華連邦の一日閑話
華連邦の一日閑話
その日海岸沿いの建物の中では戦闘に参加する兵士の選定を行なっていた。
ここは東和皇国の新海市にある漁業組合があった建物。
町の侵略によりまんまとせしめた物件だが、この場所につめている兵士の数は10名に満たない。
五年前、海を渡り佐島(佐渡ヶ島)を接収し東和皇国本土へと駒を進め、沿岸地域の町を丸ごと手に入れることに成功したのだが…
いかんせん人数が少ない。
華連邦では蟲を使役して戦争を行なっている為、実際に兵士として参加しているのは兵士とはいえない者たちばかりで蟲の飼育者と言ったほうが良いのではないだろうか。
この時代科学は割りと発達しているが、華連邦側の技術はバイオテクノロジーや遺伝子工学に特化してしまい。軍事用の武器は他国より遅れてしまっている。
しかも東和皇国が気功術を取り入れているのに華連邦の兵士達は気功術の使い手はいないに等しい。
それは華連邦が過去にバイオハザードが起こった時、東和皇国からの人的支援を拒否したからに他ならない。
そのため兵士同士の戦闘では勝負にならなくなっていた。
接収した建物の中で華連邦の兵士達は明日の作戦を練っている。
「それで虫達の状況は?」
「はっ 現在蟻軍兵が10万・蜂軍兵が4万・甲角軍兵が5千・蟷螂軍兵が7千・芋虫軍兵乙が千・芋虫軍兵甲が五百・即時投入可能です」
「数は足りているな、ならば明日予定通り決行しよう」
「まずは様子見で1万の中規模攻撃で敵の出方を見てみよう、その夜に総攻撃をかける」
「まさか1日とおかずに攻めてくるとは思わないだろうからな」
「ではすぐに取り掛かります」
「ああ頼むぞ、うまくいけば明日はあの町を我々の指令基地に出来る」
華連邦の兵士は研究員を含め全部で100人に満たない、港には華連邦の船が10隻停泊しているが全て軍艦ではなく輸送船。
其の中には蟲ばかりが詰められていたが、すでに全て港を経由して町の空いている倉庫内におろされている。数日前に本国から届いた支援は蟻軍兵が2万・蜂軍兵が1万、現在蟲総数15万を越えてようやく作戦を実行に移せる数になったのだが、兵士の補充や武器の補充は殆ど無くなっている。
作戦司令室は現在3箇所20k内陸側にある廃棄町の建物内に1ヶ所、港に本部を置きそして北側の建物内に研究者用の指令所を設置してある。
蟲の司令塔である女王蟻や女王蜂は北の指令所から20kはなれた司令室へと運ばれる。
運び込むには車が必要だが町で見つけた車は殆ど使い物にならずやっと見つけた旧型のトラックが運ぶ為の道具として使われている、この車もすでに後数回の輸送でガソリンが無くなる、本国から手に入れようにも手立ては無い状態だ。
まあ今日全てが終わる、そうすれば車のことも解決するだろう。
蟲の移動は半日もあれば全部完了する、餌は道すがらの樹木や草や土などを与えるのでわざわざ本土から持ってくる必要もない。
蟲は非常に安上がりなのだ、但し扱いは慎重にしないといけない、過去にも暴走して仲間が食い殺されたりと言うこともあった、特に蟷螂軍兵の扱いは注意だ。
華連邦の戦術は基本的に現地調達が基本だ、そのため攻め込んだ町は出来るだけ壊さずに手に入れなければならない。
壊せば食料や水といった生命に直結する物資が手に入らなくなるからだ。
今日の作戦もそろそろこの地区の占領した物資が底を付いてきたからに他ならない。
しかもこの作戦を最後に東和皇国への侵略戦争を進めるのかそれとも止めるのかの瀬戸際に来ている。
本国からの命令では今度の作戦で町を占領できなければ、支援物資も兵員の補充も出来ないと通達が来ている。
そうなれば我々には撤退かそれともこの場所に骨をうずめるかの2択しかなくなる。
5年前のような50万を越す蟲の大群を投入する事はもう出来なくなっている。
本国の政治筋ではすでに和解の道筋まででき上がっていて、撤退する事を条件にかなり華連邦にとって有利な条件で支援の条約が進められることになりそうなのだ。
条約が決まれば撤退どころか、我々の姿形も残さずに命令どおり蟲の暴走と言う筋書きで事を済ますように工作しておかなければならないのだ。
できればこの戦闘を最後に本国で錦を飾りたいものだが、そんなに上手く行くものならばすでにこの戦いを制して、我々が内陸部まで駒を進めているはずだ。
現在もここに居られるのは過去の戦争責任を押し付けて、我々の正当性を嘘で固めているからにほかならない。
すでに戦争ではなく話し合いでかたが付く程度の話になっている。
どちらにしても数日が過ぎれば、本国では戦勝パレードを行い名前だけの戦争に勝ったという史述のみを残すことだろう。
われら軍部にとってはさほど変化はないと思われるが、上のほうはそれでもおいしくこの国から色んな援助を受け取れる。
そうすれば何年かは本国も少しは潤うことだろう。
核やウィルスでかなりの被害が起きているというのに、戦争行為でそれを穴埋めするのだから、我々も下手をすると口封じにどこか過酷な戦場へと送られるかもれない。
だが、もしもこの国に亡命などをしようものなら、本国にいる家族は生きていくことも出来なくなる。
そう、我々は死んだも同然なのだ、勝っても負けても帰る場所は無い。
残り少ない略奪物資からペットボトルを取り出しふたを開けると口をつけて二口飲む。
のどが渇いてしょうがない、町の形はそれほど崩れていないがライフラインは全て止まっている為、電気もガスも水道も使えない。
持ってきた旧○シア製サバイバルツールは役に立ったが、我々の仕事に本来必要なのは本国からの支援ただそれだけだ。
夏前のすがすがしい空を蟲の群れが南へと飛んでいく、これから明日にかけてが正念場。
それが終わればやっと5年と言う永い戦いに終わりが来るかもしれない。




