叶うことなら、妹とえっちがしたい……
最強のシスコンと
ブラコンによるラブコメ
「はぁ、妹がほしい……」
俺には聞いてみたいことが一つある。
──人生で一度は妹が欲しいと思ったことはないだろうか?
一言で言うと妹は神である。
お兄ちゃんと呼ばれただけで逝ってしまいそうになるし、おはようと言われただけで泣いてしまいそうになる。
妹の残り湯なんて、家の家宝だと言っても過言ではない。
妹がいる人もいるかもしれないが、居ない人からすれば喉から手が出るほど欲しいものだ。おそらく妹が欲しくない人なんて、いるはずがない。
中には妹なんて面倒くさいだけだと言っている愚かな者もいる。
「妹を悪く言うやつは俺が許さない」
鏡に向かって言い放った。
(俺ってやっぱりかっこいいよな)
──ガチャ
「うおっ、びっくりした!」
多分母さんが帰ってきたのだろう。
「武留、今帰ったわよ。どうしたのそんな驚いて」
「なんでもないよ、おかえり」
動揺を隠して返事をし、部屋に戻ろうとした。
「こんばんは武留くん。私は北岡成史だ。よろしく」
聞き覚えのない声に呼ばれ、後ろを振り返る。
そういえば、今日は再婚相手を連れてくる予定だったような……
俺の母さんは二年前に父さんと決別した。前にお付き合いを始めた人がいると聞いたが、多分その人だろう。
「こんばんは」
特に興味はなかったので、素っ気ない返事を返し今度こそ部屋に戻る予定だった……
しかし、その後ろには同い年位の女の子がいた。
────俺は彼女に目を奪われた────
黒髪ショート。吸い込まれそうな大きな目。ふくよかな胸。多分Dカップぐらいだろう。そして、きめ細やかな白い肌。
「こ、こんばんは……」
三十秒ほど見とれてしまった。そのせいか、俺の声はかすれていた。
最初その子は驚いていたが、いつのまにか俺を睨みつけていた。
「ほら楓、挨拶しなさい」
どうやらその子は楓というらしい。
楓はそれを無視してドカドカ部屋に入っていった。
「ごめんね、武留くん……」
「いえ、大丈夫ですよ」
「あの子、お母さんを亡くしてからずっとあんな感じで……」
俺はどう返したらいいかわからず、とりあえず頷いてから部屋に戻った。そして、そのままベットで眠りについた。
*
──チリリリン、チリリリン
目覚ましの音で起床した俺は顔を洗いに行った。
「ちょっと、そこどいてくれない?」
「お、おはよう」
いきなりトゲのある言葉で動揺したが落ち着いて返した。
「馴れ馴れしくしないでよね、それと邪魔だから」
なんなんだこいつ。
「俺が終わるまで待ってよ」
「は?なんで」
どうやらこいつは頭が悪いらしい。先に使っている人がいたら待つのが普通だろう。
「いいから、はやくどいてよ」
さらに大きな声で言ってくる。
「わかった、わかった」
俺はしぶしぶ従った。俺は一つ聞いてみたいことがあった。
「あのー、楓さん?」
「……」
「おーい」
「……」
「かーえーでーさーん」
「あぁ、うるさいわね!何か用!」
「歳はいくつなのかな……?」
楓が自分より年下なら妹になるからだ。その確認をしたかったのだ。
「は?他人に年聞くとかセクハラよセクハラ!」
「家族だろ……」
「まだなってないし、認めてないから!」
本当になんなんだこいつ。俺はイライラする気持ちを押さえ込んだ。
「気安く話しかけないでよ。わかった?」
「……」
「返事はって言ってるの!」
「……は、はい」
返事をしないと永遠に続きそうなので仕方なく返す。だが、楓の胸の紋章見てわかったことがある。楓は高校一年生だということだ。
──俺は妹ができたんだ。──
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
喜びのあまり叫んでしまった。それも束の間すぐに横から声がする。
「うるさい!静かにしてよ!」
楓は吐き捨てて、朝食を食べに行った。
──はぁ……
妹ができたのは嬉しいが、俺の妹は飛んだクソ野郎だということを忘れていた。
「全然アニメと違うじゃん……」
俺の心は虚しさでいっぱいだった。
──この時は、俺と妹による最強のラブコメが始まるとは思いもしなかった──