ラヴ10 慣れとは恐ろしいものだな
「円斗、おはよう」
「おはよう、父上」
「お前は常に呼び方が変わるな?」
「気分屋なもので」
ご飯だと愛海瑠が呼びに来たので、リビングに下りてきて父と接触したので挨拶をした。呼び方が一定でないのは昔からだ。まあ、本当に気分屋だから仕方ない。
「まあその…なんだ。ほどほどにな?」
「何がとは問い返さないけど、分かったと言っておく」
多分、朝から俺にしがみ付いている愛海瑠さんとの事だろう。ご飯だと呼びに来てそのまま定位置に付きました。もう、ここが定位置なんだよ、気にしたら負けだ…
「そう言えば、登場があれだったので忘れていたけど、おはよう、母上」
「おはよう、円斗さん。そう言えば、衝撃的な光景で忘れていたわね」
「過剰な表現は止めて頂けませんか?母上様…」
「ふふっ♪」
「まあ、朝から元気があるのは良い事だという事にしておこう。では、いただきます」
「「「いただきます」」」
まあ、朝からわいのわいの騒ぐのはたまにあるけど、これからは毎日になりそうで怖いもんだ…
「はい、あ~ん♪」
「ですよね…」
「ですのよ♪」
いつも朝は余裕あるんだが、この食べ方だと余裕なくなりそうだな…なるべく急いでみるか。
「「いってきます」」
「いってらっしゃい、息ぴったりね?」
「はい!愛し合ってますから♪」
「まあな!」
俺のテンションは朝から高めだ。要因は、自棄になってるんじゃないくて、ただただ徹夜明けのハイってやつだ!いやもうね、授業中寝たいけど…愛海瑠さんがきっとこのままなんだろうなぁ…意識飛ばしそうで怖いわぁ…
そんなこんなで、色々あって家を出た。しかし…
「愛海瑠、俺の前で堂々と着替えるのはやめようか?」
「同じ部屋で暮らすんだよ?諦めて下さい♪と言うより、あんなにじっくり見ておいて何を言ってるのかな?」
「いや…その…バレてる?」
「隠しているつもりなら、気を付けてね?私以外なら訴えられるレベルだよ?」
「はい…気を付けます」
「まあ、私以外を見たら私が許しませんけどね♪」
「ははは…そんな機会がないから大丈夫ですヨ?」
同じテンションの声だったのに、何か怖いんですよ…これがインプリティングってやつですね…ハハハ
「同じ部屋の許可が出た時点である程度は覚悟していたが…愛海瑠は積極的すぎないか?」
「同じ部屋で暮らす者同士、隠し事は出来ないんです♪」
「それはそれで…きつそうだなぁ」
「そう言う事で、どこに隠してるか白状しなさい♪」
「・・・徹夜明けの俺よりテンション高くない?」
「円斗君とこうしていると元気が出てくるんです♪って、誤魔化されないよ?白状しなさい!」
「な、何の事でしょうか?」
「思春期の男の子が持ってるアレです。昨日はドタバタしちゃったから忘れたけど、今日は帰ったらすぐに処分するので♪」
「処分…だと…?」
「そんなものより、目の前に本物がいるんだよ?要らないよね?」
「そう…ですね…ええ、要らないですよねぇ?」
それとこれとは別だと訴えたいが…怖くて言えない。愛海瑠さん、恐怖政治はダメですぞ!?母にバレぬようにこっそり集めた俺の秘蔵のコレクション…何とかどこかにこっそり隠せないものだろうか?
「あ、こっそり隠そうとしたら…分かってるよね?」
「アハハハ…そ、そんなことするはずないじゃないですか?・・・エスパーかよ…」
俺は泣く泣く秘蔵コレクションを諦める事にした。どこに隠しても見つかって対価を求められる事になる未来しか視えない…愛海瑠、恐ろしい子。
そんな感じでじゃれ合いながら、通学路を進んでいる。因みに、俺の家は学校から近いので徒歩通学だ。自転車でも良いのだが、何か彼女出来たら歩きの方が良いだろ!?と言う理由で徒歩だったのだが…まさか、本当にこんな日が来るとは…感無量である!!
「円斗君、何か良い事あった?」
「おっと、頬が緩んでたか?何と言うか…愛海瑠とこうしていられるだけで幸せだなぁと…な?」
「私の方が幸せですからね♪」
「…張り合って来るとは思わなかった」
自分の方が幸せなんです!と訴えてくる愛海瑠も可愛いけど、胸が意識してしまうほど押し付けてくるのは止めて下さい。にやけ顔になる!にやけ顔になっちゃうから!!
「おはよう、バカップル二人」
「あ!おはよう、那々瑠♪」
「おはよう・・・バカップルなのは否定しないが真っ向から言わないで貰えますかね?」
「現実を見つめる時間を与えてあげたのだ」
「何様ですか?貴方様は」
「那々瑠様ですが?」
「なるほど…手強いな」
「もう!私の前で那々瑠とじゃれ合うのはダメだよ!」
「ええ…?これくらいでダメなのか…」
「だって、何か楽しそうなんだもん!!」
「愛海瑠の独占欲、思ったより強いね?」
「そ、それだけ愛されているって事だぞ?うん…」
「世界一愛してます♪」
「朝からでっかい砂糖吐きそう…」
「ハハ…で、まあ…その…後ろの二人は…何してんの?」
「見て分からんか?馬鹿者!姫の護衛に決まっておろう!!」
「そうだ!姫の護衛任務中である!!」
「馬鹿者はお前らだと思うが…おはよう、バカ二人」
「おはよう、リア充この野郎」
「おはよう、くたばれリア充」
「親友に対して随分だな?」
「くっ!余裕か!」
「くそう…昨日までは同じだったはずなのに!!」
「もう!親友なら仲良くしないとダメだよ?おはよう、清水君♪淀川君♪」
「おはよう、舞川さん!今日も可愛いね♪」
「おはよう、舞川!今日も天使だな!」
「ありがとう、二人とも♪でも、そう言うセリフは円斗君からしか受け付けてません♪」
「「円斗ぉ!!?」」
「血を吐きそうな勢いだな…」
「親友に遥か先を行かれたんだから、さもありなん」
「で、那々瑠姫様?護衛とは一体?」
「ああ、うん。何か昨日送って貰った後、明日から登下校は送ります!とか言って来たから、使ってあげようかと思って」
「そ、そうか…使うかぁ…頑張れ、清水幸也、淀川竜輝」
心の中で合唱して置こう。脈はなさそうだぞ?
「円斗君!那々瑠との会話は終わりです!もっと、彼女を大切にしましょう!!」
「分かった!分かったから!そんなにキスする勢いで顔を近づけないように!?」
「・・・する?」
「魅力的だが、遅刻してはまずいのでまたの機会にしよう。何時でも出来るだろ?」
「そうだよね!何時でも出来るもんね♪」
愛海瑠は歯止めがきかないからな…マジで遅刻する事になるんだよ。これ以上、教師に目を付けられたくないのだ…ちっさいな、俺!
「うえぇ…ホットケーキ吐きそう」
「凄いの吐くな!?」
「誰のせいだと思っておる?」
「あ~…よし、遅刻しない様に参ろうではないか?」
「・・・まあ、正論だから乗ってあげる」
「ありがとうございます、姫」
「円斗君の姫は私だよ!!」
「ああ…もちろんだよ、愛海瑠姫」
「よろしい♪」
愛海瑠の親友の二人ですらこんな嫉妬するからな…他の女子とは話も出来ないかもしれん…。しかし、嫉妬が可愛いんだよな。ただ、調子に乗ると本気で怒りそうだから加減を覚えんとな…
「円斗君、変な事を考えてない?」
「考えておりませんよ?愛海瑠姫」
「そっかな?何か変な気配を感じたんだけど…?」
「気のせいだぞ?」
よし!変なたくらみはしないようにしよう!命が危ないかもしれん!!
「何か、護衛している俺らより円斗の方が那々瑠姫と距離近くないか?」
「バカな…これがリア充の力だとでも言うのか!?」
「・・・フッ」
「「ちっくしょう!!」」
こいつらとのじゃれ合いは、気楽に出来るから助かるわ。精神安定剤になりそうだ!
そんなこんなで、やっと教室に着いた時にはぎりぎりだった。明日からはもうちょっと早く出るか…出られたらだが…