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「・・・離して、下さい
もう婚約破棄なさるでしょう?そうしたらルカ様・・いえ、ルディカーティス様、はメアリアン様とようやく結ばれることが出来るのよ?」
そっと諌めるように腕を掴む手を解こうとしたがルディカーティス様はむしろグッと力を入れる
「しない、、リーチェと以外は婚約なんて」
「・・愛しているのでしょう、メアリアン様を」
ついついそう口をついて出てしまう
これじゃあラインに背中を押された甲斐がないじゃ無いか
「俺が愛しているのはリーチェだけだ、初めて会ったあの日から」
あまりにしっかりした口調に驚いてしまう
そんな訳無い、酔ってるだけ、、もしかしたら一緒に飲んだ薬が変に作用しているのかもしれない
「本当は、もっとちゃんと、、好きだと、愛してると伝えるべきだった・・・こうなる前に、、
リーチェを前にすると変に気取ってしまう・・
あの日だって、、リーチェと、婚約したいって懇願したのは俺なのに、、これでいいなんて、、俺は、、」
「・・・え?」
私と婚約したいと、、懇願した?なんの事??
「一年位、リーチェと婚約したいって親父の所に通ってたんだよ」
横からかけられたベスお兄様の言葉に驚いてしまう
そんなそぶり一切無かったじゃないか
「なぁ、言い訳になるだけだからって話さないのはリーチェにも良くないだろ?
ちゃんと自分の口から何があったか話すべきなんじゃねーの?」
「・・・」
黙り込むルカ様に私も意を決する
「私も、ちゃんとお話ししたいです、、何かあったなら知りたい、、」
ただ、酔ってる時じゃない方が良いのだけれど
そう思ってベスお兄様を見ると察したのかうーんと唸り小さな声で私に耳打ちする
「酔った勢いじゃねーと口割らなそうだからこのまま聞きたいこと聞き出しておけ
自白剤、これしか無いし」
お兄様の言葉に少し戸惑うが確かにこうでもしないと私が知らないまま事が終わってしまうと思い口を開く
「私に関係することで、私が知らないことがあるなら教えてください」
その言葉にルカ様は渋々口を開く
「リーチェと婚約したいと言った時、俺は三つ条件を提示された
一つ、俺から婚約を望んだという事を言わない
二つ、リーチェが18歳になるまでに大きな実績を作り後ろ盾を確保する事
三つ、爵位継承までにリーチェが心から望んで結婚を受け入れる事」
その言葉を聞いてハッとする
ルカ様は爵位継承前にも関わらず本当に忙しそうで、仕事のほとんどを引き継いでいるのではと噂されていた
「本来なら、婚姻は後ろ盾を得る為なことが多いけどうちは金はあるけど立場としてはあまり強くない、、親父はリーチェが公爵家
に嫁いだ事で勢力が弱まったとか言われて叩かれるのを一番嫌がってたからな」
ベスお兄様の続けられた言葉に驚く
お兄様は知っていたんだ、、いや、きっと私以外はみんな知ってたのだろう
ベスお兄様に視線で促されルカ様はさらに続ける
「メアリアン、、彼女と知り合ったのはリーチェと婚約してすぐの事だった、今となってはこれも全て仕組んでいたのだろうが、、彼女はいつも君の横にいた
食事を取る時も、会場に入る時も、、だから俺は彼女からリーチェの親友だと言われた時なんの疑いもなく受け入れてしまった」
「・・・え?」
そうなの?全然気が付かなかった
夜会ではとにかく食事の事しか考えてなかったから、、そもそも周りなんて見てなかった
「そもそも、俺に名乗るときはメアリと言っていた、メアリアンというのはリーチェとつけた愛称みたいなものだと、、彼女も君を変わった呼び名で呼んでいた」
「リーチェ以外のほとんどの令嬢にメアリと呼ぶように徹底していたらしい」
横からの兄の補足に驚く
私以外みんなメアリって呼んでたという事、、?
そんな事すら気付がないとは、、改めてどれだけ友達いないのよ私、、
「ある日、リーチェとのお茶会の後の時間、王子と婚約するためのレッスンに付き合って欲しいと懇願された
リーチェにも許可を取ってあるし、彼女は自分が王子の婚約者になれる様にと、応援してくれていると言われた・・
リーチェから俺に頼めば間違いないと提案されたと、、
よく、確認すれば良かった、そんな嘘に騙されて、、開かれていたんだな、俺は
・・・社交界で俺と彼女が噂されているのは何処となく気が付いていたがリーチェからのお願いで手伝っているという自負があったから気にも留めていなかった」
思わず黙り込む私にルカ様は少し悩んだ後また口を開いた
「おかしいと気が付いたのはつい最近だ
リーチェと衣類を見た時、こだわりが無いと聞いて違和感を感じた
リーチェは流行に敏感で服を仕立てるのが大好きだから、自由に服を着させてあげるべきだとメアリアンに言われた
俺の趣味を押し付けるべきではないと、、リーチェからは言いづらい内容だからと代わりに伝えてくれた彼女に俺は愚かにも感謝すらしていた」
なんて用意周到なのだろう
ドレスも贈られない婚約者というのを完璧に作り上げたのは彼女だったのか、、もっと他の事にその熱意を費やせば良かったのに
「俺達はこの婚約について一切関与しないように親父に言われててさ、まさかこんな横槍が入ってるとは思わなかった、、
というか、ドレスの色ちゃんと合ってなかったか?
セットまでとはいかなくても、、俺が知る限りだと系統は合ってたはずなんだけど、、?」
お兄様の言葉にルカ様はフフンと鼻を鳴らす
「簡素なものを全色作ってあるからな、、ブティックを片っ端から当たって行って、リーチェの注文したドレスが分かり次第間に合う範囲で同系色の物を近いデザインに作り上げる、、
生産ラインは完璧に組んである」
何を得意げに話しているのだろう
御用達ブティックがなくて申し訳ない限りだ、、毎度何かのついでに手頃な店で注文していた為見つけるのは大変だっただろう
「今回の南部取引の締結で無事条件を達成、、その記念に贈られたのがあの貿易船だったんだよ
まさかあんな事になるなんて」
花祭りの事を苦々しい表情で話すお兄様
我が家が船を贈ったのはお父様の条件をルカ様が達成したからだったのか、、