恋話より魔法
恋話より魔法
アスラの部屋へ行くとそこは新しい主を向かえるべく、私物のまったく無い部屋だった。
「わー分かっていたけど、何も無いわね」
「まあ仕方ないよ、今日はじめてここに来たんだし」
アスラは持ってきたデイバックをテーブルの上に置き添えつけのソファに座るとやわらかさを確かめる。
寮の部屋は全て基本的な家具は備わっている、一人用のベッドと来客用のソファベッドそしてテーブル。
勉強用の机と椅子はどの部屋にも添えつけてあり、身一つで入寮しても何の問題も無い。
彼ら学生は国のお金で学費も生活費もまかなわれるため、家具類は最初からあったほうが国としては安上がりなのだ。
昔と少し違うのはPCやモニターは学校の教室へ行かない限り個人の部屋では見なくなったことだろう、VRとBIWを導入しているためモニター無しでもTV放送や映画を見ることができる。
タブレットだけはこの時代にも残っている、いくら自分の脳みそで全て完結できようとも、完璧とは言えずどうしても自前のデータだけでは計算しきれない事柄もあるからだ。
それに他の形式で動いている通信機器との仲介役も担ってくれる。
アスラはタブレットから寮のインフォメーションを呼び出し、来客用の布団を借りる手配をする。
「本当だ、すぐに布団が来るよ」
「ね・言ったとおりでしょ」
そういいながらソファにすわり一人だけ缶ビールを煽っている。
「お母さんって元ミス東和皇国だったんですね」
「元ミス東京帝都大学院でもあるのよ~、ミサちゃんもどうせなら目指しちゃいなさい」
「え~いけますかね~条件はなにかはあるんですか?」
「特に無いわよ、きれいでおしとやかで気さくで頭がよければ誰でもなれるわ」
「それは誰でもじゃないでしょ」
アスラが突っ込みを入れる。
「あたしは自分が普通だと思っているからね」
「母さんが普通だと思えるのはそうやって酔っている時だけかもね」
「そう?今普通?」
「そういえばうちのママはアルコール飲んでいるところ見たこと無いわ」
「ミサちゃんののママはまじめそうね~」
「そうでもないですよ、うちのママはUAFC(アメリカ大陸共同体)出身だし」
ミサのママは東和皇国に籍を移し現在はTV番組のベテランアナウンサーをしている、昔は雑誌のモデルをしていたこともある、かなり有名な女性だ。
いまだに女子アナをできるということは外見はかなり若く見えるということ。
ミサを見ればそれはおのずとわかることだが、明日は大学の入学式にミサの両親も来ると言っていた。
「ところで母さん、おじいちゃんて本当に500歳を超えているんだよね?」
「そのはずよ、細かい歳は聞いたことが無いけど」
「ふ~んでもせいぜい50歳ぐらいにしか見えなかったよね」
「100年前ぐらいからあの風貌だという話よ、私がここに来るようになってからは全然変わってないわね」
「それって全部魔法なの?」
「あら、教えてもらわなかったの?」
「学校じゃ教えてもらわなかったよ」
「うんあたしも知らない」
「ええと・・・アスラは今何級?」
「こないだ例の戦闘後に計かったら8級になってた」
「うそ!なんでアスラだけそんなに上がるのよ。私なんかまだ7級よ」
「え~そんなの知らないよ、たぶん最初の戦闘ですぐ6級になって2回目の戦闘でさらにひとつ以上あげたんだと思う」
「ずるいな~一人だけ」
「別に抜け駆けしたわけじゃないよ」
ミサはそれでも少し膨れ顔でアスラを見ていたが、2人とも華連邦のインセクターと戦わなければ今の等級にはなっていなかったのも事実だ。
16歳と数ヶ月でこの等級は本当に早い成長といえる。
「8級!わが息子ながら立派になったわ~、それじゃあレクチャーしても大丈夫かな・・」
「何が?」
「8級になると協会支部で、ある魔法の存在を教えてもらえるのよ」
「それってあれだよね8級になれば気功力も高くなって魔法が使えるようになるから、いくつかの魔法が解禁になるって話。」
「そう別に気功術協会の支部じゃなきゃいけないって分けでもないけど、まあ便宜上できるだけ協会で教えるのよね」
「じゃあ母さんも教えてもらったの?」
「あたしはおじいちゃんから教わったわよ、だってそのほうが簡単だったし」
「そうか大学在学中に教えてもらったのね」
「そうそう」
「じゃあ母さんはその魔法を使ってるの?」
「うん使ってるわよ、ただしそんなに処っ中かけていい魔法じゃないのよ。使うためにはそれなりの魔法力(気効力)が必要だから」
そこからアスラはその若返りの魔法を教えてもらう。
「じゃあ唱えてみて」
「我英霊の力を借りて時の理りを解き明かし古き姿を巻き戻さん、生命回帰!」
アスラがそう唱えると体全体が若干淡く光りだす。
「じゃあ次の魔法ね」
「我精霊の力を呼び起こし生命の神秘を解き明かさん、我が身の永劫なる安定を願う、生体維持!」
そして最後の魔法。
「幾つ世の星の永きに魂の寄り代ありて光さす、我が魂に永遠の光を授からん、生命光化!」
全ての魔法がうまく行った様だが、アスラの体自体が変わることは無い。
ただ使われた魔力の多さにアスラはふらつく。
「ちょト・・ なんかすごい疲れた・・・」
「でしょあたしも最初気絶しそうになったわよ、この3つの魔法は魔力の総量が8級以上じゃないと無理なので。7級以下の人には教えないという形にしてあるみたいよ」
「ごめん少し横になる・・」
「大丈夫?」
アスラが立ち上がるとミサがそれを支えるように肩を貸す。
「もしかしてあたしやっちゃったかしら・・」
「いや母さんのせいじゃないよ、いずれこうなっていたはず、それに一人じゃなく誰かがいる時でよかったよ。」
「ごめんね、それと注意事項も教えておくね。この魔法は10年に一度ぐらい掛け直さないといけないって言ってた。それからもうひとつ、2回目からは2つの魔法でも良いみたいよ。生命回帰、は外見を若くする魔法なんだけど、外見をそれほど気にしないなら他の2つだけでかまわないと言ってたわ」
「わかったよありがとう、すっごく眠い」
ベッドに横になるアスラの頭をミサが優しくなでている。
(アスラ・・・かわいい)
部屋のチャイムが鳴る。
「ピンポーン」
「あ 私 出ます」
ミサがそういうと入り口ドアのモニターで外を確認する。
「お布団のデリバリーでーす」
「はいありがとうございます」
ドアを開けミサは挨拶をすると布団のセットを受け取る。
折りたたみのソファを伸ばし簡易ベッドを作るとそのうえにマットレスを敷く、そしてシーツをかぶせる。
枕と布団をおけば、簡易ベッドの完成だ。
その間にアスラは寝てしまったらしい、ミサがアスラの上に掛け布団をかける。
「寝ちゃたみたい」
「せっかく恋話でもしようかと思ってたのに残念だな~」
「じゃあ少ししましょうか、アスラが寝ているうちに」
アスラが寝込んでいるうちに美女2人はなにやらアスラの秘密を話し合う、彼が寝ているからこそ遠慮などしない、まあそれぞれが持ち寄る話の内容にはそれほどアスラにとって不都合な話などないのだけれどね。




