ラヴ2 彼女は離れない!?
「何をしているんだ?翠口と舞川は?」
おう!?数学補習ギリギリの俺は元々目をつけられているからなぁ…まあ、それが無くても席をくっつけて堂々と腕を組んでいたら目立ちますよねぇ…。何と言い訳しようかと俺が思考を巡らせていると…
「見て分かる通り腕を組んでます♪」
おぅ…川口教師の顔が引きつるのを初めて見たぜ!って、待て待て!愛海瑠さん?正直に言えばゆるして貰える相手ではありませんぞ!?
「それは見れば分かる!だがな、舞川?いくら、恋愛を推奨している学校であろうと、授業中は…」
「はい!もちろん、授業は真面目に聞きます!私は、数学は良い成績を収めてますし、次のテストでも成績が落ちていなければ問題ないですよね?」
「・・・そうだな、それはそうかもしれんな?だがな、舞川?お前の腕を組んでいる相手の翠口は、赤点ギリギリなんだぞ?」
「分かりました!次は平均点以上を私が取らせます!それで問題ないですよね?」
「え?え?あの…愛海瑠…?」
「ほぅ…もし取れなかったらどうするんだ?」
待ってください!?何で勝手に話が進もうとしてるんですか!?数学で平均点取れる自信なんて全くないですよ!?川口は、ただでさえ高圧的で出来の悪い生徒に当たりが強いと言うのに、煽ってどうするんですか!?愛海瑠さん!?
「その時は、次の補習に二人で参加します!ゆるいと言うなら、冬休みの補習にも参加します!」
「なるほどなるほど、まさか二人が俺の補習を受けたかったとは意外だったな。そこまで言うなら…覚悟して置けよ?」
「もちろんです!受けて立ちます!!」
おお!?二人が視線で火花を…って、俺の意志は!?せめて確認してくださいよ!?
授業を始めた川口をしり目に、俺は小声で愛海瑠に問いかける。
「どういうつもりなんだ?言っておくけど俺は、頑張っても平均点すら危ういくらいに数学は苦手だぞ?」
これでも濁して言っている。正直、数学になってからちんぷんかんぷんだ。よくこの高校に入れたもんだな?と、色々な意味で自分自身に問いかけたい。
「どういうつもりって…根源は円斗君と離れたくないって事だけど?」
「それは嬉しいんだが…」
そういうことじゃなくてですね?
「それに、私たちにとってはどっちに転んでも損はないじゃない?」
「ん?どういうことだ?」
「だって、円斗君が平均点取れればずっとくっついていられるし、補修になってもずっと一緒に居られるし♪あ、もちろん平均点目指すのはちゃんとやるよ?勉強教える時もずっと一緒に居られるもんね♪」
「あ、うん、そうだな…可愛すぎて何も言えないじゃんこれ…」
本当に、どうしてここまで俺一筋に?前もって好きだったならともかく、裏庭での発言を信じるなら、俺の事を好きだったわけではなさそうなのに…くっ!左腕が俺の疑問を気にするなと訴えてくる!!緩むな!俺の表情筋よ!!
「あ、円斗君…重大な問題が発覚しちゃったよ…」
「ん?どうした?」
やっぱり、補習するのは嫌になったか?
「両手で円斗君にしがみついていると、ノートが取れないよ!どうしよう…?」
「あ、うん、それは当たり前と言うか…ノート取るときだけ離すと言う選択肢は?」
「離れたく…ないの…」
「それなら仕方ないな…」
そんな、離れたら私は生きていけない!みたいな切ない表情されても普通はどうにもならないからな!?俺には効果は抜群だけどな!!
「じゃあ、俺が右手空いているし俺がノートを取るしかないな…」
「ごめんね?円斗君。後でちゃんと教えるからね?」
「ああ、期待してる」
そんな申し訳なさそうな顔するくらいなら腕を離せば良いんじゃないか?とか思ったりするが、言い出せない情けない俺です。完全に主導権を握られているな…特に、左腕の!!
「それじゃあ、よろしくね?あ、そこはここをこうして書いた方が分かりやすいよ?後、そっちは…」
などと、自分が書いた方が圧倒的に早いと思われるような指摘に次ぐ指摘を受けて、ノートを埋めているうちに授業があっという間に終わった。ついでに軽く質問したしたりして気が付いたんだが…川口より分かりやすかった…まあ、俺が川口に質問していないのもあるだろうが、授業止めて聞くのはなぁ…無理だろ?
そんな感じであっという間に放課後になり、買い物デートの時間となった!だが、結局最後まで俺の左腕は愛海瑠に捕らわれたままだった。この幸せ者め!!はい、浮かれてます、すみません…
「それじゃあ、いこっか♪」
「ああ」
幸せそうに立ち上がる愛海瑠に引っ張られ、俺も短く答えながら立ち上がる。いや、本当に器用に動くなぁ…手を使う時も左腕だけであっという間に準備してるし…そこまで離さない事に何やら感心してしまった。
「愛海瑠は、今日から翠口君と帰る感じなの?」
おっと、愛海瑠グループと言ったらよいのか?彼女と仲の良い女子メンバーの一人、佐戸川喜美子が話し掛けて来た。俺の中では彼女は、クラス2位の座に輝いている美少女だ!いや、深い意味はないぞ?
「あ、喜美子。ごめんね?喜美子たちにはちゃんと説明するべきだったね…」
そう言って、俺の方をちらりと見てくる愛海瑠。俺は頷くとともに、俺の友人にも愛海瑠を紹介するべきだと思い近くに居た二人を呼び寄せた。
「それじゃあ、私の方からで良いかな?二人ともクラスでは目立っているから知ってるかもだけど、私の親友の佐戸川喜美子と間井谷那々瑠。二人とも可愛いけど、浮気しちゃダメだからね?」
「分かってるって!注意を促す前に言う事あるだろ…まあいいけどな…愛海瑠と付き合う事になった翠口円斗です!よろしく!!」
そう言って、俺は二人に頭を下げた。意味は色々あるが、いざって時は頼らせてもらうの意味で。いや、愛海瑠は見た目では分からなかったが、色々とやってくれそうな気配を感じるんだよな…俺では対処しきれないような事を…
「ああ、うん、オッケー!翠口って言いにくいから円斗君って呼んで良い?私も、喜美子って呼んで良いから」
「別に構わないけど」
「ダメです」
「・・・え?」
俺は許可を出したが、俺の左腕の所有者の愛海瑠がダメだと拒絶しました…何故だ?
「円斗君を円斗君と呼べるのは彼女の私の特権です!」
「・・・呼び捨てで構わないんだけども?」
「何か…円斗って呼び捨てにすると友達みたいな感覚になりそうだから…円斗君が良いの!そして、他の女の子にはその呼び方させて欲しくないの!・・・やっぱり、我がままかな?」
「まあ、我がままだけど…許す!」
相変わらず、俺に勝ち目がない戦いだ!許すしかないだろ!?そんな、上目遣いでダメかな?とか見上げて来るとか!しかも、腕にしがみ付きながら至近距離でだぞ!!完敗以外の結果があると思ってか!!
「と言うわけで喜美子さん、俺は円斗って呼び捨てで構わないぞ」
「オッケー!じゃあ、私もさんは要らないからね?」
「分かった、了解だ」
「じゃあ、私も同じ感じで~?よろしくね、円斗」
「ああ。こちらこそよろしく、那々瑠」
那々瑠は、正直言って一部の男子からは愛海瑠以上の支持がある美少女だ。俺の中では3位だけどな!え?1~3位まで愛海瑠のグループが独占しているのかと?あくまで、俺個人の感想だからな?だがまあ、那々瑠に関しては、いつも半眼に近い眠そうな感じのロリっ娘と言えば解りやすいか?ぶっちゃけ、3人の中で一番キャラは立ってるな…
「あのな?円斗さんや…俺たちを忘れて美少女たちと戯れるとは良い度胸じゃないか?…ぐれるぞ?」
「円斗!俺たちの紹介をはよ!!」
言われて、俺は友人二人に顔を向ける…ふむ
「俺の友人AとBです。よろしくしてやってくれ」
「友人Aです!」
「友人Bです!」
「「二人合わせて友人ABです!!って、なんでやねん!!」」
「おお、息ぴったりだね、お二人さん」
「すごいね…パチパチパチ」
「あ、いや…それほどでも?」
「ああ、た、たいしたことないぞ?」
俺の悪ふざけからの流れからのノリツッコミが思いのほか喜美子と那々瑠に高評価だったために、二人とも照れておる。まあ、美少女との絡みすら俺たちにはレアだからなぁ…いや、だったと過去系にしないといけなくなりそうだがな。
「冗談はそれくらいにして、こっちのちょっと悪そうだけど中身は普通の奴が清水幸也。こっちの平々凡々としてるがちょっと中身が悪ぶってるように見せたいお年頃になってるのが淀川竜輝だ」
「おい待て、円斗さんや?誰が見た目と違って普通の奴だって?」
「お前はまだいいだろ?俺なんて、見た目普通で悪ぶってるだぞ!?」
「どうどう、友人AB」
「「誰が友人ABだ!?」
「今まで気が付かなかったけど、クラスの中にトリオ漫才やってる人たちがいたんだね」
「うん、私もびっくり…子守歌には丁度良さそう?」
「それ、つまらないって言ってませんか!?」
「那々瑠ちゃんって意外と辛辣な子だったのか…」
「辛辣って言うより、歯に衣着せぬ子が近いかな?」
「うんうん、そんな感じだよね?」
「・・・解せぬ?」
「那々瑠…船漕ぎだしてないか?」
「平常運転かな?」
「だね、いつもこんな感じ」
「まじか…」
「お前…普通に呼び捨て受け入れてるとか…凄いな?」
「いや、呼べと言われればそうするだろ?」
「と言うより、愛海瑠の事も呼び捨てにしてるからもう慣れちゃってるんじゃない?」
「バカな!?」
「俺たちがいつの間にか置き去りにされていただと…!?」
「ふっ…生まれ変わって出直して来な?」
「「チキショー!!?」」
「君たちもそれが平常運転なのかな?」
「うーん…円斗君は、ノリが良いからその可能性が高いかも?」
「人の振り見て我が振り直せ?」
「うたた寝姫の君がそれ言っちゃうのかなぁ?」
「喜美子、那々瑠の発言はその場その場で正直に出てくるだけだからね?」
「分かっているんだけど、私はツッコミ役だからね!言うしかないんだよ?てへっ♪」
「いつの間にそんなポジション出来たの?」
「ホントにびっくりし過ぎて眠くなった…」
「いつも眠そうだよね?」
「きりがないなぁ…もぅ」
「思っていたより…美少女トリオのやりとりは俺たちに近かった?」
「俺たちの理想が崩れていく…だが、それが良い!!」
「親近感でも沸いたのか?」
「「YES!!」」
「だってさ、どう思う?美少女トリオの皆さん?」
「ごめんなさい、彼氏がいるので…」
「ごめんなさい、これ以上のボケ要因は要らないので…」
「ごめん、好みじゃない」
「「速攻で告白もしていないのに振られただと!?」」
「しかも、那々瑠ちゃん辛辣過ぎない!?」
「好みじゃないとかストレート過ぎて…凹むぜ…」
「諸行無常だな…」
「でも、円斗君の親友なら私で力になれる事があったら力になるからね?」
「おお!天使がここに降臨した!?」
「女神だ!女神は我がクラスに居たのだ!?」
「あ、ごめんなさい。円斗君以外の男の子には興味ないので希望は持たないでね?」
「上げて下げられた!?」
「この世に神はいなかった!?」
「はは…俺の友人たちで遊ぶのはほどほどにしてやってくれよ?」
「「「はーい♪」」」
「くっ…可愛いと何でも許せてしまうのは本当だったのか!?」
「ば、バカな!?俺がそんな在り来たりな感情を持ってしまうとは…不覚!!」
「普通の反応が出来ないのかな?この二人は」
「すまんな、喜美子。この二人、美少女を相手にすることになれていないから、テンションが常に高くなっているんだ。あ、俺も含めてな?」
「なるほど、円斗が冷静なのは愛海瑠がくっついているから冷静な男を演じたいが故にってところ?」
「・・・分かってるなら振らないで貰えます?」
「あははっ♪そこで素直になっちゃダメなんじゃないかな?」
「…円斗君?喜美子と仲良くなるの早すぎない?」
「こら!いちいち顔よせないで下さい!?ドキッとしちゃうだろ!?後、俺はかなり愛海瑠ラヴだぞ?証拠を見せろと言うなら…この場で唇を奪ってやろうか?」
そう言って、空いている右手で愛海瑠の顎を上げて見つめ合ってみる。・・・やべぇ…勢いでやったけど、愛海瑠をマジマジと見つめると…やっぱり可愛い!そして、自分でやっておいてなんだけど近い!ドキドキしすぎて心臓が痛いくらいなんですが!?
そして、一番の問題なのが…冗談を冗談として受け取ってくれない愛海瑠さんにこんなことをしてしまったおバカな俺だ!思いっきり、キス待ちの表情で待ってるじゃないか!?目を閉じちゃったぞ!?どうすればいいんだ!?
俺は助けを求めて周りを見渡したが…
「だ、大胆だね…愛海瑠と円斗…こっちまでドキドキしてきたかも」
「…これはさすがに寝てる場合じゃない?見届けないと…」
「円斗はいつの間にか遠い存在に…眩しいぜ…」
「くそぅ!リア充爆発しろ!!」
反応は様々だけども…誰一人として止める気がないではないか!?どういうことですか、これ!?
「円斗君、証拠は…まだ?」
さらに追い詰められた!?先ほど馬鹿なセリフを言った過去の俺をぶん殴ってやりたい!!・・・マジでどうしよう!?