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ラヴ16 彼女の小さく大きい変化

「円斗君、起きて?」


 遠慮がちな揺さぶりを受け、誰かの声が聞こえた気がした俺は、まどろみの中意識を無理やり覚醒させる。


「・・・愛海瑠?」


「おはよう、円斗君♪」


「おはよう、愛海瑠。って、朝か!?」


「わっ!?びっくりした…どうかしたの?」


「すまん!俺、愛海瑠より先に起きて、起こしてやるつもりだったのに!」


「え?別にそんなことしてくれなくても良いよ?」


「でも、その…昨日はほら、起こすのは悪いと思って…」


「うん、その節はご迷惑をお掛けしました」


 結局、腕の中で寝てしまった愛海瑠をベッドに寝かせたんだけど、そのまま起きなかった。だから、早く起こしてシャワーの時間を作ってやろうと思ったわけだけども…


「いや、それは良いんだけども…ええと、シャワーの時間は…?」


「大丈夫だよ!お陰様でぐっすり眠れたせいか、早起きできたし♪疑うなら、嗅いでみる?」


 そう言って、腕を広げて待ち受ける愛海瑠さん。いや、飛び込めと言うのか?とても魅力的だが、魅力的過ぎる彼女のせいで常に理性と戦っている俺の勘が、いったらまずいと囁くのでしぶしぶ諦める事にした。


「とても魅力的な提案だけど、まあこの距離でも良い匂いがするから問題ないな」


 寝ぼけていた俺が、さっきの愛海瑠の言動で目が覚めたようだ。愛海瑠から、ボディソープだか、コンディショナーだか分からんけど、良い匂いがするのに気が付いた。


「遠慮しなくても良いのに…」


「愛海瑠、朝から誘惑するのは止めてくれ、俺の身が持たないから」


 間近でやれれると、両手を後ろに組んで下から覗き込んでくる姿勢って破壊力あるんだな。いや、きっと愛海瑠限定の破壊力なんだ!・・・という事にしておこう。


「円斗君には、返しきれないほどの迷惑をかけちゃったし、いつでも押し倒してくれて良いからね?」


「同じような事を言う事になるが、朝から刺激的発言は控えて下さい。嬉しいけど、本当に持たないので」


 俺がチキンじゃなかったらもうとっくに大惨事ですよ?愛海瑠さん、自覚なさすぎだと思います!あ、チキンじゃない!鶏肉だった?・・・意味が分からん、まだ寝ぼけているようだ…


「まあ、今日は円斗君の寝顔を見られたからそれで満足してるし、これくらいにしておこうかな?」


「俺の寝顔なんて見ても仕方ないだろ?」


「…朝起きた時、大好きな人が隣で寝てるってすっごく幸せだと実感出来ました。今日改めてね」


「まあ、それは分からないでもないけど」


「ううん、昨日までの私って、心のどこかで円斗君を逃がすまいとしてしまっていたと思うの。・・・私の円斗君と付き合うまでの話をしたよね?」


「ああ、許嫁の話か?」


「うん…。だから、意識しているつもりなかったけど、やっぱり円斗君がラストチャンスだと思って自分でも知らず知らずに、グイグイ攻めてしまっていたんだと思うの」


「・・・いや、今日も結構攻められている気がするんですが?」


「もう!円斗君、茶化さないの!」


「ええっ!?俺が悪いのか…?」


「そんな事ばかり言うとそのお口を塞いじゃうよ?」


「そう言うセリフって男が言うセリ…んぐっ!?」


 マジでキスで口を塞がれた!?本気だと思ってませんでしたぁ!?と、とりあえず、やられっぱなしもあれだからと抱きしめてみたけども…やばい!風呂上がりの良い匂いもあれだけど、相変わらず柔らかくて何と言うか…朝から理性が飛び回ってますぞ!くっ…


「俺の負けです…」


 そう言って、すぐに口を離した。理性がマジでもたん!朝から何やってんだ俺たちは・・・これから学校なのになぁ…


「・・・はぅ」


 って、えええ!?


「何で俺に寄りかかって来たんですか!?降参しましたよね!?」


「・・・実は、無理していたので腰が砕けちゃいました…えへへへ♪」


「腰が砕けちゃいましたって…何故に!?」


「円斗君が情熱的にキスしてくるからだよ!」


「それには意見を申し立てる!キスは愛海瑠からして来たよな!?」


「わ、私としては、すぐに円斗君が逃げて終わると思ってたんだもん!あ、あんなに抱きしめられて求められるとは思ってなくて…」


 見る見るうちに赤くなっていく愛海瑠さん。・・・あれ?マジで俺のせいっぽくない?


「いや…その…何かすまん」


「円斗君はいいの!むしろ、いつでも押し倒して良いとか言って置いて、この程度で腰砕けになる私がダメダメなんです…うぅ」


「何か可愛いから許します」


 そう言って、俺は愛海瑠が倒れないか心配になり、支えるように腰に手を回した。


「そ、そんな事されると余計に…はぅ」


 ポテンと俺の胸に顔を埋めてくる愛海瑠。え?何か逆効果だったのか!?


「あ、愛海瑠?」


「円斗君は悪くないよ?私が思った以上にポンコツだっただけ…うぅ、これからもっと迷惑かけるかもしれないけど…嫌いにならないでね?」


 そう言って、そうっとこちらの様子を窺うように見上げてくる愛海瑠さん。うん、可愛いのはもう十分分かってるから!ぜ、全然平気だし!


「まあ、俺って一度決めたら貫くタイプだから…むしろ、俺が離してくれないって言うようになるかもしれないぞ?」


「の、望むところだもん!」


 ポスンとまたも俺の胸に顔を戻す愛海瑠さん。うん、可愛すぎてもう…やばいな!!思わず、ぎゅっと抱きしめてしまった俺は悪くないはず!!


 その時、ふと何かを感じて部屋の入り口を見ると


「・・・」


「・・・母上、何をやっておられるのだ?」


「あら?気が付かれてしまったわね?」


「そんなに堂々と覗かれて気が付かれないとでも?」


 そう、何を隠そう我が母上様は、部屋の扉を少し開ける所か全開にしてこちらをみていらっしゃったのだ。


「覗いているつもりはなかったのよ?ただ、余りにも良い雰囲気だったから割り込めなかったの。円斗さん、やりますね?」


「そんなつもりはなかったんですけどね!?ええと、何用でございましょう?」


「忘れるところでした。愛海瑠さんが、円斗さんを呼びに行ったのに中々戻って来ないから様子を見に来たの。そうしたら」


「俺たちの余りのラヴラヴっぷりに声を掛けられなかったと…」


「そういうことです。と言うわけで、愛海瑠さんが折角頑張った料理が冷めてしまう前に下りて食べましょうね」


「「はい…」」


 おや?恥ずかしかったのか顔を埋めていた愛海瑠さんも、最後の返事だけは同時にしたようです。俺?もうね、恥ずかしい何て言ってられないんですよ!こういう時、男の意地って役に立つなぁ…






 その後の朝食時、母上に俺と愛海瑠の情事?を目撃された事により弄られました。しかも、何故か昔の自分たちの事を話し出したせいで父上も巻き添えに…すまん、父よ。


 そして、何だかんだあって現在通学中、愛海瑠の様子が何か少し変なのだが…


「どうかしたのか?何かこう…微妙に顔を逸らされていると言うか、会話が無いと言うか…」


「お、お気になさらずに!」


「愛海瑠が敬語キャラになってる!?どういうことだ!?」


「うぅ…もう少し時間を下さい…恥ずかしくて間近から円斗君の顔を見られない…」


「恥ずかしい!?愛海瑠の口からそんなセリフが出るとは…」


 いや、だって朝からあの攻めですよ?しかも現在…


「恥ずかしいなら、何故腕を組んでいるのでしょう?」


「えっと…全部説明するから…嫌いにならないでね?」


「何度も言うが、嫌いになる事はないと断言するから言って見なさい」


 何故か上から目線の俺。愛海瑠が珍しく逃げ腰だからって調子に乗ってるんじゃないのか?ごめんなさい、少しあるかもしれません…って、自分で何一人で自己反省しておるのだ…


 などと、俺が心の中でバカをやっている間に決心が出来たのか愛海瑠が話し出した。


「朝も言ったけど、昨日までは必死で平気だったことが、今日は何となく恥ずかしくなってしまっていて…」


「朝はあんなに攻めてきたのにか?」


「あれはその…昨日までと、いきなり態度が変わったら円斗君の気持ちが離れてしまうんじゃないかと思って…頑張りました」


 うわ、そんな必死に頑張りました的な感じで見上げられると抱きしめたくなるからやめてくれ!くっ…俺の方が結構毒されて積極的になってないか!?しかし、下手に今それをやると愛海瑠が不味いのか?むぅ…


「それで、腕を組んでいる理由はその…円斗君を信じているんだけど…だけど…やっぱり、この場所を誰かに取られたらと思うと…うぅ」


 馬鹿な!?恥ずかしそうにしならがも、必死に腕にしがみ付いている愛海瑠さんが可愛すぎる!?どうするこれ!?だ、抱きしめたいんですけど!無性に!!


「愛海瑠、衝撃的事実があるんだけど、いいかな?」


「な、何ですか?」


「実は…愛海瑠が恥ずかしがってると可愛すぎて俺の理性が飛びそうになることが判明した!つまり、そんな風に反応されると…我慢出来なくなって抱きしめてしまうかもしれない!と、先に言っておく!」


「え?えええっ!?えっと…う、嬉しいけど…い、いきなり抱きしめられると、今の私だとへにゃってなっちゃうかもしれないから、えっとその…ど、どうしたら良いの…?」


 やべぇ!戸惑いながらもこっちをちらちら見て、あたふたしている愛海瑠さんが可愛い。しかも、そんな状況でもぎゅぅっと俺の腕を離さないんだぜ?やばいです!!


「すまん、愛海瑠…しばらく抱き締めさせてくれ!!」


 言うが早いか、がばっと襲い掛かる…もとい、恋人を抱きしめる俺。犯罪じゃないぞ!犯罪じゃないよな?


 愛海瑠は、腕の中で少し硬直したが…気を取り直したのか、控えめに俺の腰に腕を回して来た。その、戸惑いながらも必至に応えてくれる姿勢に、またも慈しみを感じてしまった俺は、すぐに離れるつもりがさらに抱きしめる手に力を入れる始末。攻守が完全に逆転しているな、俺たち…


 昨日までの愛海瑠だったら、逆に俺が引いていたんだが、これってつまり…俺は、こういう控えめな方が好みって事か?いや、多分愛海瑠の気持ちに応えたいって気持ちが盛り上がり過ぎて、抑えていた部分が減ってしまったからかもしれん。


 って、言い訳てしてる場合じゃないな…いい加減に離してあげないと…そう思って、離そうとしたのだが、逆に愛海瑠が離れない…何故?


「愛海瑠…?」


「ごめんなさい、円斗君…もう無理…はぅぅ」


「ええええええ!?」


 愛海瑠が倒れそうになってしまったので急いで支えたけど、マジで身体に力が入ってない感じだぞ!?もしかして、俺のせい!そうですね!ごめんなさい!!


「思った以上に私はダメダメでした…円斗君に捨てられちゃう…」


「だから!それくらいで捨てたりとかしないから!しかし、どうしよう…」


「・・・良ければ、背負って運んで下さい」


「…確かに、この状況じゃ支えて歩くのも難しそうだけども…」


「・・・今の私なら、抵抗出来ないからこのままご休憩所に連れ込んでもらっても」


「よし!運ぶからちゃんと捕まれよ!!」


 俺は、愛海瑠の危険なセリフを深く考えてしまう前に愛海瑠を背負って登校することにした!だってさ、今の俺を俺自身が信じられないからな…マジで!


「なんだと…!?」


「円斗君?どうしたの?」


「な、何でもありませぬ!」


 全然何でもなくないけどね!?女性を背負って初めて分かったよ…胸が…胸が思い切り背中にぃ!?おい、意識するな俺!!そうだ、無になるんだ、無に!!


「円斗君…しっかり、お尻を支えてくれないと落ちちゃう…」


「は、はい!!」


 うああああああああ!?腕まで幸せな事に!?大丈夫だ!俺なら出来る!!・・・と言うか、愛海瑠の触れているところ全てが何か幸せになっとる!?胸に回される腕とか、首筋に当たる吐息とか、背中の幸せな感触とか、腕に感じる柔らかさとか…ぐおおおおおおおおお!?


「円斗君?早く行かないと遅刻しちゃうよ?」


「そ、そうだな!が、頑張る!!」


 俺はいろんな意味で気合を入れた!しかし、何かこのまま幸せな状況を維持したいと思っている俺がいるのか、歩みが遅い。最低だな俺!?


「・・・もしかして、重い…かな?」


 な!?女性に何て心配させているんだ!?ここは頑張らねばなるまい!!


「そんなことないぞ!しっかり捕まれよ!!」


 俺は無駄に猛ダッシュした!絶対に学校まで持たないだろうと言う速度で!そして





「待て、そこのバカップル。朝からどんなプレイをしているのだ?」


 と言う呼びかけによって俺の猛進は止まった。正直、倒れる前で良かったかもしれない。


「はぁはぁ…これはこれは、那々瑠さん。おはようございます」


「おはよう。で、何やってるの?」


「いや…何をと言われても…」


「何でそんな状況になったのか話しなさい」


「え?いや…特に理由は…」


「話せ」


「はい!」


 なぜこうも強い女性が多いのだろうか!?しかし、話すかどうかは愛海瑠に聞いてみないと…


「愛海瑠、話しても…愛海瑠?」


「・・・おんぶがこんなに円斗君と密着するなんて…考えてませんでした…きゅぅぅ」


「愛海瑠ぅ!?」


「・・・何だか良く分からないけど、学校に着いてからからじっくり聞かせて貰うから」


「はい…」


 そんなこんなで、学校まで頑張って愛海瑠を運ばせて頂きました。その間の幸せな感触は、俺の脳内メモリーに大切に保管させて頂きました。最低?何とでも言うが良い!






最後までお読み頂き、ありがとうございます。


久しぶりの円斗編でちょっと加減が難しかった、何がとは言いませんが。やっぱり、何も考えずに幸せ一杯の円斗を書くのが楽しいですね!(笑)


次話もよろしくお願いします。

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