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「ど、、どうかしら?」


視察の同行は兄達とよく行っているが、今回は妙に緊張してしまう

ソワソワと鏡の前で回る私にナナは機械のようにオニアイデスと繰り返す


「もぅ、、真面目にやってよ!」


憤る私にナナはジッと私を見つめ口を開いた


「私は、、リーチェお嬢様がまた傷付いてしまうのでは無いかと心配なのです」


「・・・ナナ」


ナナの心配も当然だ

特にナナの場合、長年私とルカ様の茶会に同席している為、冷遇されていた日々を知っている

メアリアン様との逢瀬も何度も一緒に見かけている


「なぜ今になってお嬢様に関心があるように振る舞うのでしょう?

足のことで同情なさっているから?それともメアリアン様と破局でもしたとか?」


その言葉に私も思わず手を打つ

破局!そうか、そういう可能性もあるのか

考えもしなかった

いや、でもメアリアン様は相当未練がある感じだった

もしやルカ様、、他にお好きな方が?


そこまで思考を飛ばした所でコンコンっと扉がノックされる


「ルディカーティス様がいらっしゃいました」


執事の言葉に私は新たな恋人の存在という雑念を必死に振り払いながら返事をした


ーー

ーーー


ルカ様は約束通り沢山の手紙を用意してきた

貴族社会では口約束、というものはあまり無く基本何か予定を立てる時は内容、場所、日時など必要情報が書かれた手紙を用意する

同じ内容を自分用、相手用と二通用意し、合意を得られれば返事入りのものが一通返ってくる仕組みだ。

それをカレンダーに貼り付けて管理する

ちなみに手紙を入れられるポケット付きカレンダーなんかも売っている

実は我が家で扱っている大ヒット商品でもある


昨日ポソポソと言っていたやつだけでは無い、他にもたくさんの予定が書かれた手紙を渡されて驚いてしまう


「その、リーチェとしたい事が色々あって、、ただ、他にもしたい事があれば内容を書き換えて送り返してくれ」


いつも通りの感情の無い声色だったが内容が合っておらず思わず笑ってしまう


「こんなに沢山、、後悔しても知りませんよ?」


「なぜだ?」


「私はとっても暇ですから全部喜んでと返答してしまうかも知れませんから、、後からあまりの忙しさにやっぱり無しと言ってもダメですよ?」


悪戯っぽく笑うとルカ様は少し驚いたように瞬きフッと笑う


「全部受けてくれるのか・・・楽しみだ」


思っていた反応と違い面食らってしまった


「え、、えぇ、、覚悟なさって下さい、」


顔に熱が集まるのを感じながらよく分からない返事をしてしまった

私はとりあえず一番近い来週の予定の返事だけ書いてルカ様に渡す

残りは内容も見た上で返して欲しいと言われた為、地道に返していこうと思う


ディオーラル領はとにかく交易が盛んで、たくさんの問屋が軒を連ねている

沢山のお金が日々動くのもありそこらの平民以上に豊かで生活水準が高い

視察の為、華美な服装は控えシンプルな装いをすればそれだけで街に溶け込めてしまえるほどだ


また、ディオーラル領は流行の手前を行く

今出回っているものには都で大流行する物もあれば誰からも見向きもされない物もある

先見の明さえあれば誰だって一攫千金の町、、それが活気に繋がっている

問屋に商品を卸す行商、買い付ける商人達

独特なこの雰囲気が私は大好きだ


「既にご存知かとは思いますが、都のものの動きや金額に合わせて関税をかけています。

逆に、今後文化発展が見込めそうな品なのに高価なものに関しては単価を安くする為一部料金を負担したりしているんですよ」


領に入る時は特に何もかからないが出る時は事前に関税を納めた証明書類が必要になる

商売目的では無い買い物の場合別途個人利用証明書というものが出される


「その、どうして視察に?」


聞いても良いのかな、、?

まぁ、ルカ様ならダメだったらキッパリ断ってきそうだし大丈夫か


「招待の手紙も渡したが、南国の行商との取引をする予定で、、交易が盛んなディオーラルでの取扱状況や価格設定を見にきた」


「そう、、なんですね?」


わざわざ視察に来なくても兄に言えば書類一式くれそうな内容だ、、自分で見てみたいとかなのかな??


「リーチェはどういうのが好みなんだ?」


ブティックが立ち並ぶエリアでルカ様が足を止める


「うーん、それがよく分からなくて、、どれも可愛いし素敵で、、選べないんです

それに私はあまりセンスがなくて、、都でどの型が流行るかも分からないから迂闊に手が出せず苦労していて、、いつもナナ、、メイドに任せっきりなんです

ルカ様のセンスはとても素敵だったので、ルカ様に見てもらった方が間違いなさそうです」


にこりと微笑みかけるとルカ様は考え込む


「ドレスを贈られるのは迷惑では無い、と言うことか?」


「え?はいもちろん、迷惑だなんて、、そんな、思う訳無いですし、、先日のドレスもありがとうございます

とっても素敵だったから、生誕祭にも着ていこうかな」


「・・・」


何やらまた考え込むルカ様に私は少し不安になる

生誕祭に着ていくのはダメだったのかな、、メアリアン様と合わせて衣装を用意しようと思っていたなら確かに、ルカ様色のドレスはまずそうだ


「ぁ、、えっと、私、お菓子とかの方が詳しいんですよっ」


慌てて話題を変えようと声を上げると方向転換する

今は杖をついて歩いていたのだが慌ててついてしまったせいか溝にはまり前のめりに倒れそうになる


「・・・気をつけろ」


ルカ様に抱き止められ顔に熱が集まる


「ありがとう、、ございます」


「あぁ」


そのまま支えるように腰を抱いて歩き出され私はあまりの密着にとにかく顔が赤くなり息が詰まる

チラリと伺い見るとルカ様は本当に平然としていて照れている自分がバカらしくなってしまう


「無理をさせたな、カフェにでも入ろう」


「・・・はぃ」


今朝ナナに言われた言葉がなんとなく頭をよぎったがそれでも鼓動が速くなるのを抑えることはできなかった


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