北海道農獣医大学院
北海道農獣医大学院
千歳に降り立つとすぐに電車に乗り札幌へ、そして本日の宿泊予定である北海道農獣医大学院(旧北海道大学)の学生寮であるクラーク寮へと札幌駅からAIバスに乗り込む。
それから数十分で到着すると学生らが出迎えていた。
「ようこそ北大へ」
「こんにちは~」
「ようこそ~」
生徒はそれぞれに挨拶をする、北大の学生は現在1割方が旧ロシア系の移民が占めている。
200年前の第三次ウィルス戦争で東和皇国は北からの難民を受け入れた、過去何度も領土の返還を求めたが結局かなわず現在北方領土は独立し北方諸島連合国と名乗っている。
旧ロシアがウィルス戦で崩壊し見放された僻地の人たちは東和皇国に助けを求めた、その間に旧ロシアはEUと統合したため、合意の上で双方が出資し独立国家を作ることにしたのだ。
このときロシアは4つ以上に分裂した、そうした結果EU+Rの加盟国として2つの旧ロシア系の国が条約を結び、他の1つ樺太共和国がEU+R(ヨーロッパロシア共同体)とは袂を分かつことになった。
皮肉な話だ過去に戦争のどさくさにまぎれて奪った土地は結局手放すどころか又東和皇国の傘下に入ることになったのだから。
そういう経緯を経て今は北海道には北の同盟国からたくさんの労働者や学生が訪れている。
すでに東和皇国に帰化しているロシア系難民も多い。
「さあどうぞ、中にお入りください」
クラーク寮は東大の寮より高さで劣るが広さは倍以上あった、中に入ると暖かくこの時期でも外はまだ寒い為暖房は欠かせないらしく温水ヒーターのパイプが部屋を囲うように廻らされていた。
あてがわれた部屋は15部屋、全て4人~6人用の部屋でベッドは付いているが机は一部屋に2つしか用意されていなかった。
まあ今の時代机もあまり使うことが無いのだけどね。
「こちらが皆さんに用意したお部屋になります、少し備品が少ないのですがご了承ください」
「北大では今でもウィルスによる影響を受けています、昔よりはましになりましたが。現状ではこれが精一杯なのです」
説明してくれたのはクリーム色の髪に薄茶の瞳を持つ美しい女性だった、流暢な日本語を話すのでここが東和皇国なのか少しわからなくなってくる。
彼女の名はアリョーシャ・ラトビスク医学部の学生、北大の2年生らしい。
もう一人の学生はアレクセイ・プーチンという農学部の学生だ。
あてがわれた部屋に入るとすぐにタブPCで現在知りうる北海道の状況を把握する。
気功術師御用達の連絡サイトの情報では華連邦や旧ロシア系の工作員による事件は今のところなさそうだ。
同室になったほかの生徒ともそれぞれに挨拶を交わす
「アスラ・ミスイでよろしく」
「俺はケンジ・サイトウ」
「僕はヒロキ・トウジョウよろしくね」
「マーティン・ゴールドマンだよろしくな」
「ルドラ・マハーティでーす」
とりあえず今日はこれ以上することが無い、講義は明日から北大の講堂で行われる。
昼食は来る途中札幌で摂ったのでおなかも空いていない、必要なのは数日間ここで暮らすための情報、何があって何が無いかを知っておく必要がる。
当然のことながらこのクラーク寮には一応学生組合系の売店がありそこでたいていのものは手に入るらしい。
アスラはタブPCを手に部屋を出てこの寮とそしてキャンパスを見学しようと思った。
「アスラ君も見学にいくのかい、それなら僕も付き合うよ」
「じゃあ一緒に見て回ろう」
アスラが立ち上がり部屋から出るとヒロキが後を付いてきた。
彼も今年1年になった、気功物理学を学ぶ生徒の一人、
2人で外に出ると寮の周りにはキャンパスというより広々とした倉庫街というような感覚にとらわれた。
何故そう思ったのか?建物と建物の間がかなり広く開いていて中にはレンガ作りの古い建物もあるからだった。
その間を歩いていくと、遠くには農場が広がり牛舎の香りが漂う。
決してよい香りとはいえないがこの地を踏みしめるなら、牛と馬は必ず会うことになるだろう。
北大農学部は現在羊の研究が有名になっている、ジンギスカンは料理としても有名だが。
品種改良や大型化などは北大の研究の中でも大きな課題となっている。
今回この地に来たのは他の分野の研究を自分たちが持つ研究課題と結びつけ新しい発想を得るためのきっかけを作るためでもある。
現在各大学院では盛んに交換授業を行っている。
最低年に3回は他分野の授業を受講してその論文を提出することになっている。
キャンパス内を2人で歩いていると、先ほど案内してくれたアリョーシャが2人に声を掛けてきた。
「どうですか広いでしょう、良かったら案内しましょうか?」
「それはありがたい、でもいいのですか?他にすることがあるのでは?」
「この時期は農学部は忙しいのですが医学部は少し余裕がありますので、結構暇なのですよ」
「そうですか・・」
「アリョーシャさんって難民なのですか?」
ヒロキが聞きにくいことをダイレクトに質問した。
「おい失礼じゃないのか?」
「良いのです、北海道にいるロシア系の人たちはほとんど難民です、私もそうですが今は帰化しています。すでに10万人以上の難民が東和皇国の恩恵によりこの地に移住しています」
「そうなんですか・・」
「私が北海道に来たのは4歳のときなので、あまり自分をロシア人とは思っていません、むしろ東和皇国人と思っています」
「両親は農業に従事していますので昔よりずっと暮らしは楽だといっていました、それに学生が全員衣食住が無料なのはこの国最大の魅力です」
この時代ここまで子供が優遇されているのはこの国とUAFC(アメリカ共同体)の一部だけだ、UAFCも南にいくと国はまだまだ安定していない。
「それより僕が聞きたいのは、アリョーシャは彼氏はいないの?」
「おい~ヒロキ露骨過ぎるだろう!」
「私には今やらなければならないことがあります、いくら暮らしが良くなっても苦しんでいる人がいなくなるわけでは有りません。私が医学を志したのもそういう経緯からです、自分だけ幸せに成ろうとは思いません、というのは建前ですけどね。立候補なさいますか?」
アリョーシャはにこりと微笑むと、少し首をかしげた。
「え・え・まじで立候補していいの?」
「よろしいですよ、でもあなたで123人目なのでそれでもよろしければ」
「ご愁傷様」
アスラはヒロキにそう声を掛ける。
まあ当然だよね、ロシア系の学生はどう思っているのか解らないが東和皇国系の学生から見れば、憧れの金髪美女だからね。
玉砕覚悟で立候補する人はたくさんいるだろう、俺はミサや母を見ているから今のところはアタックする気は起こらないが、交換授業中に何人がとりこになるだろう。
「あなたは立候補しないのですか?」
「おれ?俺は一応彼女いるからね」
「え~アスラ君彼女いたの?」
「ヒロキ~周りの男が皆自分と同じだと思わない方が良いぞ」
「ふふふ、あなたたち面白いわね」
「でも楽しいのは大好きよ、私はもっと知りたい色々な事を、だから会話は一番のインテリジェンスな行為だと思うわ」
彼女がモテるのは外見だけではなさそうだ、才色兼備もここまで極めるとその先が見たくなるのは人の業かも知れない、そこに自分が参加するのは遠慮しておきたいが。
(ミサに殺される)
面倒ごとが絶えない生活を送るには自分はまだ若すぎる、隣のヒロキはウェルカムのようだけどね。




