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「お嬢様、横にならなくて大丈夫ですか?」


「大丈夫よ、ナナ。足首以外はもう完治って言っても良いわ!」


ちゃんと馬車に座って移動しているせいかナナはしきりに心配してくる

今日は午後からルカ様とケーキショップで待ち合わせをしているが11時には都に付きナナとショッピング予定だ


鞄の中に入れたルカ様に渡された大量の手紙の中から次の予定である花祭りへの参加の返事を書いた手紙をチラリと確認する


花祭りは白いワンピースに刺繍でできた花をあしらった格好が正装だ。

すっかり忘れていたがデビュタント以降の女性は自身でワンピースに刺繍を施す。

婚約者がいる人は相手をイメージさせる花の刺繍を、婚約前の女性は色とりどりの花の刺繍をする

刺繍の腕で教養ある女性だという事を示すのだ


ナナはその刺繍用の糸を買いに来たそうだ


「こんなタイミングからで間に合うの?」


私は去年と同じものを着る気満々なので何もしていないのだが、、、


「もう大分完成しているのですが、なんだか物足りない気がして、、、もっと色とりどりにしようかなと!

お嬢様にも一緒に選んでもらいたくて」


ナナは私が寝ている間、ベッド横で刺繍をし続けていたらしい。

起きていなくてもきっと花祭りの日だけは休暇をとったんだろうなぁ、、なんて思う


「お嬢様も、その、、最近はルディカーティス様ととても良い雰囲気みたいですし、少し手を加えてみては?」


ナナに言われて確かにと思う、私の白いワンピースには黒い花の刺繍がたくさんしてあるのだが、上から青の糸で花の刺繍を重ねても良さそうだ

ちゃんと見た事がなかったから瞳も黒だと思っていた為青要素のないとてもシンプルな仕上がりなのだ


「最近は自身の色を入れる方も多いですし、水色と、銀の糸も追加しても良さそうですね」


そう微笑まれ私もなんだか花祭りの衣装をより良いものにしたくなってきた


「い、、今からで間に合うかしら?」


「ふふ、必要でしたらお手伝いしますよ?」


これは、明日から忙しくなりそうだ


到着したお店には色とりどりの刺繍糸が取り揃えてあり人も多く賑わっていた

来週末に控えた花祭りだが乙女達はあぁでもないこうでもないと直前まで悩み糸を買い足しているようだ


「お嬢様、ビーズなんかも一緒に縫い合わせるのも素敵ですよ!」


サンプルとして飾られている白いワンピースがあまりに素敵でついついビジューやら糸やらとたくさん買ってしまう

ナナも同じなようであれもこれもと追加している


「お嬢様、これも素敵です!」


「見てナナ、このレースでお花を作っても素敵じゃないかしら?」


二人で相乗的にあれもこれもと増やしてしまい気がつけば袋いっぱいに買い付けてしまった


「これは、、明日から大忙しですね」


お互い苦笑いをするように微笑み合うと一旦馬車に荷物を積み込む

気がつけば待ち合わの1時間前になっていた


「流石にこんなに早くてはケーキショップには入れないかしら?」


ナナも店名を見た時に行きたがっていたし、ルカ様が来るまで入れないだろうか、ケーキ一つくらいならフライングして食べてしまっても何食わぬ顔でルカ様と2個目のケーキを食べられる自信がある

ようやく辿り着いたケーキショップに入るや否やナナは私の方に振り返る


「やっぱり、大丈夫ですお嬢様、別のお店にしましょう」


「あらどうして?来てみたかったんでしょ?」


「でもあの、、御迷惑かもしれませんし、、」


モゴモゴと言い訳をしながらジリジリと私を押し店を後にしようとする


「いいわ、私が聞いてあげるわね!」


意外とシャイなんだからとナナの通せんぼを掻い潜って店の中に入り店員さんに声をかけようとした時、ナナがどうして私を入れないようにしたのか分かった


店の奥に見えてしまったのだ

ルカ様と、ルカ様に抱きついているメアリアン様の姿が


会話こそ聞こえないがケーキショップでの熱烈な二人の姿に周りは少しどよめき注目を集めていた


「お、、お嬢様、、」


ナナが私の横であたふたとしているのが分かる

ずっと、ずっと前から分かっていた事じゃないか

何を浮かれていたんだろう、、、

ほんの数日優しくしてもらっただけで勘違いするなんて、私はどれだけ愛に飢えていたんだろうか

彼には愛する人がいる、それはもう何年も変わらない事実だというのに


「お客さま、、?」


ケーキショップの店員が固まる私に声をかける

私はレジ横に用意してあったペンを取ると鞄の中から手紙を取り出し是非一緒にと書いた内容に横線を引く


愛するメアリアン様とお楽しみになって下さい


今私に出来る最大限の強がりだ

貴方に気なんか無いと、私は気にしてなんか無いと意地を張らないと気が保てない

どうせ当日は彼色のワンピースを着なくてはならない、婚約者な事に変わりは無いから

いっその事、今すぐ婚約破棄してくれたら良いのに

そうしたら私もナナとお揃いの色とりどりの刺繍をしたワンピースを着て彼女と手をとって花祭りに参加するのに


「すみません、あそこで抱き合っている男女の、、男性の方にこの手紙を渡してもらえますか?」


にこりと微笑み店員に渡すと彼は戸惑ったように受け取る


「ベアトリーチェからだと言えば伝わるはずですから」


そうとだけ言い残しナナの手をとって店を後にする


私との約束が妙に遅くなったのはメアリアン様との予定が入ったからだったのね、、

今まで、私の後に予定を入れられていたメアリアン様はどういう気持ちだったのだろう

後の予定を気にしなくて良いから自分の方が優遇されていると喜ぶ?

結局は婚約者の後にしか会えないという事実に蔑ろにされていると傷つく?

前にナナとそんな雑談をした気がする

今答えが分かった気がする

私だったら御免だわ、、他に女性の影がチラつく人なんて

だから彼女は強硬手段に出たのだろう

私さえいなければと、、


私も彼からの愛を確信していて、愛してもいない婚約者が彼にいたら彼女のようになっていたのだろうか?

 



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