戦争は本職へ
戦争は本職へ
ここからは防衛軍が仕切ることになるという、手柄を横取りされるようでなんとなく納得いかないが。今までの戦闘が防衛でこれから先は奪還。そう、敵が占領した町を取り戻す戦争を行わなければならない。
俺達は名目上は学生なので何日も授業をほっぽって人殺しに参加する訳にはいかない、と言われれば当然の事で。それならば最初から大人がやっておけば良いのにと思うが、なぜ初めから軍が仕切ってないのかと言うと、早い話が戦闘はここだけではなく日本海側全体で行われていたという事。
たまたまこの地区だけは戦闘経験豊富な学生がいたということで、訓練もかねて任されていたようだ。敵もそれを承知で進軍していた節がある、相手が子供だから楽に占領できるかも?なんて思っていたのかもしれないが、その考えも甘すぎだろうと思う。
と言うわけで戦闘をバトンタッチする代償というのも何だが、学生が知っていても問題がない程度は情報を分けてくれている。
俺達を納得させる為かも知れないが。
あと何年かすれば俺達ももしかしたら防衛軍に配属される可能性があるので、あまり我儘も言えない所だ。
この日の戦闘は結局7時間にも及んだ敵司令部は壊滅したが残るインセクターの残存兵を全て殲滅するために我々学生が後始末に追われたからだ。
この辺りも大人のずるいところだよな、確かに蟲が相手では面倒だと思うよ。
まああとで臨時収入が出ることは解っているのであまり文句も言えないところなんだけれどね。
俺たちは司令部が陥落した後も残存兵(虫)の討伐に追われた。
敵司令部にはインセクターの頭脳である女王蟻と女王蜂の無残な残骸も発見したが頭脳を失った働きアリが目的を失い市街地や森に潜伏すると彼らの体に含まれる遺伝子や化学物質、細菌などが残ってしまうので制圧後の残党狩りが残った仕事だ。
(バイオハザードは恐ろしいからね)
この時代の人体は2020年とは違い細菌やウィルスに対応するため遺伝子レベルで進化を遂げているが、土壌や植物はその限りではない。細菌戦争の後始末は厄介だと言える。
敵の残骸はドローンや化学機動車などAIを搭載したロボットが綺麗にしてくれるので殲滅までと思えばまだ気が楽かもしれない。
結局終わったのは朝日がしっかり昇った頃で全てを終えた学院の生徒たちはもうそれはゾンビのような姿だった、可哀そうにと誰でもそう思うだろういくら気功術でガードしてても土埃や敵に受けた傷痕、敵の体液が体中に付き、誰の顔を見ても同じように見えた。
町の数か所に設置された情報スピーカーから戦闘終了の放送が流れる。
【戦闘は終結しました、生徒は直ちに状態確認後防衛ラインにて検疫を受けてください】
「皆さんご苦労様です、怪我をした生徒は医療所へ必ず寄ってください、詳しく調べますから部屋へ戻るのはそれからになりまーす」
学園に戻ると3級以下の生徒が案内役としてかり出されていた。
「お疲れ様です、先生の指示に従ってください」
「先輩お疲れ様です」
幸いなことに俺たちの隊はアイが怪我した後、特に目立った怪我はなくミサは戦い足りないと俺が司令部を落とした後は残存兵の討伐へ走って行った。
(俺もあと20年早くこの世界に来れたらね付き合ってやれたかもね 溜息)
ちなみに俺は司令部を落とし自爆をうまく避けた後ほっとしたと同時に力が抜けたように腰を下ろした。
(急に60歳を感じたよ精神的に)
どちらにしても防衛線へ戻るまでインセクターを多少は刈らなければならず、捕虜の移送は後続の班に任せた。
掃討戦は最初よりは楽だったがそれでも皆うんざりしていた。
ようやく防御線まで戻るとメディカルチェックが待っていた。
紫外線のような抗ウィルスライトを浴びて、その後武器と武装一式を袋にまとめて消毒に出し男女分かれてシャワー室みたいな部屋へ入る。
生まれたままの姿になり薬品臭いシャワーを浴び紫外線ライトでウィルスの除去を行い、出口手前で添え付けのバスローブとタオルを受け取り軽く肩から羽織ると廊下の椅子に座った。
すると先ほど一緒に戦った3年生のミドルが声をかけてきた。
彼は金髪ブルーアイでヨーロッパ系の日本人だ。
「先輩の攻撃感動しました」目がハートだよ
「そうか」そっけなく返すと
「自分にも今度レッスンしてください」レッスン?
俺は結構頼まれると訓練に付き合ってやったりしていたらしい、物好きな奴もいたもんだ。
(おれじゃなくアスラがね)
「時間があったらな」
ここにいるとまた声かけられそうなので場所を移すことにした。
更衣室の出口から出ると今度はミサに呼び止められた。
「アスラ もう部屋に帰っちゃうの?」
ミサの心
(今のうちに少し確かめないと、不安でしょうがない聞きたいことが山ほどある、特に今回班にいた女子女子女子 もぅ)
「ミサ 今何時」
「朝の7時?」この子元気良すぎ
「そういうことだから、俺はこれから寝ます」
ミサの心
(え~待ってよ~その前に聞かなきゃ)
「アスラ まだだめ~こっち向いて私の目を見てくれる」
「なんだよ目にゴミでも入ったの?」
そう答えると。
「そうじゃなくって 今日の班の女の子たちの事よ」
「別に何もないよ、何か言われた?」
ミサはほっぺたを膨らませて、そっぽを向いて「もう知らない」と言うと女子寮の方へ歩いて行った。
(ごめんミサかんべんしてください、中身はおじさんなんです~)
俺は5階の共同風呂へ行くと素早くローブを脱ぎシャワーを浴びた、熱いお湯が頭から汚れ以外の何かを清めるかのように流れる。
シャンプーを手に取り薬臭い体を洗うと一人男子生徒が入ってきた。
「先輩失礼します」
「お おう」
その後はほとんど無言だったが、シャワーの音がやむと。
「先輩とミサ様の関係は恋人同士でよろしかったのでしょうか?」
おいおい又その話か…
「その通りと言いたいがどっちだと思う?」
「恋人同士それとも他人?」
「他人は無いだろ」
「お前 ミサの事好きなのか?」
物好きなものもいたものだ、格闘ジャンキーを好きになるとは。
まあカッコ良いしスタイル抜群だし美人だし、人の事は言えないがアスラの手前うかつに答えたらまずいだろう。
「あいつの隣に並ぶにはまず俺に勝たなきゃいけないかもな」
(わお 自分でも恥ずかしい言葉が出てしまった シャワーでごまかすしかない)
選ぶのはミサだがそれでも隣に座る幼馴染の美少女をはいどうぞと差し出すような軟弱者なわけでもないはず。
だがしかし今日だけで彼女との関係はおおよそ分かった気がする。
彼女はアスラが好きなのだと、多分アスラも。




