新入部員は妹
「一緒に学校行こうぜ」
「うっさい、きもい。一緒に行かないし!」
嫌がってる割には嬉しそうに見えるが、気のせいだろう。
「私先いくから、あんたは後から行って」
「はいはい」
適当に返事をすると、楓はスタスタと行ってしまった。
*
――キーンコーンカーンコーン
放課後を知らせるチャイムの音と同時に教室がざわつき始める。
俺はアニ部という部活に入っている。
名前の通りアニメ好きが集まる場所であり、アニソンをメインにバンド活動もしている。
ちなみに俺はドラム担当だ。
「あら、武留くん。いらっしゃい」
彼女の名前は木下桃。一つ上の先輩であり、この部のギター担当である。
いつ見ても可愛いなぁ。そうだ今度プリンでも貢いで何かしてもらおう。あ、やましいことは一切ありませんよ。
「あ、武留先輩!うわ、とてつもなくいやらしい顔してます……」
おっといけないいけない。すぐ顔に出ちゃうの治さないとね。
彼女の名前は栗坂柚璃。一つ下の後輩であり、この部のベース担当である。この子の魅力はなんと言ってもあざといところである。ほとんど上目遣いで話してくるので恐ろしい。
「そう言えば、今日は新入部員がくるらしいわよ」
「本当なんですか!ボーカルをしてくれる人だと助かりますねっ」
そう、このバンドにはボーカルがいないのだ。ついさっき格好をつけてバンドをしているなんて言った自分が恥ずかしい。
「それより、武留先輩妹さんできたんですね」
「そうそう、親が再婚したからな」
「あ、私を妹にしてくれてもいいんですよ?」
柚璃は口元に人差し指を持っていき首を傾げて微笑む。でました、あざとい柚璃さん。可愛いのは認めます。
「妹より、お姉ちゃんはどうかしら。たっぷりサービスするわよ」
桃先輩は自身の体を撫でるように触る。なんだよこれ、ものすごくエロい。
「……からかわないでください」
「あ、先輩顔あかーい。」
「うふふ。ハレンチな武留くん」
いつものだる絡みが始まった。ボディタッチをされると理性が保てなくなるので、距離を取る。
「今日こそ、どっちか決めてもらうわ」
「桃先輩より、柚璃の方が好きですよね?」
「貴方みたいな貧乳さんに勝ち目はないわよ」
「大きさより形ですから。でかいだけの人は退場願いますぅ」
やばい、グイグイ迫ってくる。桃先輩の包み込まれるような胸。柚璃のぷりぷりした胸。
どうしよう、こんなの決められない……じゃなくて、早く二人を引き剥がさないと。
「本当にやめてく――」
「こんにちは」
一斉に声がする方に振り返る。
「――げっ」
思わず声がででしまった。
「なんであんたがここに居るのよ!」
「そりゃ、アニ部だからだよ。新入部員って楓なのか……?」
「そうよ、何か文句ある?」
――そこに居たのは紛れもなく俺の妹だった――