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「はぁ、、だから本気で言っているのか?」


思いがけない怒りを含んだ声色に少し驚いて顔を上げると不機嫌そうにラインは顔を顰めていた


「何度でも言わせてもらうけど、、

リーチェ、君は性格は可愛らしいし俺が見た誰よりも美しいよ

兄達が過保護?違う、そうしないと変な虫がたくさん寄ってくるんだよ

ちゃんと自覚するべきだ」


かけられた事のない言葉達に頭がついてこない

ポカンとしている私を置いてけぼりにしてラインは続ける


「ドレイク隊長の頼みだから断れない?

うちの隊に何人リーチェを一目見たいが為に入隊した奴がいると思ってるんだよ、ドレイク隊長は騎士団の中でも一二を争う厳しさなんだぞ?

リーチェがいなかったら志願者ゼロでもおかしくないね」


ふんっと息つくラインに私はクスリと笑う

元気付けてくれたことが分かりなんだか泣きたい気分になる

思いの外、婚約破棄がメンタルにきていたようだ


「・・・はぁ、相当思い詰めてるみたいだな」


ラインはそっとハンカチを差し出すと少し思い悩んだ末にふぅと息を吐き口を開く


「俺は使用人見習いしてる時からずっとリーチェが好きだったんだ、、だから、例え本人でもリーチェのことを卑下するのは許せないな」


びっくりして思わず息を呑む

そんなそぶり、あっただろうか?

目をまんまるくしたまま見つめるとラインはガシガシと頭を掻く


「あーあ、もっと良い感じになったら言おうと思ってたのに」


逸らされた顔が真っ赤なのが分かりこちらまでみるみる赤くなる


「・・・うそ、だってそんな、、」


すこしテンパる私にラインは追い打ちをかけるように言葉を続ける


「ふっ、、気付いて無かったのか?

・・・リーチェに会いたくて休憩時間、調整してたんだよ、使用人見習いの立場で抜け出すなんてできる訳ないだろ」


「・・使用人じゃなくて護衛がしたいから抜け出してるって、、いつも、、」


あまりの恥ずかしさにどんどん言葉も尻すぼみになってしまう

どこを見たら良いか分からずソワソワしていると向かいから手が伸びてきてぎゅっと手を握られる

びっくりしてラインを見るとすごく真剣な瞳でこちらをみていた


「俺は、ずっと言いたかったよ、、身分違いで言えなかったけど、多分みんな気付いてた、、俺がリーチェを好きで好きで堪らないって」


あまりに甘いセリフに沸騰寸前になる私だったがふとラインは切ない表情を浮かべスッと手を離す


「・・・本当は、このまま、、リーチェを口説き落としたいけど、俺はリーチェがずっと公爵家にふさわしくなれるように努力していた事を知ってる

誰よりも、リーチェを見てきたから、、」


一度強く拳を握った後私を見つめるとラインはいつものように優しい笑顔を浮かべる


「ちゃんと、話し合うべきだ、、きっと何か食い違いがある・・・リーチェは知らないかもしれないけど、あの公爵様は、リーチェに間違いなくゾッコンだからな、俺が保証する」


「そんな、、何を言っているのか分からないわ、、」


公爵様が私にゾッコン?

あんなに長い間愛人がいて、冷遇され続けていたのに??


「ちゃんと向き合ってこい、リーチェ、、そんなわだかまりしか残ってません、って状態じゃ

口説きたくても口説けないだろ?」


悪戯っぽく笑うラインに私はぎゅっと胸が締め付けられる

そうだ、ちゃんと話し合わないと

前に進むためにも、、こんな状態じゃいつまでも前に進めない


「俺は、、ずっと、、7年間もリーチェが好きだったんだあと少しくらい待てるさ」


フッと笑うラインに私はひらはらと涙が頬を流れるのが分かった


「ありがとう、、ありがとうライン」


彼が、心から私を好きでいてくれていることが伝わる

私も少しは自信を持っても良いだろうか?

こんなに素敵な男性が好きでいてくれているなんて、、

なんだか背中を押されている気分だ


今すぐ、ルカ様に会いに行きたい気分だ

思わず立ち上がる私を促すようにラインは気にせず行っていいと笑う


「あのね、ライン

私の足、本当はもう治ってるの

婚約破棄の言い訳に使うだけで、、内緒にしてねっ」


思わず駆け出しながらそう言うとラインはおかしそうに笑う


「お転婆お嬢様、転ばないようになー」


見送ってくれるラインを尻目に私は馬車へと駆け出した

外は気がつけば茜色に染まり夕刻なのが分かる

いきなり行って、会えるかなんて分からないが、、勢いそのままに思いの丈をぶつけてこようと思う



ーーーー


1人残されたラインはぼんやりとリーチェがいた場所を眺める


「馬鹿だなぁ、せっかくなチャンスだぞ?」


誰に聞かれるでもなく消える言葉に一人笑う


「でも俺は、何にでも一生懸命なお嬢様が好きだから、、仕方ないか、、」


7年間、、ずっとずっと好きだった

婚約者が意地悪だと怒りながらも見返してやると日々頑張る姿が、、、

たまに逃げ出しては頬を膨らませながら文句を言い、それでもまたすぐ立ち上がり努力する姿が、、、

何度、俺の背中を押しただろうか


本当は、成金な伯爵家にうまく入り込んで適当に盗みでも働いて逃げようと思っていた

そうして夜、忍び込んだ屋敷の中で、俺はリーチェに人生を変えられた

一人ランタンの灯りの中礼儀作法の復習をしている彼女にたまたま見つかって声をかけられた


「あら、、?眠れないの、、?

あっ!良いこと思いついた!少し手伝って欲しいの!」


そう言うと彼女はなぜか頭のてっぺんで髪を括りちょんまげのような一つ結びを作る


「先生がね、お辞儀をするときも歩くときも、、姿勢は真っ直ぐ、上から吊られていると思いなさいって言うの、、

私、吊られたことないから分からないわ!

だからハイ、ここ、髪の毛持って欲しいの!私を吊る感じで!」


なんかとんでもないのに見つかってしまったと思いながら一晩中付き合う羽目になった


「何だか分かった気がするわ!明日もお願い!!」


すっかり目的の達成を邪魔されてしまった俺はそこから毎晩拘束される羽目になる


そんなある日何をそんなに努力しているのかと尋ねると彼女はフンッと腕を組む


「みんな成金、成金って馬鹿にするのよ?

何が悪いの?お父様はとっても努力しているのよ

だから私も誰にも馬鹿にされないように頑張るの!

もともと平民だからって何よ!今に見てなさい、、絶対に見返してやるんだから!」


そう言って俺を見る


「私、知っているのよ!

貴方も努力してそのうち見返してやるって頑張ってるんでしょう?

平民から騎士になるのは本当に大変だって聞いたもの!

私たち、、同じ目標を持ってる、、仲間ね!!」


騎士になりたいなんて一言も言った事はなかったが、

リーチェに握られた手が暖かかった

真っ直ぐ見つめられた瞳がキラキラと輝いてあまりにも真っ直ぐだった

何だかその事に自然と涙が溢れてきて止まらなくなった


「あら、、一人で頑張るのは辛いものね、、大丈夫よ、私たちなら一緒にやっていけるわ!」


見当違いなことを言いながら俺の背中をさすってくれる少女にさらに涙が止まらなくなった


その瞬間から俺の夢は騎士になる事になった


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