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時空の向こう側  作者: 汰弥
第1章
7/12

一難去ってまた一難

ブックマークありがとうございます!


ちょっとだけ血生臭くなります…苦手な方はご注意下さい。

いつの間にか眠っていたらしく、目をあけると空は明るかった。


昨日は神と名乗る怪しい人物に自分がこの星に転移させられた話を聞かされ、この時空を守るためにこの星で生きろと言われ、だが加護は魔力を与えただけであとは自分で何とかしろと言われっぱなしで放置された…もういろいろキャパオーバーで自分の置かれた状況に絶望して、そのまま眠ってしまった。

しかし、一度寝て少し冷静になると沸々と昨日好き放題言うだけいって消えていったあの神と名乗った人物に怒りさえ沸いてきた。


「…神様の都合で女子高生ライフが強制終了とかまじでない。しかも、もとの世界に戻れないとか…それで、ただこの星で生きるだけ生きて時空を救えと!?私は元の生活に何の不満も無かったのに!この転移、私に何のメリットがあるのよーー!!」


誰もいないのを良いことに思い切り声に出して叫んでやった。あわよくば昨日の神様に聞こえろと思いながら。


「…ふぅ。」


思い切り、叫んだらちょっとすっきりした。


「…お腹すいた」


昨日の夜は結局何も食べずに寝てしまったのだ。空腹を自覚して、鞄の中を漁って食べるものを取り出す。パンにかじりつきながら地図を拡げる。

違う時空、もとい異世界だと受け入れてしまうと、逆に不安が大きくなった。17年間培ってきた常識が何処まで通用するのか全くの未知数だ。


「耳…みんなはえてるのかな。」


一番の不安要素は獣の耳が無いことだろうか。ぺたりと自分の頭を触り何もない感触に一晩でこの世界に適応してないかという期待を捨てる。


「…うーん、よし!」


パンっと手を叩いて立ち上がる。


「考えても答えは出ないし、とりあえず、進もう。」


この星を、世界を知るにはきっと実際に色々見て回るのが早いはず。そうしたらどうやって生きていけるかも自ずと見えてくるかもしれない。


「そうと決まれば出発!」


荷物を持って扉に向かって歩きだす。不安はあるが、もう迷いはない。加代は勢いよく、教会の扉を開けて外に出た。


「あれ?緑が増えてる…」


昨日歩いて来たときも、初めてこの扉の外に出た時と同様に焼けただれた大地が広がっていた筈だが、今目の前には少しではあるが、ちらほらと草が生えているところが目についた。


「この世界は植物の成長も速いのかな?」


少し不思議に感じつつ、地図を頼りに当初の目的地だったゴザを目指した。

ザイール方面に歩いていた時は気にならなかったが、あちらこちらに生き物の骨が落ちている。いつの間にか、草が生えているエリアも終わっていた。


「…何か出てきそう…」


フィリエがかけてくれた守護の魔法のお陰か、まだ魔物には遭遇していない。そもそも魔物を見たことが無いのでどんな生き物かもわからないが。

ゴザまでの道中は始終そんな感じで、廃屋を見つけては建物に守護の魔法をかけ一夜を過ごし、魔物に遭遇しないが人間にもついぞ遭遇することがなかった。


「最初に向かったのが偶然とはいえザイール側で良かった…」


流石に殺伐とした景色を見すぎてふと、二日間だけ滞在した最初の街が懐かしくなる。


無人の教会を出発してから五日ほどたった頃、やっと城壁のようなものが彼方に見えてきた。

しかし、様子がおかしいことに加代はすぐ気がついた。

城壁で守られている筈の向こう側から生活の煙とは思えない黒煙がもくもくと至るところから立ち上っていたからである。


城壁まで辿り着くと、その違和感が何かを加代は目の当たりすることになった。

普通、門番によって守られている筈のゲートは無惨に破壊されており、見渡す限り血の海が広がっていた。


「…何よ…これ。」


フィリエは地震が起きたと言っていたが、目の前に広がる惨劇は絶対に地震のせいではないといいきることができた。


「これ、中に入って大丈夫なのかしら…先に守護の魔法をかけとく?」


しかし、魔法は当たり前だが、魔方陣を中心に大きくなる。ここからかけても街全体を覆うには中心からかけた場合よりも更に大きな円にしなければならなくなる。ここ数日試した感じだとまだ流石にその大きさの魔方陣は作り出せない。

ゴザの街の広さ自体はそこまで広くないことは、地図でザイーナとの大きさを比べたことでなんとなくわかっている。


「街の中心まで行けたら…」


意を決して、加代は街の中に足を踏み入れた。

街の中には生きている人の気配がまったく感じられなかった。建物の窓や戸は破壊され、かつてそこで生活していたであろう人々の亡骸が無造作に横たわっている。

人の死などを見る経験が今まで無かった加代は沸き上がる吐き気と足の震えに耐えながら街の中心を目指した。

フェリエの守護の魔法のお陰か、もう街を荒らした生き物が去ったあとなのかはわからないが自分以外の生き物に会うことなく加代は無事に街の中心の広場にたどり着いた。

途中、チョークのようなものを拾ったので石畳の上にそれを使って魔方陣を描く。手が震えて思うように進まない。

それでも加代は守護の魔方陣とこの五日の間に覚えた浄化の魔方陣を描ききり、両手を二つの魔方陣に同時に乗せ、魔力を注ぐ。

今までで一番大きいイメージで街全体を包み込むように。誰とも知らない人々の冥福を祈りながら。


眩い光に街全体が包まれると、濁っていた空気は浄化され、日の光が温かく街を照らし始めた。


「成功…かな?やっ…ば…」


思惑通りに魔法をかけられたのは良かったものの、二つ同時の魔方陣を街をおおう規模で発動したため、魔力の使いすぎで加代はその場に倒れ付した。

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