裏ラヴ9 私の日常が変わった日 その9
セーフ…ですよね?
お風呂に向かう途中、私は考えていた。確かに、彼の様子からすると望んではいないのだろうけど…でも、嫌だとは思ってなさそうだと。そして、さすがに私も緊張していた。でも、この関係がさらに私と彼を強く結び付けてくれる…そう信じていた。その結果、彼を更に束縛してしまうとしても…
「ちょっとだけ緊張するね」
そう言って円斗君の様子を窺ってみる。すると、少しの驚きと共に希望を見出したような顔をした。・・・理由は分かっているけど、ちょっと失礼だと思うよ…?
「緊張するならやっぱり、止めた方が」
「大丈夫だよ?これから毎・日・一緒に入るんだから、すぐに慣れると思うの♪」
「毎日…だと…?」
ちょっとだけムッとした私は、希望を完全に粉砕するようなことを言ってみた。案の定、円斗君は登り切る寸前の崖から手を叩き落されたみたいな顔をしていた。・・・ちょっとやりすぎたかも?
「でもほら、万が一があると…」
それでも、悪あがきをする円斗君に
「お義母さんは、責任取ればよいって言ってたよ?円斗君♪」
無邪気に追い打ちをかけた私。
「でもほら、愛海瑠のご両親が何と言うか…」
私の方のね…
「大丈夫だよ?だって、子供の幸せの願わない親はいないんだよ?」
近い将来増えるだろう家族の幸せをちゃんと考えているよ?
「何か少し違うような…」
円斗君…煮え切らないね…だったら、仕方ないよね?
「円斗君、そんなに私の裸を見たくないの…?」
思春期の男子のリビドーと言うのを信じて、そう言ってみる。これはもろ刃の剣だけど…
「見たくないわけがないだろ!?・・・ハッ!?」
何とかなったみたい♪拒否されていたら、さすがの私も大ダメージだったけどね…
「なら問題ないよね♪」
「・・・俺のバカ野郎…」
さすがに自分の欲望?を口にしてしまったせいか、落ち込みつつももう逃げられないと悟ったみたい。何か、円斗君をいじめている気分になって来たよ…止めた方が良いのかな?
「じゃあ、せめて水着で…」
きっと、この一言は私を修羅へと変えた。この期に及んでそんな回避をしようなんて…
「お風呂に入るのに水着なんて着ないよね?」
「いや、緊急処置と言うかですね…」
「円斗君?毎日私に水着を着ろと言うの?」
「じゃ、じゃあ!今日だけ!!」
「水着取りに行く時間がありませ~ん♪」
「正論だが…くっ…何かないのか!?」
「円斗君、こういう時だけちょっと女々しくなるよね?」
「そうです!チキン野郎で良いので、何とか別々に!」
「俺が全てを受け止めてやるって言ったよね?」
「えっと…その…言いました…」
「じゃあ、行きましょう♪」
「ま、まだ大丈夫だ…慌てる時間じゃない…」
これだけ攻めても未だに諦めていない円斗君。諦めない気持ちを他の部分で使って欲しいかも…円斗君、さすがにちょっと格好悪いよ?
「あら?やっぱり二人で入るのね?」
ここで美津奈お義母さん登場。ドキッとしたけど、やっぱりと言っていたので私の味方だと判断する。
「お義母さん…頑張って来ます♪」
円斗君が泣き付くのは目に見えているので先制攻撃の意味で頑張ると言ってみる。すると、当然円斗君は…
「母上!やっぱりまずいですよね?止めますよね!?」
やっぱり、円斗君は女の覚悟の重みを知らないんだね?
「円斗さん、手を出すときは覚悟を決めてからよ?いってらっしゃい♪」
そう言われ、突き放された円斗君は絶望の表情をしていた。・・・色々と思う所はあるけど、これからの事を考えて何も言わない事にした。
「孫の名前を考えておかないとダメみたいね♪」
と言う、お義母さんの去り際の言葉に更なるショックを受けていた円斗君に、少しだけいい気味だと思ってしまったのは悪くないよね?
「あ、愛海瑠!」
「え?脱がせたいの?」
まだ足掻こうとしているみたいなので即座に返事をする私。
「ちっがーう!その手には騙されんぞ!?」
騙そうとしたんじゃないんだけど…条件反射?でも
「騙す気はないけど…脱がせたくないの?」
「それはまだ難易度が高すぎます!!じゃなくて!?」
一般で言う所のヘタレ?で救われた円斗君はまだ何か?
「うん?」
「えっと…ほら…愛海瑠はすっごく魅力的な娘なんだよ?俺にとってはすっごく!分かるよな?」
突然私の事をすっごく魅力的だと言って来た円斗君。すっごく嬉しいけど、やっぱりそう言う事だよね?何となく分かるけど…ここで引くと本当に思っているのかな…
「ここでそう言うって事は…押し倒す宣言って事かな?」
あえて乗って見て反応を窺う私に…
「そ、そうだ!お風呂場がその…は、初めてとか嫌だろ?」
やっぱり、私を気遣いつつなんだね…嬉しいけど、それはつまり私の覚悟を分かってないって事だよね?
「私も円斗君の全てを受け止めるつもりだから…ぽっ♪」
円斗君の覚悟と似たようなセリフを盛り込んで、さらに私が引く気がない事を伝えてみた。円斗君は…なんかちょっとデレっとしたような気がする?何か反応が分かり難いけど、逃げられないとは悟ったみたい…だよね?
「それじゃあ、一緒に入ろうね♪」
私は確認のために最後の声を掛ける。
「・・・南無三!!」
何か良く分からないけど、覚悟完了の掛け声を円斗君がしたみたい。・・・緊張する…円斗君は、どうするつもりなんだろう?
すると、円斗君は、急に電池が切れたみたいに下を向いてだらっと手を下げた。ん?何するつもりだろう?そう思って円斗君を見ていたら、急に服を脱ぎ始めた!?
私は思わず、視線を逸らした!だって、一切の躊躇の無い見事の脱ぎっぷりで、今見たらきっと…え!?も、もしかして、次は私を脱がせるとか…?ままま、待って!?確かに、挑発したけどもうちょっと円斗君が慌ててる間に本格的な覚悟を決める予定だったと言うか…
た、確かにそう言う行為に発展するという事は、お互いに見て見られるって事なんだけど…でも…どど、どうしよう!?・・・こうなったら、情けないけど円斗君に全部任せるしか…
私は、目を瞑って円斗君がいつきても身を任せるつもりで身構えた。・・・あれ?
でも、聞こえてきたのはお風呂のドアの開閉音で、チラッと様子を見たら円斗君は一人でお風呂場に入ったみたい。・・・・どういう事!?
「え?え?・・・ええっ!?」
私は、少しだけパニックになる。まさか、私を完全に無視して一人で入る何て…!?も、もしかして怒った?愛想を尽かせた…!?
ま、待って!?それなら何か言うよね…?だとすると…えっとえっと・・・あ!?もしかして、私がここでこうやって慌てている間に一人で済ませる作戦!?急いで、私も追いかけないと!?
そう思って、自分の服に手をかけてふと思った。私、後から全部脱いで円斗君が待つお風呂に入るとか…結構、難易度が高いかも…
確かに、覚悟はしていた…はずだけど、やっぱり、ある程度は円斗君に任せる予定と言うか、円斗君の方が慌ててくれて…そして、円斗君から行動を起こす…そんな流れしか想像すら出来なかったわけで…
じ、自分からこんな感じで向かう事になる何て…ど、どうしよう…円斗君、結構策士だった…?そんな風には見えなかったけど…もし、これが作戦なら時間をかけたら負けだよね!?
ここで負けたら、明日からもうお風呂を一緒に♪とか言えなくなっちゃう!うん、い、行くしかないよね…!?
私も、勢いで服を脱いで円斗君の待つお風呂場に入った。すると…
ま、円斗君隠してない!?自信があるの!?
私は、思わず見てしまった円斗君の裸に思わず視線を逸らした。我ながら情けないよね…でも、堂々とし過ぎだよ!?何か、別人みたい…慌てていた円斗君は何処へ行ったの!?
私は、チラリと視線を少し戻して円斗君の様子を窺う…!?ま、円斗君思いっきり私の身体を見てる!?え?え!?ど、どうしよう!?うん、覚悟はしてるんだけど…してるんだけど…!?
私は、またしても円斗君がいつ来てもいい様に身構えた。でも、しばらくしても円斗君が来る気配もなく…私はまた、円斗君の様子をこっそり伺うと…あれ…?何か…私を見てるけど無表情?欲情している感じが全くないよ…?
も、もしかして、私って魅力ない!?円斗君にとって、もしかしてがっかりだったの!?そうなの!?
私は、かなり混乱しながら円斗君に感想を聞くと言う大胆な行動に出そうになった時、
・・・ええっ!?
円斗君は、無言でこちらに背を向けて椅子に腰かけた。・・・どういう事なんだろう?・・・あ!?もしかして、背中を流してくれって事…?
「えっと…背中を流してくれって事なのかな?」
そう問いかけると、円斗君は無言で頷いた。こちらを全く見ないとか…私ってやっぱり魅力ないのかな…?
そんな風に、内心かなりのショックを受けつつも、円斗君の要望なら応えないといけないので背中を流すことにした。
「・・・やっぱり、男の人の背中って大きい気するよね…失礼します」
そう声を掛けて、円斗君の背中を洗っていく。そうしているうちに、少し落ち着いて自分の行動などを思い出して逃げ出したいほど恥ずかしくなって来た。
だって、私は一糸まとわぬ姿を円斗君に見せてしまったわけで…はぅぅぅ…まだ湯船に浸かってもないのにのぼせそう…
色々な事を考えながらも背中を十分に洗ったのち、私は最後の仕上げで背中にお湯をかけた。・・・次はどうなるんだろう?すでに私は、自分から動くことを諦めた。私は、自分が思っていたよりも羞恥心があったようです…
どうするの?と、円斗君に注目していたら…いきなり立ち上がり、振り向いて私の肩を掴んで来た!?私は、咄嗟の事で硬直してしまい思考停止。円斗君を見つめる事しか出来なかった…
「ま、円斗君…?」
硬直が解け、思考が再起動しだすと今度は…この後の展開を思い浮かべてしまう…ややや、やっぱりそう言う…!?
思わず目を瞑ってしまった私だったけど、円斗君はそんな私の背後に回り…そして、背中を押して私を椅子に座らせた…あれ?
不思議に思った私だったけど、すぐにどういうことか分かった。だって、円斗君が私の背中を洗い始めたから…
「せ、背中を流してくれるなら教えて欲しかったかも…」
ドキドキと心臓の鼓動が止まらない。危うく倒れてしまうかと思った…。何か、お風呂場での円斗君は、いつもみたいに動揺してくれないどころか、私を激しく動揺させてくる。このままだと、私の心臓が持たない…
しばらくして、私の背中にもお湯がかけられた。・・・また心音が高鳴り出す…互いに一応とは言え身体を洗ったから今度こそ…?
そう思って緊張しながらも、円斗君の様子を窺うと…なにやら、もう一つあった椅子を持ってきて座り…頭を洗い始めた!?・・・えっと?
どうやら、今度は頭を洗う時間みたいなので、私も洗い始める。いつも通りに洗うと時間が掛かるけど…私はわざといつも通りに洗う事にした。毎日のケアが大事だしそれに…
ちらりと円斗君の様子を窺うけど、やっぱり私に襲い掛かってくる気配はない。・・・私、やっぱり魅力がない?それとも、円斗君の精神力はそんなに凄いのかな?でも、お風呂に来るまでは激しく動揺していたし…
様々な考えを巡らせながら、髪の毛のケアをしていく。うん、流石はお義母さん。しっかりとした物を使ってるみたい。あ、これ…私の使ってるのよりも良いかも…?
などと、円斗君とお風呂に入っている事すら一時忘れるくらい身体のケアに没頭した。結構時間が経った頃、私は現状を思い出して円斗君の方を見た。そうしたら…なんと、円斗君は湯船に入ってこちらを見ていた!?
ええっ!?こ、これってどういう事!?ま、待っててくれただけ?こ、これって入って来るのを待ってるの…?ど、どうしたら良いか分からないよ…!?
「ま、円斗君?その…私にも一緒に入れって事…なのかな?」
二人で入ったら結構いっぱいいっぱいで絶対につっくいて意識してしまう大きさの湯船だったのもあり、私は円斗君に尋ねてみた。最早、私の中では今日はこれ以上何もなくても良いと思うほど動転している。
でも、私の質問に対して円斗君はゆっくりと頷いた。頷いてしまった…からには、私は入るしかない…
「お、お邪魔します…」
そう言って、私は円斗君の横にちょこっと入る。でも、やっぱり円斗君とは少なからず接触してしまい…
「!?」
それだけでも、私の心臓はもう限界域まで鼓動が早まっていると言うのに、円斗君は私の肩に手を回して来た!?なななななっ!?も、も、も、もしかして湯船の中で…!?
私は、またもパニックになって円斗君を見る。でも、円斗君は相変わらずの無表情で私の事を見ていた。いつも、あたふたしている円斗君とはやはり別人に見えてくる…もしかして、別人に入れ替わったんじゃ?とか、飛んでもない事を考え始めた私。
だって、そうでもしないと本当に気を失ってしまいそうなほど、もう心臓が凄い事になってるんだもん…
その後、何とか無事に?お風呂から上がった私たちは、それぞれ着替えている…んだけど、私はこっそり買った下着しかないわけで…しかも…
ちらりと円斗君を見ると、私を凝視している。私はまだ心臓発作の危機を回避出来ていない、心臓の鼓動の速度はゆっくりになっていない。・・・変に思われるかもしれないけど、円斗君が凝視している前で下着をはく事が出来ないくらいに動揺しているのです…
「ま、円斗君!?そ、そんなに見つめられると…」
私は、ついに耐え切れなくなっていつもと違う事を言ってしまった。でも…円斗君は、無言で私に自分のシャツを差し出して来た。・・・着ろって事かな?
「あ、ありがとう…」
お礼をすると、円斗君はまた鷹揚に頷き、目を瞑った。これは…見ないでおくから着替えろって事だよね?言葉少ない円斗君も格好良いけど…やっぱり、いつもおどけてみせてるけどいざと言う時は男を見せてくれる円斗君が一番かな…?
そんな事を考えながら、私は急いで着替えを済ませた。一応服を着る事で、私の鼓動はやっと少しずつ落ち着いて来てくれたようだった。
「・・・・はっ!?何か、桃源郷に居た気がするが…ぶふっ!?」
何故か、少し聞かなかっただけで懐かしささえ感じてしまったいつもの円斗君の口調と共に、いつもの戸惑った円斗君の表情が見えた。…やっぱり、さっきまでは別人だったんじゃ…
「愛海瑠さん、その格好は…?」
自分でシャツを渡してくれたよね?う~ん?
「格好って…円斗君が貸してくれた大きめのTシャツを着ているだけだよ?下着は、こっそり買っておいたのをちゃんと着てるよ?」
もしかして、下に何もはいてないと思ったのかな?と思って、見せようとしたら何か慌てて止められてしまった。やっぱり、これが円斗君だよね…?
「そんなに慌ててどうしたの?もう…さっきまで全部しっかり見てたくせに今更下着何てどうってことないでしょ?円斗君って、男らしいんだからしくないんだか分からないよねぇ…結局、押し倒してくれなかったし…」
少し拗ねて見せたら物凄く慌てた後、難しい顔をして考え込んでしまった円斗君。うん、良く分からないけど、これならいつも通り私が主導権を握れそうだね♪・・・我ながら腹黒いな…さっきまで、あんなにしおらしかった私は何処に行ったの…?
私は頭を振ってから、先ほどまでの自分を思い出してしまい…
「私って…そんなに魅力がないかな?」
思わずそう聞いてしまっていた。だって、あれだけ見ていたのに…
「そんなことあるわけないだろ?ずっとこうしたいのを我慢していたんだからな?」
そう言って、円斗君は私を抱きしめてくれた。偶然か分からないけど、円斗君の高鳴った鼓動が聞こえて来た。本当にドキドキしてくれているみたい…
「…円斗君は手強いって事だね?でも、何も感じてくれないわけじゃないのなら、良かったぁ…」
私は、安著を感じながらも、やっと収まった鼓動が早くなっていくのを感じていた。またピンチかも…
「ぎりぎりだから!マジでギリギリだからな?俺の理性を過大評価するのはやめてくれよ!?」
あれだけ堂々として置いて今更とは思わないでもなかったけど、何となく変だったのも思い出して
「う~ん?でも、確かにお風呂での円斗君は何か変だったかな…?まだ初日だしこれからだよね♪」
うん、不意打ちでかなりやられたけど…二度目ならきっと大丈夫だよね!明日からのお風呂場と言う戦場を思い、私の鼓動はさらに早くなっていく…倒れないでよ?私!
「よし、寝る前に話し合おうじゃないか!」
あれ?円斗君から防衛戦に入って来たね?
「円斗君って時々大胆になるよね?ベッドの中で語り合おうなんて…♪」
それはそれで…でも、さっきまでの私の感じだとダメかも…
「ちっがーう!今後についてだよ!俺の理性が崩壊するのを防ぐために!」
円斗君から来てくれないとダメだって分かったのに、そんなことさせるわけないよ?
「防ぐ必要ありませ~ん♪」
私はきっぱりと言い放った。
「え!?話し合い終わり!?マジで!?」
やっぱり、こういう反応をしてくれる円斗君の方が良いな♪
「ふふっ♪円斗君ってば、一々反応が大げさで面白いよね♪」
「違うよ!?わざとやって笑わせようとしてるわけじゃないですよ!?愛海瑠さんが過激発言し過ぎてるって気が付いて!」
「円斗君の視線を私だけに向けなきゃいけないんだもん!攻めて攻めて攻めまくらないとね!!」
「十分です!オーバーキルです!!降参です!!!」
やっぱり、円斗君とのこういうやり取りも楽しい♪
「やっぱり大げさだね?それより、早く部屋に戻ろうよ♪」
私は、すっかりいつもの調子を取り戻りて定位置の円斗君の左腕を独占した。
「ハッ!?湯上り美人が俺の隣に!?落ち着け俺…落ち着け俺…」
「美人って言われちゃった♪」
美人と言われて、さらに円斗君にくっつく。
「段々、照れ方が俺へのアピール化してるよ?愛海瑠さん…」
「愛海瑠だよ?」
さん付けで呼ばれ、反射的に反応する。
「その突っ込み要らないからな?愛海瑠…」
そう言いつつも、ちゃんと名前で呼び直す円斗君はさすがだよね♪
「えっへへ♪円斗君に名前呼ばれるだけで幸せな気持ちになれちゃうよ♪」
そんなやり取りすら幸せに感じ、もっと円斗君に離れませんと言わんばかりにくっつく。
「くっ…頑張れ俺…」
いつものように葛藤している様子の円斗君。ごめんね?でも、そんな風に我慢しながらも私を受け入れてくれる円斗君は、やっぱり素敵だと思うよ♪
「それでは、勉強の続きをしようではないか!」
円斗君は、部屋に戻った途端にそう言い放った。多分、私との接触で色々考えてしまって限界なのかな?でも、私は意外と大胆になり切れないと悟ったからね…
「は~い!頑張ろうね♪」
そう返事をしつつも、円斗君へのぎりぎりのアピールをする私。
「愛海瑠…今、君は何をやった?」
「?何か私やった?」
分かっていてとぼけてみる。
「いや…今、さりげなくシャツの下から何かを取らなかったか?」
そう問われたら、恥ずかしいけど見せるしかないよね?
「ああ、これ?」
何でもない様に見せながらも、身に着けたいた布を円斗君に見せつける。
「ぶっ!?見せなくていいから!!」
「ええ?それなりに可愛いのだと思ったんだけど…」
思った通りの反応をしてくれる円斗君に、にやけない様にしながらもそう返事をする。
「可愛いとか可愛くないとかじゃなくて、それは気軽に見せるものじゃないんですよ!?」
この反応だと、意識しているよね?買ったばかりだから、お気に入りって程じゃないけど…円斗君が可愛いって思ってくれたみたいだし、お気に入りに追加しておこうっと♪それはそれとして…
「え?でも、中身を見たからもうこれくらい…」
あの時の円斗君は、私の幻想だったのかな?
「そう言う事じゃないですよ!?そ、それより…何故外したかと聞いているのです!!」
わざわざ聞かなければ良いのに…まあ、流石は円斗君だと思うけど…ね?
「何故って…つけて寝ると窮屈だから?」
「そんな理由で外してはダメです!確か…つけていた方が形が崩れないって聞いたことあるぞ!?」
ええ…?
「・・・円斗君、何でそんなこと知ってるの?」
「・・・男子高校生のリビドー故に?」
それなら、何故お風呂場で襲ってこなかったの!!そんな思いも込めて、私はギリギリの攻撃を繰り出す事にした。
「・・・え~い♪これからは、そのリビドーは全部私に向けてね?」
「ばびぼびばがびば!?」
円斗君が意味の分からない規制と共に、思いっきり視線をきょどらせていた。やっぱり、お風呂場の円斗君は幻想?お風呂の中では、裸の私の肩に手を回して来たよね…?うん、お風呂場での円斗君は別人にしておこうかな…
「円斗君、お顔が凄い事になってるよ?」
「キノセイダ…ベンキョウシヨウ、ベンキョウ」
でも、何だかんだで頑張っちゃう円斗君。やっぱり、一緒の高校生活を送るために頑張るんだね…嬉しいけど…うん、ごめんね?アピールは続けちゃうと思います。
その後、必死に勉強を頑張る円斗君に私も出来るだけ解り易いように教え続けた。今の円斗君の様子だとずっと続けそうだったので…
「良い時間だし、今日はこれくらいにしておこうよ?」
そう言って、止める事にした。だって、詰め込み過ぎても覚えられないもんね?
「そうだな…寝るか?布団が」
「じゃあ、一緒にベッドで寝ましょう♪」
別の布団で寝ようと言いそうな気配だったので、もちろん先制で潰させてもらいました♪
「分かっていたけど…分かっていたけど!!」
何やら悶えている円斗君に、ちょっと追撃してみようかな?
「ねえ?円斗君?下もぬ」
「ダメ!絶対にダメです!!お願いします!!止めて下さい!!」
「わ、分かったよ…円斗君、必死過ぎ…」
余りに必死に止めてくるので、さすがの私も引くことにした。だって、血の涙を流すんじゃないかって程だったんだもん…ちょっと怖かったよ。
「じゃあ、電気を消して…おやすみなさい♪」
「お、おやすみ…」
夜は長いよ?円斗君♪
「あ、抱きしめて貰っても良い?寝るまででいいので…♪」
「ああ…もう自棄だ!」
うん、円斗君はやっぱり私のお願いを聞いてくれるから好き♪大好き♪でも、これからが勝負だよ?
そう思ったんだけど、私はすぐに布団と円斗君の温かさに包まれて幸せな気持ちのままに…眠くなってしまうのだった。
うう…勝負をかけるつもりだったのに…すっごく眠くなっちゃった…でも、こんな幸せな気分で眠れるなんて贅沢だよ…ね?円斗君…ありがとう…おやすみなさい…
「ん…」
「幸せそうに寝おってからに…俺は、朝まで徹夜コースだっての…」
頭を優しく撫でる感触を感じつつ、そんな円斗君の声が遠くから聞こえて来た気がした。かつてないほど幸せな気持ちを抱いたまま、私の意識は眠りへと誘われていったのだった。
感想などなど、いつでもお待ちしております!次話もよろしくお願いします。