にした事への報復をしようと思う