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時空の向こう側  作者: 汰弥
第1章
9/12

騎士団との出会い

ブックマークありがとうございます!

魔力を使い果たして気を失ってからどれくらいたったのか…広場の真ん中で突っ伏した状態で目を覚ました加代は起き上がり、日の位置を見る。大分西に傾いており、半日近く気を失っていたらしい。

浄化の魔法のお陰で空気は清み渡っていた。空気が綺麗になっただけで、その他の街の現状は変わっていないのだが。

問題は今日何処で寝るかということだ。沢山の骸と共に一夜を過ごすのは勘弁願いたいが、今からゴザを出て寝る場所を探す体力も今日は残っていない。


どうしようかなぁ…


途方にくれていると、突然蹄の音が響き渡り何事かと考える間もなく周りを六人の武装した者たちによって取り囲まれてしまったのである。


「ふぇ!?」


馬の上から見下ろされ、圧がすごい。

元がこの星の人間じゃないってだけで後ろめたさ100パーセントである。フィリエの時はビギナーズランのような勢いだけで乗り越えたし、神様との邂逅は問題外である。異世界移転者として自覚を持ったあとにこの世界の生きている人間と会ったのはこれが初めてであり、加代はかなりテンパっていた。


「あ、あの…?」


沈黙と視線に堪えられず、加代の方から声をかける。


「全員、馬から降りろ!」


隊長らしき人が号令をかけると、六人全員が一斉に馬から降り、地面に膝をついた。そして、先ほど号令をかけた人物が加代の前に一人進んでくる。


「突然申し訳ない。朝方、こちらの街より強い魔法反応を確認したのだが…、この街と、ザイーナとの途中数ヵ所で守護と浄化の魔法を使用したのは貴女か?」


い、イケメン!!!


兜の下から現れたのは金髪に碧眼とイケメンど定番のようなビジュアルで、加代は話しかけられた内容よりも目の前にいる美青年の容姿に釘付けになった。


「あの?」


はくはくと、口を動かすだけの加代を不思議に思ったのか、こてんと首を傾けた。加代はその行動にまた、心臓をぎゅんぎゅんに捕まれて人知れず悶えた。


「す、すみません。確かに、寝床を確保するためにその二つの魔法を使用したことはあります。あと、本当は今日この街で宿泊するつもりで訪れたのですが、来たときには街の人達は…」


一度、辺りを見渡して言葉を切る。


「せめて、これ以上荒らされないように守護の魔法と大分空気が淀んでいましたので浄化の魔法を今朝使いました。まだ、街の人たちの弔いまでは、できてませんが…」


「貴女はこの街の人たちと面識が?」


「いいえ。」


「では、何故そこまで…」


「朝の状態を見て、ただ通りすぎることができませんでした。それだけです。」


だからといって大したことができるわけではないんですけど、と自嘲気味に笑う加代を驚いた顔で六人は見ていた。


「失礼ながら、貴女のお名前は…」


「私は佐久間加代です。」


「サクマカヨ…聞きなれない響きですね。」


「…そう、ですよね…」


彼らが聞きなれないというのも無理はない、だってこの世界にはない名前なのだから。


「サクマカヨはこの先、どうされるおつもりですか?」


「私は…、出来ればこの街の人達の弔いをして、次の街を目指そうと思っています。今、この国で起きていることを自分の目でみて確かめて出来ることを探そうと思って…」


「そうなのですね…良ければ私たちと共に来ていただくことは可能ですか?」


「えっと…」


突然の申し出に加代は戸惑う。この世界のことがまだ良くわかっていない今、一人で行動するよりは断然いいと思う。しかし、彼らがどこの誰かがわからない。

加代が答えを躊躇っていると、


「ああ、申し遅れました。私たちはガロール公国の騎士団、今日は大地震が起きたと報告があったこのゴザの街の視察にきたのです。私は団長をしているヴォルフ・スタインと申します。貴女の魔法の力はとても貴重です。私は今までこれ程の守護と浄化の魔法を見たことがありません。もし、貴女がよければ私たちの団に同行していただき、同じような被害があった街の浄化等に手を貸していただきたいのです。勿論、道中の貴女の身の安全は保証させていただきます。」


「そういうことでしたら…」


身の安全を保証されるときいて加代は二つ返事で承諾した。


そのあと、騎士団の人達の力も借りて街中の亡骸をゴザの街の教会裏に集め弔って貰った。残念ながら街の生存者は一人もいないらしく、加代と騎士団一行はゴザに封鎖の魔法をかけて街を後にした。


馬での移動ということもあり、夜になる前に騎士団の夜営ポイントまで移動することができた。今日の夜はテントを張っての夜営になる。彼らは女性の加代に気を使い宿のあるところまで無理をして進めようともしていたが、それは申し訳ないと、加代が止めて予定通りのポイントで休んでもらうことにしたのだ。


夜営ポイントに着き、他の騎士も兜をとってから気がついたことだが、ヴォルフ以外の騎士の頭にはやはり様々な獣の耳が生えていた。ゴザの街でヴォルフを見たときはあまりの美形さに目を奪われて耳が無いことに気が回らなかったのである。

加代はヴォルフがテントに一人きりになったのを見計らって、耳のことについて尋ねてみることにした。


「あの、」


「ああ、どうされたサクマカヨ。」


「ちょっと団長様に聞きたいことが…」


人気が無いことをもう一度確認してするりとテントの中に入り入り口を閉める。


「耳…」


「耳?」


「団長様には獣の耳がないのですか!?」


意を決して聞くとこれでもかと目を見張ってヴォルフは固まった。


「なぜ、それを?」


耳が無いとバレたことが信じられないといった風だったが、実際に団長の頭には獣の耳がないのだから何故といわれても説明のしょうがなかった。いっきに団長の緊張が高まったが、加代はフィリエに貰った猫耳のついた帽子を脱いで自分の頭もさらして見せた。


「私にも耳が、ないんです。」






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