アイ・サオトメ閑話
アイ・サオトメ閑話
彼女は学長の孫だ、第三皇立学園へ通うことが決まったのはこの祖父のおかげかも知れない。
アイの父は軍属で埼玉県にある蕨駐屯地にいる現在の役職は第3方面防衛隊所属サオトメ中尉、アイには弟もいるがまだ幼く、祖父のガイは孫の成長を楽しみにしていた。
その甲斐あって孫娘が自分の勤める学園へ入学してきた。
勿論この祖父の裏からの働きかけがないとは言えないが、アイも勉強は勿論スポーツも優秀な成績をたたき出しており、祖父の力を借りずとも第三皇立学院へは確実に進学できたはず。
祖父から見ればアイは自慢の孫だった、だがあまりにも早い武術の成長によりある日12才ながら戦場に借り出されることになった。
「アイ おまえは出なくてもいいんだぞ」
「いやよ、もう私も戦えるわ、おじいちゃんそんなに心配しなくてだいじょうぶよ」
「本当にだいじょうぶなのか?」
「本当に本当!」
「じゃあ約束だぞ、怪我したらおまえの両親になんていえばいいかおじいちゃん大変なんだからな」
「もう おじいちゃん過保護すぎだよ」
「…なにかあったらすぐに言うんだぞ」
「はいはい」
この夜緊急警報が鳴り彼女はアスラの班へと加わる事になった。
彼女はかねてからアスラの事を見て、あこがれていた。
学院では定期的に武道やスポーツの試合を行なっていた。
特に武道は盛んで授業にもいくつか組み入れられている、学問はBIWで習得できるが武術、特に身を守る術はデータだけでは習得できない。
中等部へ上がり上級生の仲間入りをすると、周りの同級生と比べると4つ5つ違いの先輩が大人に見えてくる。
その中で一番輝いて見えたのが、アスラ・ミスイ先輩。
彼はなんとBIWを開発した科学者のお孫さんだという。
このデータは歴史の授業には出てこない、そうおじいちゃんから聞いたのだ。
しかも身長180センチ筋肉隆々(細マッチョ)、アイも彼に会いたくて側に行きたくて。
アスラの取っている武術の授業と同じものを選択している。
それは気功体術と気功剣術、どちらも昔、柔道と剣道として行なわれていたものだが、現在は気功術をとりいれ武道系の技術もかなり様変わりした。
単純にパワーと運動能力が上がっただけだが、それだけでも試合内容はかなり違ってくる。
一応ガードのために防具は付けるが、其の上に気功防御術を使いガードを底上げする為、ちょっとやそっとでは試合の決着が付かない。
最近は3発防御幕を破られた時点で勝敗が決まるようになった、勿論1発で内臓近くまでえぐられればそれでも決まるのだが。
基本的に気功術の等級が同じもの同士でなければ試合を行なわないようになっている。
其のぐらい等級一つで強さが変わるのだ。
アスラ先輩は中等部4年で6年の先輩と戦って全戦勝つという偉業を達成した。
同じ等級でも年が上ならば経験値が上になるはずが、そうではなく練習量とセンスが大事だということを教えてくれたのだ。
このときアイは小等部5年で、それほど武道に青春の重きを置いてはいなかった。
祖父は孫にも武道を経験して欲しかったが、孫のアイにはさすがの人間凶器も甘かった。
だが学院の性質上武道がどれだけ大切かはいうまでもない。
一度はまればさほど嫌いでもなかった武術が大好きに変るのもあっという間だった。
祖父としてはそれが不純な動機でも自分の進んだ道を孫も通るのだから、うれしくないはずはない。
アスラに対して微妙な感情はあるがそれも娘の為と思って静観している。
もちろん何か孫が悲しむようなことがあれば容赦なく、介入し粛清する事は言うまでもない。
じいちゃんの心を知らず、孫はどんどん先輩に心陶していくのだが・・・
「よし確認 リーダーは俺かな アイさんは今回戦闘参加は初めて?」
「ハイ 初めて参加しますアイ・サオトメですよろしくお願いします」
この日憧れの先輩の下、日ごろの成果を出し切ると意気込んで望んだはじめての戦闘。
まさかの事態になるなどとはこのときは知りもしなかった。
彼女の願いは何処まで叶うのか、それは神のみぞ知ることだ。




